水上学の血統トレジャーハンティング

【ホープフルS】重みを増した希望の集い

★土曜阪神11R 阪神カップ(G2)
◎本命馬 ケイアイノーテック 3番人気 6着
予想だにしなかったかなりのスローペース。テンの3F34秒8は過去10年で2番目に遅い。馬群が固まったままで進み、外枠だったこの馬は終始馬群の大外を回らされた。位置取りはソコソコ取れたのだが、このロスが大きく、直線の伸びはジリジリになってしまう。行くと思われた馬が全く行かなかったのが誤算。今回はこうした枠と展開に泣いた馬が数頭いた。

$お宝馬 シュウジ 8番人気 12着
道中馬群の真ん中で終始揉まれる。直線はバランスが前に向かず、ジリ貧の脚色。勝負にならなかったのは馬場か衰えかは分からない。

★日曜中山11R 有馬記念(G1)(芝2500m)
◎本命馬 ミッキーロケット 8番人気 4着
序盤は少し行きたがるそぶりも、何とか折り合いをつけ2番手追走も、外に壁が作れればもっとスムーズに折り合えて、脚が後半へ向けてタマったはず。これが痛恨だった。直線はキセキを捕まえに行き、先頭に並びかけようかというシーンもあったが、坂でジリになり差し込まれてしまった。しかし前に行った馬では最先着。強い競馬はしている。本命に悔いなし。

$お宝馬 パフォーマプロミス 7番人気 14着
馬が進んでいかず、いつもより後ろの位置。騎手が促しても馬が反応せず、流したままのゴールで大敗。これはもうコンディションの問題に尽きるだろう。走る気勢が全く感じられなかった。調教で動きすぎたか。


【今週のポイント】
ホープフルSは2014年に重賞へ昇格、去年からG1となった。重賞以降、3着以内からの出世馬はレイデオロだけだが、G1 2年目の今年は、クラージュゲリエ以外の中距離路線の一線級が揃って、これまでにないレベルとなりそうだ。
ただし舞台は小回り中山、急坂コース。これまで直線の長いコースで競馬をしてきた馬が、勝手の違う思いをする可能性は低くない。過去4回の好走馬の大半は、小回りコースの実績があった。

断然の人気が予想されるサートゥルナーリアは、阪神・京都の外回りでしか競馬をしたことがない。兄たちは中山でも結果を出していたが、果たして同様に考えていいのか?目下重賞連勝中のニシノデイジーは、ここも突破すれば最優秀2歳馬の座は確定だろう。勝っても人気になりにくいが、ここも終わってみれば実績最上位を納得させられることになるのだろうか?伏兵台頭の可能性も含めて、水曜午後アップ予定の有力馬徹底診断をご一読いただきたい。

【次回の狙い馬】
日曜・阪神8R 4着
ミスズフリオーソ
押し出されるようにハナへ。スローに折り合っていけたが、徹底的にマークされて、休み明けということもあり最後は息が上がってしまった。ただ、叩いて次はさらに前向きになると思うし、直線に坂のない京都の方が走りやすいはず。次走もダート1800m、あるいは1900で。

土曜・中山12R 7着
クリッパー
休み明けでプラス32キロ。いくら若駒とはいえ、牝馬でこれはさすがに太すぎた。しかし好位で巧く流れに乗り、直線は伸びもバテもせずだったが、止まってはいない。いかにもここを使って絞れれば反応が良くなりそうで、中山芝1600m、1800mなら見直したい。




回収率向上大作戦・須田鷹雄

差し馬優位のホープフルS
波乱の目は展開・レースの流れにあるか


 ホープフルSはGIIになって以降で5回目、GIに昇格して2回目。まだデータで語るには回数が少ないが、レースのテイストは見えてきつつある。

 ヤマを張るなら、上がりのかかる競馬・差し決着というシナリオだろう。ここ2年はいずれも3コーナー9番手以下の馬が馬券圏内を独占し、1番人気馬が上がり最速で勝っているがその上がりタイムは35.7秒、35.5秒とかかっている。

