水上学の血統トレジャーハンティング

【有馬記念】予定調和か、どんでん返しか

★土曜中山11R ターコイズS(G3)
◎本命馬 リバティハイツ 10番人気 2着
ほぼ予想した通りの器用な立ち回り。直線は狭いところに入りかけたが、北村友騎手の手綱捌きが絶妙で、狭いところをすり抜けてきた。最後はパワーでやや負けた感があるが、能力と適性を侮られていた分を見返すような激走。イレ込み解消のために用いたメンコの効果もあったのだろう。並み居る外国人騎手の人気馬を、勝ち馬と共に一蹴したのは痛快だった。

$お宝馬 ハーレムライン 8番人気 10着
3,4番手と積極的なレース運び、直線はいったん先頭に並びかけたが、最後は脚が止まった。とはいえ小差であり、力は出せている。1800mまでは問題ないと思うので、今後は枠と相手関係次第。

★日曜阪神11R 朝日杯FS(G1)
◎本命馬 グランアレグリア 1番人気 3着
唯一の懸念材料としていた、「初の多頭数の内枠」が響いた感。直接不利があったわけではないが、被せられるのを嫌ってスタート後に促していったら、馬が行く気になってしまい、脚がタマらなかった。現状は、前に行くと味がないのだろう。外目の枠ならまた違っていたのかもしれない。逆に言えば、鞍上は被せられると危ないという弱点を分かっていたから出していったわけで、今後は気性面の成長が課題となりそう。

$お宝馬 エメラルファイト 7番人気 6着
痛恨の出遅れ。そこから鞍上が行かせようとしても馬が反応せず、腹を括って後方待機から直線勝負に出るしかなかった。ジワジワとはいえ良く伸びてきたが、前が楽だったので上位3頭は遥か彼方。力を出せていないが、早熟タイプだけに2歳の大一番で見せ場を作れなかったのは痛恨だろう。


【今週のポイント】
年末にスターホースが揃い踏みというドリームレースだった有馬記念から、平成末期にはホースマンの意識の移り変わりを映して、連戦を避けてローテーションに余裕を持たせた馬が、箔を付けるために狙って獲る有馬記念に生まれ変わった感がある。
今年は天皇賞を完勝した後、ルメール騎手のバッティングによりジャパンCを回避し、早くからここ一本に狙いを絞ったレイデオロ1強状態となっているが、「競馬は何が起こるか分からない」とは、洋の東西を問わず長い間語られてきた格言。少しでも逆転の可能性はあるのか、もしくはレイデオロが勝つにしても、ヒモにかなりの人気薄が飛び込む余地はあるのか。締め切り直前まで、予想と妄想の間を揺れ動くことになりそうだ。

水曜午後更新予定の有力馬徹底分析では、そんな可能性を秘める馬を何とか探し出せるよう、シッカリ検討したい。
なお同じく19日水曜、19時からは渋谷ユーロライブにて、「生うまトークサミット・有馬記念スペシャル」を開催する。出演は安藤勝己さん、佐々木主浩さん、川島明さん、大島麻衣さん。当日券も出る予定なので、お近くの方はぜひ。詳しくは競馬ラボの特設コンテンツへ。

【次回の狙い馬】
日曜・阪神12R 13着
ヤマトワイルド
個人的にかなり期待していたが、スタートで大きく出遅れてしまう。手応えが良かったのか、外を回したら可能性ゼロとばかりに、鞍上が内へ突っ込んでいくも、やはりワンターンのダートでは前は開かない。おまけに前残りのペースとなり、直線は何もできないまま終わった。
とにかくスタートで重心が後ろに掛かったところにゲートが開いたのが不運。まともなら一変可能、なにせ1600万の上位勢力だった馬だ。

日曜・中山3R 4着
シセイタイガ
立ち回り巧く、好位のインをジワジワ上がるも、4角で馬群がゴチャ付き捌き遅れる。直線半ばで前が空くとまた伸びてきて、3着馬と0秒1差。枠がもう少し外なら、かなり際どかっただろう。
中山向きのパワータイプであり、持ち前の器用さが活かせる舞台の内に何とかしたいところ。次走も中山マイル、あるいは千八で。




