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柏木収保さんの記事です。

猛烈な爆発力で快勝したレッドファルクス/スプリンターズS

◆世界のビッグレースで通用するのか大いに興味がある

 昨年は3カ月の休養明け。今年も6月の安田記念から4カ月の休み明けとなった6歳馬レッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)が強烈な追い込みを決め、スプリンターズS「2連覇」を達成した。

 GIになって以降、93、94年のサクラバクシンオー(父サクラユタカオー)、11、12年のロードカナロア(父キングカメハメハ)につづき、3頭目の快挙である(G1以前には、74、75年の牝馬サクライワイ、77、78年の牝馬メイワキミコの連勝がある)。

 サクラバクシンオーは種牡馬として大成功し、新種牡馬ロードカナロアの評価は急騰している。2頭と同じように、レッドファルクスはマイルまでこなせる総合力も秘めている(安田記念0秒1差の3着)。やがて種牡馬となるとき「フォーティナイナー…エンドスウィープ…スウェプトオーヴァーボード…」と連続してきた、パンチあふれるスピード系の発展、継続に貢献することになるだろう。

 芝コンディションの微妙な変化。また、強力な先行力を主張するスピード型の減少。さらには、距離を問わず前半スローから後半勝負への傾倒により、中山1200mのスプリンターズSの中身は変化している。今年1分07秒6のレースバランスは「33秒9-33秒7」。16年、同じレッドファルクスがそっくり同じ1分07秒6で差し切ったレースこそ前傾の「33秒4-34秒2」だったが、15年にヴィクトリアマイル2連覇のストレイトガールが差し切った1分08秒1のレース全体は「34秒1-34秒0」。この3年間で、以前の中山1200m(前半は下り坂に近い)ではありえなかった「後半600mより、前半600mの方がゆるいペース」が2回も出現したのである。

 少し前、ロードカナロアがレコードの1分06秒7で抜け出した12年は「32秒7-34秒0」。タイキシャトルが抜け出した97年の1分07秒8は「32秒6-35秒2」、前出サクラバクシンオーが1分07秒1で2連覇を決めた94年の「32秒4-34秒7」が代表する猛ペースこそ、スプリンターズSの代名詞だった。勝ち馬は好位、中団から差し切りを決めるにせよ、追走した前半600mの方が速い「前傾バランス」がふつうで、ロードカナロア自身も「33秒3-33秒4」。サクラバクシンオー自身は「32秒7-34秒4」だった。

 後半の600mの方がずっと速い勝ち馬は、デュランダルが1分08秒0で追い込んだ03年の自身のラップ「34秒9-33秒1」がきわめて特殊なバランス例として残っているくらいである。

 ところが、レッドファルクスの2連勝は、16年が自身「34秒1-33秒5」、今年17年など「34秒6-33秒0」の前後半で、ともに1分07秒6の2連勝。典型的なスプリンターではないところに、芝コンディションの変化、先行馬が飛ばさない流れも重なってこうなるが、サクラバクシンオーや、ロードカナロアとは、チャンピオンスプリンターとしての特徴がまったく異なる可能性が大きい。さらには、同じような時計の1分07秒9で勝ったタイキシャトル自身の「33秒2-34秒7」とは、前後半のバランスが完全に逆でもある。タイキシャトルもスプリンターではなかったが…。

 タイキシャトルや、ロードカナロアと同じように世界のマイル戦以下で通用したアグネスワールドは、小倉1200mを1分06秒5(32秒3-34秒2)の日本レコードで押し切ったスピードをベースにして、1000mの仏G1アベイドロンシャン賞、6Fの英G1ジュライCを勝った。後半を33秒台前半でまとめる爆発力によって2連勝したレッドファルクスが、日本とはちょっと異なり、だいたい1分08秒台前半の勝ち時計になる香港スプリントで通用するのかどうか大いに興味がある。昨年は体調もう一歩のため、3番人気で12着だった(同じランキングと思える1番人気のビッグアーサーも10着)。

 これからの陣営の展望と体調しだいだが、つい3年ほど前とは大きく様変わりしつつあるスプリンターズSを、猛烈な後半の爆発力「33秒5と、33秒0(これはあくまで表面的な数字で、最後の400mにもっと鋭さを示す10秒台が含まれる)」で快勝したレッドファルクスは、世界のビッグレースで通用するタイプなのだろうか。

 この日の1000万下は「33秒4-34秒4」=1分07秒8。スプリンターズSの上位馬はみんな後半600mは33秒台前半なので、表面上の勝ちタイムはわずか0秒2差でも、まったく中身は異なり、実際のレースレベルには著しい差があるが、前述のように後半の爆発力勝負に傾斜した日本のチャンピオンが、結局は時計勝負に近い香港(欧州とはやはり異なる)で通用するのかどうか、ぜひ、レッドファルクスに確かめて欲しい。

 惜敗の2着にとどまったレッツゴードンキ(父キングカメハメハ)は、高松宮記念につづいてのスプリントG1を2着だから立派。しかし、今回の自身の1分07秒6は、レッドファルクスと同様に変則バランスで「34秒5-33秒1」。レースの流れに左右されたのではなく、ライバルのペースに合わせた追走になったのだから、無念の惜敗というより、実際にはインを衝いての好走である。

 3着ワンスインナムーン(父アドマイヤムーン)は、だれも行かないから、1000万下の10Rより前半3ハロンは0秒5も遅い「33秒9→」で単騎の逃げ。みんな、これは楽な逃げ切りが決まったと感じたが、後半も「33秒8」。坂で再加速ができなかった。速さは互角でも、まだ総合力が不足だった。

 人気のセイウンコウセイ(父アドマイヤムーン)は、この流れで11着に失速。もまれる形が厳しかったのは確かだが、軽快な追い切りとは違って、当日は気迫に乏しく、本馬場に入ってからもどうも気力が充実してこないようだった。疲れなのか?

 メラグラーナ(父ファストネットロック)は、まずまずのスタートで最初は中位追走になると思えたが、残念ながら戸崎騎手は考え過ぎ(読み違え)。あのペースであそこからしだいに下げては(自身の前半600m通過は34秒8)、さすがにもうムリである。

 凱旋門賞で歴史的な名牝となった3歳牝馬エネイブル(父ナサニエル)。欧州の中~長距離戦はほとんど前半スローになる。だから、デットーリはよほどのことがない限り下げて進むことはない。抜け出す脚がある馬なら、あとは我慢できることを信じて持たせる。差されたら? それは相手が(ステイゴールドのように)強かったということだ。
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