 中山芝2000mはご存知のとおり皐月賞も行われるコースだが、その皐月賞は何年かに一回いきなり持続力型の天下になって、それまで速い上がりで好走していた馬が沈み、波乱となる。ホープフルSの場合出走馬の能力差が相対的に大きい(皐月賞は出走権を得るだけの実績を積んだ馬だけが出ているが、ホープフルSは単なる1勝馬もメンバーに入る)ので皐月賞よりは人気馬が堅調になるが、それでも波乱の目は展開・レースの流れにあると考えたほうがいいだろう。

 ただ、2歳馬はまだ消化レース数が少なく、それぞれの適性がつかみづらい。血統から類推するしかないが、それにも限界がある。

 なにか方法があるとしたら、位置取りだろう。レースにおける位置取りもやってみないとわからない面はあるが、枠順とこれまでのレースぶりから前半分にいそうか、後ろ半分にいそうかくらいは考えることができる。

 これまでの4回、1コーナーを出走頭数の半分以内の番手で回った馬は[1-1-0-31]で回収率は単13%・複26%。後ろ半分で回った馬は[3-3-4-17]で単48%・複97%(同じ通過順で複数頭というケースがあるので、両者の母数は同じにはならない)。しかも前者の1,2着馬は2014年で、近いほうの3回はすべて1コーナー後ろ半分組が馬券圏内を占めている。

 今回、サートゥルナーリアはどの位置で競馬をするのか? ニシノデイジーのほうが無難な選択肢なのか? このあたりが予想を展開する第一歩になるのではないだろうか。



重賞データ分析・小林誠

データ的には「大」混戦模様!/ホープフルS

■ホープフルS(G1・中山芝2000m)フルゲート18頭/登録17頭

【特注データ】3行でわかる! レース攻略の糸口
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 現在の施行条件となって5年目、G1に昇格してからは2年目となるホープフルS。なにぶんデータ不足で言い切るのが難しい側面はあるが、2歳戦のこの距離だと折り合い重視で、その結果スローでのキレ味勝負となりやすいのは間違いない。前残り決着となったのは2014年だけで、以降は差し~追い込み勢が好成績を残している。

 今回「特注」扱いとしたのは、前走での上がり3F順位別成績である。過去4年の連対馬は、1頭(2014年2着のコメート)をのぞき、すべてが前走での上がり3F順位が「2位以内」だった。とくに優秀なのが前走最速上がりの馬で、連対率31.6、複勝率42.1%という高信頼度。回収率ベースの数値も優秀で、狙ってみる価値が十分にある。

 前走での上がり3F順位が2位以内だった馬が3番人気以内に推された場合には、トータル[4-1-2-3]で複勝率70.0%をマーク。また、7~9番人気でも3回の馬券絡みがあるように、極端な人気薄でもないかぎりは期待できる。今年のホープフルSでもおそらく、前走上がり順位が優秀だった馬が好成績を残すことだろう。

 登録馬で「前走最速上がり」という条件を満たすのは、キングリスティア、コスモカレンドゥラ、ジャストアジゴロ、ハギノアップロードの4頭だけ。上位人気が確実なアドマイヤジャスタ、ニシノデイジー、サートゥルナーリアの3頭は、いずれも「2位」と不安を残す。今年に関しては、ちょっとした番狂わせがあっても不思議でないはずだ。
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【コース総論】中山芝2000m Aコース使用
・コースの要所!
★1番人気が飛び抜けて強いコース。ヒモ荒れ傾向の強さが目立つ点にも注意。
★イメージと異なり外枠のほうが好成績なほど。枠番はフラットと考えたい。
★差せるが後方からでは届かないコース。基本的には先行勢のほうが買える。

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 皐月賞の舞台でもある中山芝2000m。スタート地点はホームストレッチの4コーナー寄り地点で、スタート直後に急坂を上るのもあって、序盤から速い流れにはなりにくい。また、最初のコーナー進入まで十分に距離があるというのも、そうなりやすい理由のひとつ。2歳戦だとなおさら、スローで流れる可能性が高くなる。