回収率向上大作戦・須田鷹雄

枠順がレース結果に影響を及ぼしてくる/有馬記念
位置を取る馬がどの枠順になるのだろうか


 有馬記念は競馬ファンだけでなく一般社会の注目も高いレース。我々も早い時期からいろいろなメディアで予想を披露する機会があり、そのぶん早めに予想の方向性を決めなければならない面がある。

 早出しとはいえ一度出した予想を最後ガラっと変えてしまうと当たってもハズレても後味が悪いことになるので、私はなるべく重いシルシの馬を入れ替えないように心掛けている。これは有馬記念に限らず常にそうしているのだが、有馬記念については枠順の要素が大きいので、ひょっとすると最後の最後で予想を変える可能性もある。

 ちょっとサンプルを多めに、過去10年を対象にしてみよう。枠番でいう1枠2枠に入った馬は[7-7-5-47]。勝率10.8%・複勝率28.8%は全馬平均の6.7%・20.1%を大きく上回る。さらに07年9番人気1着のマツリダゴッホや01年13番人気2着のアメリカンボスがこのグループから出たこともあり、回収率は単138%・複129%と高い。

 位置を取るタイプの馬にとってはさらに枠順は重要なものになる。1コーナー5番手以内だった馬だけを対象に枠番別成績を取ると、1ー2枠馬は[5-4-4-21]で勝率14.7%・複勝率38.2%。回収率も単215%・複197%だ。

 反対に7ー8枠から1コーナー5番手以内に取りついた馬は、[1-0-0-26]。08年のダイワスカーレット以外は全滅だ。同馬は1番人気だったが、他に1ー5番人気の該当馬が6頭いて馬券に絡めていない。

 これを前走位置別成績で見ても同様で、前走コーナーが4つ以上あるコースに出走し1コーナーを4番手以内で回った馬は、有馬記念で内半分の枠に入ればよいのだが、7ー8枠に入ると[1-1-0-19]。前述のダイワスカーレットと、00年2番人気2着のメイショウドトウ以外は馬券に絡んでいない。

 今年の有馬記念は天皇賞秋、ジャパンカップと展開を演出してきたキセキが出走するほか、異色の挑戦として注目されるオジュウチョウサンも逃げを狙ってくる可能性がある。また、先行馬というタイプではないがモズカッチャンやミッキーロケットも「前走1コーナー5番手以内」には該当する。

 キセキがどの枠を引くかはその能力からもかなり重要な問題で、さらにオジュウチョウサンとの道中アトサキがどうなるかも、レースの結果に影響を及ぼしてくる可能性がある。木曜の枠順抽選を楽しみに待ちたい。





重賞データ分析・小林誠

内から先行できる馬が今年も来る!/有馬記念

■有馬記念(GI・中山芝2500m)フルゲート16頭/登録19頭
【特注データ】3行でわかる! レース攻略の糸口
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 年末のドリームレース・グランプリ有馬記念。今年の秋GIが堅く決まりまくっているのもあり、ここで一発ドカンと大穴を──などと願っている穴党は少なくないだろう。筆者もその一人だが、近年の有馬記念は1番人気が猛烈に強く、当然ながら順当決着傾向もかなり強め。ふたケタ人気の超穴馬から入るような極端な勝負は、正直なところ分が悪い。大振りではなく、シュアなバッティングが求められる一戦なのだ。

 そのためにも重視したいのが「枠番」と「脚質」である。特注データとして掲載しているのは、有馬記念における4コーナー通過順位別成績を、枠番の内外別でまとめたものだ。過去10年の連対馬のなんと半数を、「内からの先行勢」が占めており、同じ先行勢でも馬番が外だと信頼度は大きくダウン。ちなみに昨年も、内から先行したキタサンブラックとクイーンズリングのワンツー決着だった。

