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最大の勝因は「道中のペースの作り方」/ジャパンC
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全馬のマークを受けながら、逃げ切るのは大変なこと
 武豊騎手がペースを作ったキタサンブラック(父ブラックタイド)の鮮やかな逃げ切りが決まった。逃げ切り勝ちは、1984年のカツラギエース、2003年のタップダンスシチーにつづいて、史上3頭目だった。

 同タイプの先行型がいなかったとはいえ、1番人気馬が全馬のマークを受けながら、そのまま逃げ切るのは大変なこと。スローにしすぎては、みんな楽に追走できるから爆発力の勝負になる危険があり、逆に厳しいペースを作りすぎては、自身に失速の心配が生じる。

 ゆっくりスタートを切って、2ハロン目で競ってくる馬がいないことを確認したキタサンブラック(武豊)は、1コーナー過ぎから4コーナー手前までの1200mを、「12秒6-12秒3-12秒2-12秒5-12秒7-12秒3」。きわめて正確な一定ペース(1ハロンの最大差0秒5)でライバルをリードしている。

 東京のジャパンC2400mでしかるべき人馬がペースを作った場合、必ずしも珍しくない道中の一定平均ラップだが、これ以上ラップを落とすと2番手以下が接近してくる。逆にペースを上げてはオーバーペースの危険があるという、東京2400mのお手本ペースである。

 キタサンブラック(武豊)の前半1000m通過は「61秒7」。1600m通過は「1分39秒2」だった。約30年前のカツラギエース(西浦勝一)のそれは、1000m通過「61秒6」であり、1600m通過は「1分38秒4」である。03年のタップダンスシチー(佐藤哲三)の年は重馬場だったが、1000m通過は「61秒9」であり、前半1600m通過は「1分39秒1」だった。

 逃げ切った3頭は、芝コンディションも、個体の能力も、レースの組み立ても大きく異なるはずだが、前半1000m通過の差は「0秒1~0秒3」であり、1600m通過の差もわずか「0秒1~0秒8」である。30年以上も前のカツラギエースの逃げや、重馬場のタップダンスシチーの逃げたペースと同じなら、現代の武豊のキタサンブラックが簡単につかまるわけがない。

 カツラギエースは上がり「47秒9-35秒5」で逃げ込み、タップダンスシチーは重馬場のため上がり「49秒6-37秒4」だったが、キタサンブラックが「46秒6-34秒7」で押し切ったのは、「道中のペースの作り方」が完ぺきだったことが最大の勝因である。

 もちろん、陣営の仕上げも文句なしだった。落ち着きといい、この大型馬でもシャープに見せる馬体作りも満点に近かった。3歳前半は500キロ台だった身体は、どうやら530キロ台後半で完成期に到達したように思える。レース運びは今回、2400mを前後半に2分すると、スローすぎる「1分14秒2-1分11秒6」。3等分すると「49秒5-49秒7-46秒6」=2分25秒8で楽にまとめたくらいだから、まだまだ進化するはずである。有馬記念では、もっと高みを目ざしたペースの先行策を見せてくれるかもしれない。

 2着に押し上げたデムーロ騎手の5歳サウンズオブアース(父ネオユニヴァース)は、ベストターンドアウト賞に選ばれたくらいで、それは素晴らしい状態だった。キタサンブラックとともに1番の好スタートから、昨年とは少し違って少し下げて進んだのもデムーロ騎手の選んだ最良の作戦と思われる。またまた2着で、知られるようにこれで重賞成績【0-7-0-6】。2着7回は、とうとうステイゴールドの重賞2着7回に並んでしまった。ずっと射程に入れていたキタサンブラックを、馬場状態や(実質は稍重か)、コース取りもあったが、上がりを0秒2だけ上回る34秒5にとどまった程度だから、着差以上の完敗だった。

 ステイゴールドは58キロを背負った7歳春の目黒記念で無冠のトンネルを抜けたが、サウンズオブアースに勝利は訪れるのだろうか。左回り未勝利の東京より、昨年小差2着の有馬記念向きは間違いない。当時3歳で未完だったとはいえ、キタサンブラック(3着)に先着している有馬記念でなんとかしたいものである。

 4歳の上がり馬シュヴァルグラン(父ハーツクライ)の3着は見事。大外17番枠でこのスローだから、流れに乗れず、直線も一番外に回ることになったが、上がり34秒4は6着レインボーライン(34秒3)に次いで2位タイ。レース直前は、強敵相手のレース経験豊富なライバルに比べると、まだチャカつく仕草など若さを感じさせたから、次の有馬記念はさらに期待大である。陣営は「中山コースは合うはずだ」と、3着にがっかりするより、有馬記念に向けもう強気である。

 ゴールドアクター(父スクリーンヒーロー)は、武豊騎手のキタサンブラックを最初からぴったりマークしていたが、勝負どころで芝の荒れたインから外に出したかった。インを狙ったフェイムゲームが17着に沈んだように、キタサンブラックよりインを通る時間が長かったのは目に見えないロスだったろう。プラス8キロの504キロは自身初の500キロ超え。冬場で体調がいいからこそだが、心もち重かったのかもしれない。たしかオグリキャップも、500キロに達したときはなぜか走らなかった。

 2番人気のリアルスティール(父ディープインパクト)は、スローならスタミナ不安はないだろう、まして鞍上はムーア。そういう人気だった。ムーア騎手は正攻法で勝ちに出てくれたから納得だろう。良馬場発表以上にタフな馬場で、最後はスタミナ切れと映った。

 3歳ディーマジェスティ(父ディープインパクト)は、春シーズンと同じように「どこから見ても好調」という状態に仕上げ切れない体質の弱さが残ると同時に、キタサンブラックなどと比べ成長が遅いのだろうか。別にどこといって悪いところはなくても、今回は、パドックでクラシックホース(チャンピオンの1頭)らしい気高さに欠けるようなところがあった。気高さに欠けるなどというと失礼だが、ディーマジェスティのパドック評価は恐ろしいほどみんな一致だった。一致したのは、「こんなはずではない」のと、もう一点。「次に期待できるのはいつだろうか。そのときこそ取り返したい」それも一致である。

 外国馬3頭は、もっとも人気がなかった小柄なイキートスが見せ場を作って0秒6差の7着。

 今年の馬場でこの組み合わせなら善戦、好走して欲しかったが、最初から「勝ち負けになる」と思って来日した陣営はいなかったように思える。行き詰まった国際招待レースはみんな辛いが、やめたら世界地図から消える危険がある。JRAは、「なぜ、どうして、みんな香港やドバイの招待レースには先を争って行きたがるのか」何度でも教え乞うべきである。検疫の問題ではない部分のほうが大きい。ジャパンCに招待され来日しても、少しも楽しくないのではないだろうか。
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