 素晴らしい成績を残しているのが1番人気で、[17-10-3-17]で勝率36.2%、連対率57.4%という高信頼度。2番人気や3番人気も好内容で、上位人気の信頼度は総じて高い。相手には人気薄を連れてくるケースが多く、7~9番人気や10~12番人気も十分に買える内容。ただし、13番人気以下の超人気薄は複勝率0.7%とまったく期待できない。人気サイドから「適度に人気薄」の馬に流すのが、効率よく儲けるコツだ。

 次に枠番。中山芝といえば真っ先に思い浮かぶのが「内枠有利」だが、芝2000mはまったくもってフラットで、枠番の内外による有利・不利が非常に小さい。それを証明しているのが大外に入った馬の好成績で、[6-3-2-36]で複勝率23.4%、単勝適正回収値132.2、複勝回収値146という素晴らしい内容なのだ。有馬記念がイン優勢の結果で決まったとしても、そのイメージを引きずらないように注意したい。

 最後に脚質面だが、4コーナーを13番手以下で回った後方待機組は、トータル[0-1-1-59]と壊滅状態。中団からの差しはソコソコ決まるが、基本的には先行勢が優勢のコースといえるだろう。上がり3F順位が3位だった馬が、最速上がり馬と互角以上に張り合えているのも、それを裏付けるデータ。よほど極端な外差し馬場にでもならないかぎり、後方に置かれそうな馬は手出し無用といえる。


【レース総論】ホープフルS(G1) 過去4年
・レースの要所!
★1着馬はすべて3番人気以内でふたケタ人気馬は全滅。極端な穴狙いは禁物。
★外枠の成績不振は人気のなさが理由。実際はコースデータ通りフラットか。
★コースデータより差し優勢。勝ち負けに末脚のキレ味が要求されるレース。
★勝ち馬はすべて前走芝2000m戦組。外国人騎手の鬼のような強さも目立つ。

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 レースの平均配当は、単勝440円、馬連3592円、3連複2万3005円。単勝平均や馬連平均はかなりの低さで、それでいて3連複平均がけっこう高いというのは、ぜひ覚えておきたいポイントである。過去4年の勝ち馬はすべて3番人気以内と、1着が紛れたケースは一度もない。おそらく今年も、1着馬に関しては堅く決まる可能性が高いだろう。

 7~9番人気は[0-2-2-8]で複勝率33.3%と絶好調。成績イマイチな4~6番人気と比べると、信頼度も回収率もはるかに高い。ふたケタ人気馬は1頭も馬券に絡めていないが、コースにおける傾向から考えると、10~12番人気が今後に穴をあける可能性はけっこうあるはず。極端な穴狙いは避けるべきだが、人気サイドの相手に「適度な」人気薄を狙う戦略は、有効に機能するはずだ。

 枠番データでは外枠である馬番13~18番の信頼度が低くなっているが、これは上位人気馬が入っていないだけの話。平均人気が10.2と極端に低いのだから、信頼度も低くなって当然である。それどころか、人気のわりにはよく走っているというべきで、やはりコースデータ通りに「枠番の内外による有利・不利なし」と考えるべき。狙っていた穴馬が大外に入っても、なんら悲観する必要はない。

 脚質面は、コースデータよりも差し優勢。冒頭の「特注データ」でも解説したようにスローの瞬発力勝負となりやすく、末脚のキレ味が要求される傾向が強まっているようだ。4コーナーを6番手以内で回った先行勢が、トータル[1-2-1-22]で勝率3.8%、連対率11.5%、複勝率15.4%という結果に終わるというのは、かなり珍しいケース。上がり上位馬の好成績からも、かなり差し優勢のレースと考えたほうがいい。

 前走距離別では、前走芝2000m組の好成績が目立つ。過去4年の勝ち馬はすべて前走芝2000m組であり、ここ3年はこの組が2頭も3着以内に食い込んでいる。芝1600mや芝1800mからの距離延長組よりも、前走から同距離組を狙うのがベターだろう。そして、データは掲載していないが、前走での「クラス」は不問。未勝利を勝ち上がったばかりの馬でも、平気で上位に突っ込んでくるレースである。