 馬番9~16番に入った馬に関しては、先行勢ではなく、中団から差せるタイプを狙ったほうがベター。「内×差し」の馬が1勝もあげられていないのに対して、「外×差し」の馬は2勝をあげ、単勝適正回収値も111.7と非常に高い。積極的に買うべきパターンをふたつあげるならば、「内×先行」と「外×差し」になるだろう。

 枠番が決まるのはまだ先なので現時点では何ともいえないが、前に行きたい組が少ない組み合わせになるのは、現時点でもミエミエ。となれば、例年にもまして「内×先行」組が好走できる可能性は高いはずだ。ジャパンカップで強い内容を見せたキセキには、ぜひ馬番1~8番に入ってもらいたいところである。
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【コース総論】中山芝2500m Aコース使用
・コースの要所!
★1番人気は[6-6-3-6]と超高信頼度。人気薄では10~12番人気の強さが目立つ。
★内枠有利で外枠は間違いなくマイナス。「やや内」の馬番5~8番が絶好調。
★先行勢15勝に対して中団待機組6勝。差せなくはないが先行勢を重視すべき。
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 中山芝2500mはレース施行回数の非常に少ないコース。データ母数の不足を補うため、路盤改修によって傾向が変化していることは承知の上で、今回は過去10年を集計対象としている。かなりクセの強いコースのせいか、集計対象レースが少ないわりに、ハッキリした傾向が見てとれるデータとなった。

 まずは人気別だが、1番人気は[6-6-3-6]で連対率57.1%、複勝率71.4%という素晴らしい結果を残している。同様に2番人気も[6-4-2-9]と絶好調。3番人気の成績はイマイチだが4番人気も好内容と、全体的に人気サイドの強さが目立っている。人気薄では10~12番人気が好調で、7~9番人気よりも評価は上。ここに人気馬から流す「ヒモ荒れ」馬券を狙うのは、かなり面白そうだ。

 次に枠番。今年も20日(木)に、枠番の公開抽選が行われる予定である。公開抽選で、内の偶数馬番を引けた陣営が例年大喜びしているが、実際にデータからも内枠有利・外枠不利であるのは明白。単純に内外を比較したデータでも、馬番1~8番が連対率16.2%、馬番9~16番が同8.9%と、非常に大きな差が出ている。「やや内」である馬番5~8番が好内容であるのと、奇数馬番のほうが強いコースであるのもお伝えしておこう。

 最後に脚質面だが、こちらもハッキリと先行勢優勢。4コーナーを5番手以内で回った馬が15勝をあげているのに対して、6~10番手で回った中団待機組は6勝と、大きく水をあけられている。後方からは2~3着にくるのが精一杯で、先行勢同士でのワンツーや、「先行→差し」決着がもっとも多いパターン。人気の差し馬を過信するのは、かなり危険なコースといえる。


【レース総論】有馬記念(GI) 過去10年
・レースの要所!
★1番人気の4着以下は過去10年で1回だけ。極端な穴狙いは避けるべきレース。
★コースデータ同様にハッキリと内>外。内容が超優秀な馬番5~8番に注目。
★馬券に絡んだ馬の6割が4角5番手以内の先行勢。6歳以上馬は大幅割引が必要。
★前走1番人気馬は素直に「買い」。ローテは不問で、関西馬の強さが目立つ。
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 レースの平均配当は、単勝517円、馬連6134円、3連複2万8138円。単勝平均の低さと、そのわりに3連複平均が高いという点がポイントだ。1番人気は[6-2-1-1]で連対率80.0%、複勝率90.0%と鉄板級の信頼度を誇っており、過去10年で4着以下に終わったのは2015年のゴールドシップのみ。回収率ベースの数値も非常に高く、ここにケンカを売るのはかなりリスクがある。素直に「買い」が正解だろう。

 それ以外は、人気から穴までまんべんなく馬券絡みしている印象。馬連平均や3連複平均がけっこう高いことからも、ヒモ荒れ傾向の高いレースといえる。狙って美味しそうなのは7~9番人気あたりだが、ふたケタ人気の好走率もけっして低くはなく、ヒモとしてならば十分に買える内容。ただし、人気薄から入って相手にも人気薄を選ぶような、極端な穴狙いは避けたほうが賢明だ。