 前走クラスが不問であるのは、新馬戦を勝ったばかりの1戦1勝馬が好成績を残していることからも明らか。デビュー戦を強い内容で勝ち上がった馬であれば、その勢いのままにここでも通用する。昨年8番人気で3着に好走したステイフーリッシュのように、デビュー戦が「最速上がりでの1着」であれば、さらに期待できそうだ。

 騎手関連データからは、外国人ジョッキーの「鬼」っぷりが伝わってくる。外国人ジョッキーの騎乗馬は連対率41.7%、複勝率50.0%と圧倒的な強さを見せており、対照的に関東所属騎手は[0-1-1-27]と大不振。関東馬自体は関西馬と互角以上に張り合えているのだが、どうやらジョッキーに関しては話が違うようである。

 あとは小ネタだが、前走がマイナス体重だった馬の連対例がゼロであることや、3着以内馬がすべて「前走2着以内」であるのも、覚えておいて損はなさそう。データ母数が少ないので、今後ガラッと傾向が変わる可能性もなくはないが、多少なりともアテにできそうなデータだけを掲載したつもりである。


【血統総論】
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 血統面では、ディープインパクト産駒とルーラーシップ産駒をプラス評価の対象とした。次点をあげるならば複勝率の高いハービンジャー産駒とダイワメジャー産駒で、コース適性も高めだとは思うが、内容的にちょっと見劣るのも事実だ。混戦模様だけに、プラス評価の対象はできるだけ絞り込みたいところである。

★ホープフルS・総論×各論

 17頭の登録があったが、朝日杯FSで2着に激走したクリノガウディーと、同11着のコパノマーティンは回避を発表。ハギノアップロードも自己条件に向かうようで、最高でも14頭立てとなる見込みである。人気を集めるのはおそらく、2戦ともに大楽勝の超良血サートゥルナーリアと、重賞連勝でその力を証明したニシノデイジー、育成段階から非常に評価が高かったアドマイヤジャスタの3頭だろう。

 しかし、評価は見事なまでに横並び。データ面から文句なしに「買い」といえる馬は、正直なところ1頭も見当たらない。レース当日の人気がどうなるか現時点ではさすがにわかりかねるが、実際はかなりの混戦模様ではないか──というのが、現時点での印象。「最後の最後でドカン!と荒れた」という結果が出ても、べつに意外ではない。

 僅差のトップ評価は、未勝利を勝ったばかりのジャストアジゴロ。二番手評価が、東京スポーツ杯2歳Sの3着馬であるヴァンドギャルド。三番手評価に、黄菊賞で2勝目をあげたコスモカレンドゥラ。四番手に、京都芝2000mの未勝利を好内容で勝ち上がってきたヒルノダカール。もうこの時点で、データ的にはいかに混戦模様であるか、わかっていただけることだろう。

 その次の五番手評価がニシノデイジーで、以下サートゥルナーリア、ブレイキングドーン、アドマイヤジャスタ、キングリスティアという評価の序列。これで人気通りの順当決着にでもなったら大恥だが、その場合はその場合で致し方なし。データ的な買い材料の少ない馬を、人気になりそうだからといって上位には推せない。筆者はこのレース、場外ホームラン狙いのブンブン丸と化して、大穴を狙いまくる所存である。




達眼

【ホープフルS】サートゥル95点!2歳で名君の風格
 2歳王者の耳はロバの耳!?鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。平成の2歳G1を締めくくる「第35回ホープフルS」(28日、中山)ではサートゥルナーリア、アドマイヤジャスタにそれぞれ最高点を付けた。達眼が両馬から捉えたのは大きな耳を持った王の輝きと、王も魅了した名馬の美しさ。世界の民話、民謡を例に挙げながら有力馬の立ち姿を解説する。 【ホープフルS】

 ある国にわがままで乱暴な王様がいました。王の悪口を言おうものならたちまち処罰されてしまうので、家来たちは王様のご機嫌を取るイエスマンばかり。そんな王様には秘密がありました。耳がロバのように大きくて毛むくじゃらだったのです。王の髪を切った際に秘密を知ってしまった理容師は固く口止めされますが、我慢できません。人里離れた森に穴を掘り、その穴の中へ向かって叫びます。「王様の耳はロバの耳!」。やがて、そこから生えてきた葦(あし)が風にそよぐたびに理容師のせりふをささやくようになり、王様の秘密は国中に広まって…。

 イソップ物語などで有名になった民話「王様の耳はロバの耳」。サートゥルナーリアの立ち姿を初めて目にした私も、思わず理容師と同じ言葉を口にしました。「ロバの耳」。耳をしっかり立てている分だけ、よけい大きさが目立つ。デカい耳は名馬の相とも言われますが、その主張に説得力はありません。馬は音に敏感。集音力の高い耳なら、必要以上に音を拾ってしまう。音が聞こえる方向へ気を取られたり、イレ込んだりしやすい。物事にはすべからく適正サイズというものがある。馬相学からも好ましくありません。

 だが、耳を除けば…。全てが完璧なつくりです。弾力性に満ちた上質な筋肉。深いトモ(後肢)とそのパワーを推進力に変える飛節、膝も引き締まって絶妙な角度です。背中が短く映るほどキ甲(首と背中の間の膨らみ)が後ろにもせり出しています。各部位が滑らかにリンクしているため全体にとても余裕を感じる。ヒ腹に十分な張りがありながら肋(あばら)がパラッと見える仕上がりです。名牝シーザリオの子。デビュー2戦とも楽勝。そんな血統と成績を知らなくても、ひと目で走ると分かる馬体です。

 2歳にして立ち姿には王の風格があります。目を輝かせ、鼻の穴をしっかり開きながら、大地を力強く踏みしめています。にもかかわらず、ハミはゆったり取っている。気迫と余裕が共存する、2歳馬ではあり得ないたたずまい。太い尾が前方から吹く木枯らしに心地よくなびいています。森の葦が風にそよぎながら理容師のせりふをささやくように…。

 「わしの耳のことは知れ渡ってしまったので隠しても仕方あるまい。ロバの耳を持っていても立派な王になってみせよう」。王様は秘密を口にした理容師を許し、改心して名君になったとか。サートゥルナーリアもロバの耳を持ったままターフの王になれる逸材です。(NHK解説者)


【ホープフルS】ジャスタ95点!赤馬ほうふつ優駿の気品
 沖縄県が琉球国だった1702年、1頭の赤い子馬が石垣島・名蔵湾の浜辺に上陸しました。島で暮らす大城師番という下役人が自宅に連れ帰り、愛情を注ぐと、美しい姿の優駿に成長します。赤馬の名声は首里の琉球国王・尚貞の耳に届き、御料馬として召し抱えられます。ところが、首里に着いた途端、馬役人の手にも負えない暴れ馬になってしまう。そこで元の飼い主・大城師番を呼び寄せたところ、尚貞王の前で流麗な走りを見せたと伝えられています。
 アドマイヤジャスタの馬体を見ながら、赤馬の姿を想像してみました。北海道ノーザンファームで生まれたこの赤茶色のサラブレッドも絵画から抜け出したように美しい。首差しが奇麗に抜けて、背中からトモへ流麗なラインを描いています。パワーよりも切れを感じさせる体つきです。スラリと胴長の鹿毛。マイルから2000メートルで実績を残してきましたが、さらに距離が延びても対応できる体形です。

 2歳馬だけにキ甲やトモの筋肉、腹袋は成長途上ですが、立ち姿には赤馬の像のような気品が漂っている。程よい力でハミをかみながら太い尾を自然に垂らし、バランス良く四肢を地に着けています。賢そうな小顔、聡明(そうめい)な目、竹を割ったような耳…。貴公子然としたたたずまいです。とてもよく手入れされたタテガミはスタッフの心尽くしの表れ。赤馬に大城師番が注いだような愛情を感じずにはいられません。

 元の飼い主を背にした途端、美しい肢体を伸ばした赤馬。「この赤馬は師番と不離一体の名馬で、何者もこれを私することは不可能である」。尚貞王は人馬の絆に感動し、赤馬を師番に返します。♪いらさにしゃよ(何とうれしいことか)、今日ぬ日…。八重山民謡の名曲「赤馬節」は愛馬を連れて石垣島に帰る師番の喜びを歌い上げたものだそうです。アドマイヤジャスタ陣営にも快哉を叫ぶ日が来るでしょう。名馬の相を伝える体つきです。