 繰り返しお伝えしているように、枠番は内枠有利・外枠不利。平均人気がもっとも低い馬番5~8番が、もっとも優秀な平均着順となっているのも、コース形態からくる内枠の有利さが大きく影響している。単純に内外を比較したデータでも完全に「内>外」で、とくに外枠である馬番13~16番に入ると厳しい。評価も相応に割り引くべきだ。

 脚質はコースデータ以上に先行勢が優勢。過去10年で馬券に絡んだ30頭のうち、6割にあたる18頭までが4コーナーを5番手以内で回っていた。2012年のように後方からの馬が上位を独占したケースもなくはないが、今年の組み合わせでオーバーペースになるとは思えず、やはり前重視のスタンスで予想するのがベター。オルフェーヴルのようにマクリを打てる馬でなければ、後方からでは勝ち負けにならないレースである。

 年齢別成績も明暗ハッキリ。5歳以下馬がトータル[10-9-8-91]で、6歳以上馬が[0-1-2-33]と、5歳以下馬であることはもはや好走の必要条件と化している。なかでも優秀なのが「前走菊花賞組の3歳馬」だが、4~5歳もローテを問わずよく走っており、ここで評価に大きな差をつける必要はないか。ただし、6歳以上馬は評価を大幅に割り引くべきだ。

 そして最後に、前走人気別でのデータを紹介しておこう。有馬記念は前走1番人気馬が非常に強いレースで、[6-3-1-17]で勝率22.2%、連対率33.3%、単勝適正回収値133.6、複勝回収値104と内容も超優秀。内容がイマイチな前走2~4番人気馬と比較すると、その優秀さは際立っている。狙ってオイシイのは前走5~9番人気馬で、昨年2着のクイーンズリングと3着のシュヴァルグランは、いずれもこのパターンに該当していた。


【血統総論】
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 血統面で目立っているのは、やはりステイゴールド産駒の強さだ。勝率15.1%、連対率26.7%、複勝率37.7%という高信頼度で、回収率ベースの数値も優秀と、高いコース適性を有しているのは間違いなし。あとはハーツクライ産駒、キングカメハメハ産駒、ネオユニヴァース産駒もプラス評価の対象とした。ディープインパクト産駒のコース適性が低いのも、しっかり意識しておきたいポイントである。


★有馬記念・総論×各論

 さあ、ついに有馬記念だ。「オジュウチョウサンに武豊ジョッキーが騎乗」というビッグニュースもあり、今年も公開抽選会から大いに盛り上がりそうである。天皇賞・秋を制したレイデオロに、一昨年の覇者でここが引退レースとなるサトノダイヤモンド、ジャパンカップで素晴らしいレースを見せたキセキなど、楽しみなメンバーが揃った。

 枠番が決まる前に評価するのがメチャクチャ難しいレースだが、現時点でのトップ評価は「馬番1~8番に入った場合の」キセキだ。内&前が強いレースであるのは繰り返し述べてきたが、今年の登録馬は極端なほど逃げ・先行勢が少なく、楽にハナを切れる組み合わせになりそう。秋4戦目でさすがにお釣りはないだろうが、それでも何とかしてくれそうな勢いが今のキセキにはある。

 二番手評価にレイデオロ。1番人気がアホほど強いコース&レースであるだけに、1番人気になる可能性がもっとも高いこの馬の評価を、これ以上に下げるわけにはいかない。器用さも備えている馬で、中山芝[3-0-0-1]と適性の高さは十分。ある程度は前のポジションを取りにいけるというのも、この馬の強みだ。こちらも、馬番1~8番に入ればさらに期待度はアップする。

 三番手評価にミッキーロケット。筋肉痛でジャパンカップを回避したため、天皇賞・秋→有馬記念と、レイデオロと同じローテでここに臨む。その天皇賞・秋もレイデオロから0秒4差の5着と大きくは負けておらず、ぶっつけ本番だったことを考えると上々の内容。阪神芝2200m内の宝塚記念を制しているのは大きなプラスで、同様にキレ勝負とはなりにくい有馬記念で、再びその力を見せてくれそうだ。

 四番手評価にシュヴァルグラン。この秋は京都大賞典で4着、ジャパンカップも4着と足踏みが続くが、昨年の有馬記念で3着に好走しているのを忘れてはならないだろう。鞍上も昨年と同じくボウマン騎手に乗り替わる予定で、レースを使われつつ調子もジワリと良化中。好位~中団でうまく折り合えば、昨年以上の結果も期待できるはずである。

 以下はモズカッチャン、ブラストワンピース、パフォーマプロミスという評価の序列だが、最終的な評価がどうなるかは枠番次第。オジュウチョウサンについては、その挑戦に拍手を送りつつも、データ面からは分析不可能であるため「無印」となる。1枠2番でも引き当てると「ちょっとだけヒモで買おうか……」と迷いだしてしまいそうなのが、この馬の凄いところである。



達眼

【有馬記念】レイデオロ100点!威風堂々とした立ち姿
 ボディーチェックでグランプリを当てて、年末年始は世界遺産巡りだ。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第63回有馬記念(23日、中山)ではレイデオロに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのはピーク知らずの馬体の進化。有力馬の立ち姿をピレネー山脈など世界遺産になぞらえながら解説する。
 最高峰まで登り切ったつもりでも周囲を見渡せば、もっと高いピーク(山頂)がそびえている。スペインとフランスとの国境沿いに連なるピレネー山脈。その中央部には3000メートル級の高山が10峰以上散在しています。世界遺産のペルデュ山(3352メートル)よりも高いのがポセッツ峰(標高3369メートル)、スペイン語でピコ・デ・アネトと称されるアネト山(標高3404メートル)…。

 「黄金の王」とスペイン語で命名されたレイデオロも天皇賞・秋がピークだと思っていました。頭から尾まで馬体の全てが完璧だった。これ以上は望めない。ピークに到達した後には下り坂が待っていると踏んでいました。ところが、盾の頂上決戦の先にもなお上り坂が続き、もっと高いピークがそびえていました。

 トモ(後肢)や肩に豊富な筋肉量を保ちながら、その筋繊維が浮き立つほど質を高めている。名山のように各部位の隅々にまで力強い張りをたたえ、エネルギーに満ちた体つき。腹周りだけが少し締まりましたが、480キロ前後の馬体重以上に大きく見せています。峰のように突出したキ甲(首と背中の間の膨らみ)と岩のような分厚いトモ。馬体の要となる2つの重要部位が際立っているからです。

 立ち姿にも名山の風格が増してきました。精かんな顔立ち。目、耳、鼻が真正面の一点に向いて集中心を示しながら、ハミの取り方には余裕がある。タフな四肢が力みひとつなく大地をつかんでいる。太い尾の流し方も自然体。威風堂々たるたたずまいです。

 心身共に反動のかけらさえ見られないのは天皇賞後の充電が成功したからです。ピレネー山脈の麓には世界有数の温泉が点在していますが、その中でも治癒力に優れたルルドの泉にでも漬かってきたのか。ともあれ、ピレネーのさらなる高みへ登り続ける勢いです。

 有馬記念でG1連覇を飾れば、今春のドバイに続き来年も世界を目指すのでしょう。スペイン語の「黄金の王」はピレネー山脈のように国境をまたいでフランスの凱旋門賞か。あるいは、世界で最も峻厳(しゅんげん)な英チャンピオンSか。ピーク知らずの最強牡馬です。(NHK解説者)