【ホープフルS】デイジー90点“泥棒の名人”ばり立派な肩甲骨
 立派な身なりの紳士が老夫婦で営む農家を訪ねました。「あなた方にお子さんはいないのですか?」。紳士が聞くと、農家の亭主は「かつて、せがれがいたが、家を飛び出したっきりで音沙汰もない」と答えました。「その息子さんの顔は覚えてますか?」と再び問うと、亭主は「覚えてないが、ほくろのある大きな肩が目印だ」と言います。「その息子さんの肩はこんなですか?」。紳士がシャツを脱ぐと、亭主は「たまげた!俺のせがれか!?」と肩を見入りました。紳士は泥棒の名人でしたが、再会した両親の説得で領主に自首します。「わしが所有する大型馬を厩舎から盗んできたら許してやろう」。紳士は領主の馬を大きな肩で軽々と担いで無罪放免になったそうです。

 グリム童話にも登場する民話「泥棒の名人」を思い出したのはニシノデイジーの大きな肩に触れたからです。「僕の目印です」と見る者に訴えかけてくるような立派な肩甲骨。筋肉量も豊富で、前肢の要になっています。肩ほどではないが、トモにもいい筋肉がついている。首や尾も幼い顔つきとアンバランスに映るほど太くてたくましい。前肢のつなぎは緩いが、脚の腱が浮き上がっているのでトラブルの心配もないでしょう。あとは腹周りにもっと幅が出てくれば、「泥棒の名人」にも見劣らない立派な身なりの紳士になります。


【ホープフルS】ブラック80点 続石のようなバランス
 柳田国男の説話集「遠野物語」には石の上に絶妙なバランスで乗っている大岩「続石」が描かれています。弁慶が作ったとの逸話もあるとか。ミッキーブラックの最大の長所もバランス。前・後肢、上・下半身が絶妙に均衡しています。ハミを気にして口を開け、顎も突き出すあたりは子供ですが将来は大岩のようにたくましくなりそうな好バランスの馬体です。


【ホープフルS】リスティア80点 食いしん坊の雄大さ
 アイヌの散文説話(ウウェペケレ)「カラスに育てられた男の物語」には驚異の食いしん坊姉妹が登場します。キングリスティアも大食い王なのでしょう。なにしろ顎っぱりが凄い。骨量の豊富な馬体。肩に比べてトモの張りが物足りないですが食べて調教を積めばトモにも大きな筋肉がついてきます。


【ホープフルS】ドーン80点 トモの筋肉まるで“鬼”
 筋骨隆々の鬼に鉄入りの餅を食わせて退治する、沖縄本島の民話「鬼餅(うにむーちー)」。ブレイキングドーンの筋肉も凄い。肩、トモの筋肉量は今回チェックした馬体の中で一番です。気負って四肢に力を入れすぎてますが、体の張りは鉄入りの餅を詰め込んだようにたくましい。


【ホープフルS】コスモカレンドゥラ75点 毛ヅヤ&腹回り良し
 毛ヅヤは抜群。腹周りもしっかりしています。その半面、尾の付け根を上げ、ハミを強くかみしめて気負い込んでいます。


【ホープフルS】ヴァンドギャルド70点 立ち方に力強さなし
 発展途上の体つきです。飛節は角度の浅い「直飛」気味。ハミのくわえ方はいいが、立ち方に力強さがない。これからの馬です。


【ホープフルS】ヒルノダカール70点 筋肉付ききってない
 後肢を後ろへ流し気味にした立ち方。力強さがあまり感じられない。筋肉もまだ付ききっていない。これから良くなるのでしょう。


【ホープフルS】タニノドラマ70点 四肢に力が入りすぎ
 耳を少し左右に開き、白目をむいています。四肢にも力が入りすぎ。馬体のつくりにも、もう少し余裕が欲しいところです。


【ホープフルS】ジャストアジゴロ70点 緊張感を欠いている
 毛ヅヤは良好ですが、立ち方に力強さが感じられない。舌を出して、緊張感を欠いています。前肢の膝下が少し硬めに映ります。
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