【有馬記念】スワロー95点 荒々しかった精神状態安定
 世界遺産に登録されているベトナム北東部のハロン湾は水彩画から抜け出してきたような美しく穏やな内海で知られています。ベトナム語でハロンとは「竜が降り立つ」(ハ=降りる、ロン=竜)の意味。湾内に点在する大小2000近くの岩は天空から降り立った竜が吐き出した宝玉だと言い伝えられています。海底が隆起してできたカルスト台地がその竜の岩とともに荒波や暴風雨に削られて静かな湾になったそうです。竜のたけだけしい姿から内海の穏やかな姿に変わったミッキースワローを想起させる世界遺産です。
 昨年の菊花賞、今春の大阪杯時の馬体写真と今秋の写真を比べてみました。にらみつけるような目や威嚇するように絞った耳は穏やかに正面を向いている。相変わらず鼻をとがらせているものの、不機嫌そうに半開きにしていた口はしっかりハミをかんでいます。担当スタッフが押さえ込もうとして短く握っていた引き手には遊びが生じ、菊沢調教師の弓なりの引き手に素直に従っている。ここまではジャパンC時にも見せていたしぐさなのですが、今回は尾の下ろし方まで穏やかになった。馬の精神状態は尾に端的に表れます。大阪杯までは反り返っていた尾がJC時には少し高い形状になり、今回は自然に下へ垂らしている。

 尾ばかりか、全身にゆとりが生じてきました。力むことなく四肢を大地につけているため、とても柔らかく映る。冬場にしては毛ヅヤも良好。トモにも素晴らしい筋肉をつけています。消耗が見られない肉体以上に強調したいのが著しい気性の成長。ハロン湾のたけだけしい竜は穏やか内海を渡る燕(スワロー)に変貌しました。


【有馬記念】ブラスト90点 若々しい3歳馬、あふれる躍動感
 世界遺産で知られるフランス南西部、ヴェゼール渓谷の洞窟には600頭もの動物を描いた壁画があります。鹿、野牛、ヤギ、羊、そして、馬…。2万年前、クロマニョン人が赤土や木炭で作った顔料を用い、躍動感あふれる彩色画を洞窟の側面と天井に描きました。ひょっとすると、ブラストワンピースの遠い祖先かも…。そんな荒唐無稽な錯覚を起こすほど、この3歳牡馬は若馬らしい躍動感に満ちています。
 発達した肩と首。クロマニョン人が防寒用に着込んだ厚手の樹皮を全身にまとったような筋肉の隆起です。その盛り上がった前肢に体重を乗せながら、しっかりとハミをくわえています。りりしい顔立ち、古馬勢とは違う若馬らしい目の輝き。いまにも歩き出しそうな立ち姿です。

 筋肉質で背と腹下が短いマイラー体形。菊花賞の3000メートルを走るには筋肉が立派すぎました。2500メートルでも少し長い気がしますが、小回りコースならごまかしが利くでしょう。肢巻きを着けた前肢の膝下に白い湿布。菊花賞時も同様でした。脚元の予防なので心配ないでしょう。

 何より素晴らしいのが、クロマニョン人が壁画に描いた馬のような躍動感。ヴェゼール渓谷の洞窟は保存のため非公開となっていますが、その末裔(まつえい)?の姿は今週末、中山で公開されます。


【有馬記念】キセキ85点 気持ちが入った素晴らしい立ち姿
 イタリアの世界遺産「ドゥオモ広場」にたたずむピサの斜塔。この円筒形の大聖堂が傾いているのは地盤の緩さが原因だそうです。トモの緩さが目立つキセキも小回りコースで体勢を傾けずに走り切れるかが浮沈の鍵になります。トモの緩い馬は自分のフォームになるまで時間がかかるので、せかせてはいけない。スタート地点から直線が続く東京コースのG1とは異なり、中山の2500メートルはスタート後にすぐコーナーを迎えます。キセキが果たしてこの小回りで自分のフォームをつくれるか。コース替わりはマイナスです。
 立ち姿は素晴らしい。JC時よりも頭を上げた、気持ちの入った立ち方をしている。腹周りは少し細くなっていますが、トモや肩の筋肉量は落ちていない。左前蹄の外側を新たにエクイロックスで固めていますが、問題ないでしょう。ドゥオモ広場は景観のあり得ない美しさから「奇跡の広場」とも呼ばれています。


【有馬記念】シュヴァル85点 JC時よりも良い弾力ある肉体
 世界遺産に登録される80年以前からイタリア観光の名所で知られる「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」。建造物自体は貧相ですが、レオナルド・ダビンチの大作「最後の晩餐」が壁に描かれているため人気を集めています。シュヴァルグランの体格も見栄えしない。G1ホースに押し上げたのは弾力性に富んだ筋肉と力強い腹袋が備わっているからです。
 立ち方はJC時よりも良くなりました。両前肢に体重をかけて、前向きな姿勢を見せています。リングバミを気にして口は半開き。口角には泡をつけていますが小さな耳をしっかり立て、いつもと同じきつい目つきをしています。ダビンチが頻繁に描いたような陰部を見せているのはJC時と同じです。


【有馬記念】カッチャン85点 ボリュームある男勝りの肉体
 リトアニアの世界遺産「クルシュー砂州」は男勝りの屈強な肉体を持つ女傑ネリンガの手で作られたとの神話が残っています。バルト海の漁師を襲う竜を埋めるために運んできた砂がクルシューの砂浜になったとか。モズカッチャンも男勝りの馬体の持ち主です。トモや肩に付いた分厚い筋肉。女馬とは思えないボリュームです。冬毛が伸びているのが牡馬より早く冬支度に入る牝馬の証。キ甲の発達により凹背(おうはい=へこんだ背中)も目立っていますが、これまで通り問題にはならないでしょう。前走・エリザベス女王杯時にはきつかった目つきは穏やかになっている。精神状態が安定しているからです。竜を退治したネリンガのように牡馬勢を負かすか。有馬の女傑と呼ぶにふさわしい立ち姿です。


【有馬記念】ミッキーロケット80点 顔がおっとり
 ポルトの古い街並みにはおっとりした地元気質を示すように緩やかなポルトガル時間が流れています。ミッキーロケットの顔はポルトガル育ちでもないのにおっとりしすぎ。前走時同様、緊張感がありません。体つきは宝塚記念と比べても遜色なし。直前で気持ちが入るかが鍵です。


【有馬記念】クリンチャー80点 疲れ感じない体つき
 クリンチャーは凱旋門賞の疲れを感じさせない体つき。腹周りこそ少し細くなっていますが筋肉は落ちていない。トモに余裕があるため尾も自然に流している。今春の天皇賞時と同様にアゴを突き出す得意のポーズで立っています。左前肢外側の骨りゅうも当時と同じ大きさ。


【有馬記念】オジュウチョウサン75点 馬体好仕上がり
 発達した前肢に比べて後肢が寂しい。アバラの張りも少ない。アゴっぱりが良いので食欲は旺盛なのでしょう。毛ヅヤは良好。脚元に狂いもない。力はともかく、しっかり仕上がっています。


【有馬記念】サトノダイヤモンド75点 目が不機嫌
 相変わらず尾を上げ、鼻をとがらせ、目を不機嫌そうにつり上げています。馬体だけなら有馬出走馬の中でも断トツなのに…。


【有馬記念】リッジマン75点 長距離仕様
 脚長のスラリとしたキタサンブラック型の体形。父系は短距離血統ですが肩から首にかけての余裕あるつくりは長距離仕様。


【有馬記念】マカヒキ75点 尾が自然に流している
 相変わらず向こうを張るような顔つきですが、上げ気味だった尾は自然に流している。筋肉も落ちていないし脚元にも狂いなし。


【有馬記念】パフォーマプロミス75点 尾を上げて力んでいる
 筋肉量が豊富で毛ヅヤも良好。脚元も健康そのもの。ただ、今回は白眼をむきながら尾を上げて力んでいます。リラックスして。


【有馬記念】サウンズオブアース70点 立ち方散漫
 体つきはジャパンC時と変わりませんが散漫な立ち方。頭の位置を低くして耳を左右に開いています。ハミのくわえ方も緩すぎ。


【有馬記念】サクラアンプルール70点 毛ヅヤ良化
 背中と腹下が短くて首が太い中距離体形。毛ヅヤは良好もチェーンシャンク(鎖状の馬具)に口を開き、鼻をとがらせています。


【有馬記念】スマートレイアー70点 トモが寂しい
 宝塚記念時よりもエクイロックス(接着装蹄)の容積が大きくなった。トモが寂しく映るし、立ち方に気持ちが入っていません。
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