達眼

【スプリンターズS】スーパーフレア95点!“魔法の変わり身”黄金のサラブレッドへ
 秋のG1開幕戦に波乱を起こすのは“モズの魔法使い”だ。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。スプリンターズS(29日、中山)ではタワーオブロンドンと共に伏兵モズスーパーフレアをトップ採点した。達眼が捉えたのは、色あせた栗毛の縫いぐるみを黄金色のサラブレッドに変身させたモズの魔法だ。 【スプリンターズS】

 米国カンザス州の農場で暮らす少女ドロシーが竜巻に襲われ、愛犬トトと共に不思議な「オズの国」に飛ばされてしまう。カンザスに帰りたい少女はオズの魔法使いに「ウィンキーの国を独裁する西の悪い魔女を倒したら願いをかなえてやろう」とささやかれ、ウィンキーの国へ向かいます。だが、そこには黄金の冠を使って住民をブリキや縫いぐるみに変えてしまう恐ろしい魔女が待ち構えていて…。世界中で翻訳されている児童文学の名作「オズの魔法使い」。モズスーパーフレアの馬体に触れて、その名作を思い出しました。

 半年でここまで変わるのか。3月の高松宮記念時とは別馬のような姿に少々驚いています。今春は全身に冬毛をかぶり、まるで馬の縫いぐるみでした。出産という大仕事が待っている牝馬は体を冷やさないように冬毛を長く伸ばす傾向がある。それにしても長すぎた。顎の下から飛節の上まですっぽりと覆われてしまい、柔らかいのか硬いのか(動きは硬かった)、馬体を診断するのも難しかったほどです。「モズの国」の魔女が持つ黄金の冠で縫いぐるみにされちゃった。そんなギャグも笑えないほど冬毛でくすんだ姿でした。

 ところが、初秋のモズは悪い魔法が解けたように毛が抜け替わり、栗色に美しく輝いています。毛が短いので筋肉の形状を細かく観察できます。トモの筋肉が明らかにボリュームアップした。特に冬毛に隠れていた臀筋(でんきん=臀部の筋肉)が浮き出ています。腹周りも縫いぐるみ時代よりふっくらとしている。前走・北九州記念時は馬体重26キロ増。ひと夏越してボリュームが増したことは数字にも表れています。

 表情も穏やかにったた。高松宮記念時は悪い魔法にかけられたように口を半開きにして不機嫌そうでしたが、今回はハミをきちんとくわえている。一点だけ注文を付ければ、目つきがおとなし過ぎる。音無調教師が懸命に立て直しても、まだ魔法が100%解けていないのか。ただ、耳はしっかり立てているので懸念には及ばないでしょう。

 米国カンザス州の東に位置する馬産のメッカ、ケンタッキー州からやってきたモズの魔法使い。初秋を迎えて劇的に変化しました。優しくなった日差しを浴びて、その栗毛は黄金色にも映ります。魔女が持つ黄金の冠で新たな魔法をかけられているとすれば、栄冠に導く魔法かも…。(NHK解説者)


【スプリンターズS】タワー95点 りりしく成長“野生のいでたち”
 馬肥ゆる秋、読書の秋。「オズの魔法使い」と甲乙つけがたい児童文学の名作を挙げるなら、この本から3年後の1903年に出版された「野生の叫び声」です。飼い犬の「バック」がソリ犬として人間との絆を深めながら極寒の自然の中で野性に目覚めていくストーリー。作者はジャック・ロンドンですが、馬名のロンドンと語呂合わせしたいわけではありません。タワーオブロンドンの立ち姿は極北の過酷な環境に挑むソリ犬を思い起こすほどりりしい。尾を少しだけ上げているのに力みがありません。目、耳、鼻を前方の一点に集中しています。

 以前からこんな姿だったのか。昨年のNHKマイルCの馬体写真と比較してみると…。当時は尾を上げながら全身を力ませていました。その後、藤沢和厩舎のスタッフと絆を深めながら厳しい戦いを繰り返すうちにりりしく成長したのでしょう。3歳春当時から馬体の完成度は際立っていた。成長のバロメーターでもあるキ甲(首と背の間の膨らみ)は、テムズ川の岸辺に威容を誇るロンドン塔(タワーオブロンドン)のように突き抜けていました。あれから1年半を経て、トモと肩に城壁のような厚い筋肉をつけている。3歳春当時のマイラーを思わせる体形からスプリンターの体形へ。競馬を重ねながら短距離馬としての本性を表してきたのか。野性に目覚めるソリ犬のように…。ともあれ、距離短縮を心配するような体つきではありません。

 調子がいい時はレース間隔を詰めて使ってもこたえない…私の持論です。競走馬の「バック」はキーンランドC後、札幌から美浦へ戻り、中1週で阪神のセントウルSに出走。再び美浦へ戻って中2週で本番に臨みます。一見強行軍に思えるローテーションでも調子がいいから馬体は張りに満ちている。ゆとりのある腹周り。肋(あばら)が5本ぐらいうっすらと映って非の打ちどころがない仕上がりです。

 「オズの魔法使い」か「野生の叫び声」か。秋の夜長に名作のページをめくってみることにしましょう。


【スプリンターズS】メロディ90点 春秋制覇へ輝く目
 無(な)くて七癖といいます。タワーオブロンドンに尾を上げる癖があるなら、ミスターメロディは左右の耳を開き気味にするのが癖。強風で傾いた屋根の上のアンテナみたいだった高松宮記念時よりマシになったとはいえ、相変わらず集中力を欠くように少し耳を開いています。高松宮記念を勝ったのだから、こちらの取り越し苦労かもしれませんが…。

 G1初制覇を飾った今春と比べて、腹袋はしっかりしました。肩はさらにボリュームアップしている。目には輝きがあります。セントウルSを使った反動もなし。あるのは高松宮記念からのプラス材料だけ。四肢の腱がしっかり浮き出ているように脚も丈夫です。調教を加減せずに積めるでしょう。飛節は絶妙な角度と大きさ。調教で鍛えたトモのパワーを余さず推進力に転換できます。無くて七癖。あとは勝ち癖もついてくれば、ミスタースプリントになれます。


【スプリンターズS】ダノンスマッシュ90点 立派になった腹袋
 ダノンスマッシュの変化は馬体よりも脚に巻いたバンテージの違いに表れています。高松宮記念時に巻いていた冷却用のバンテージから輸送時に用いる保護用のバンテージに替えてきた。脚を冷やす必要がなくなったのでしょう。頼もしい変化です。

 脚と同時に腹袋も一層頼もしくなった。肋が目立ってしまうほど腹袋の薄い牡馬でしたが、高松宮記念では春彼岸の牡丹餅(ぼたもち)を腹いっぱい食べたように膨らんだ。秋の彼岸を迎えた今回はおはぎを詰め込んだようにますます身が入ってきた。もちろん、馬はアンコなど食べません。腹袋を立派にしたのは成長力です。父ロードカナロアに比べて馬体重は20キロ程度軽いが、父譲りの胴が詰まった筋肉質のスプリンター体形。父がG1初制覇を飾ったのも4歳秋のスプリンターズSでした。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、初秋の優しい陽光を浴びて毛ヅヤが輝いています。


【スプリンターズS】ファンタジスト80点 短距離仕様の気性
 ファンタジストの特長はキ甲。3歳春の時点で非常に発達しており、高い完成度を示していた。当時から馬体の成長はさほど感じられませんが気性は変化しています。NHKマイルC時の立ち姿と比べると…。春には地に着けていた左トモを浮かせて、前肢に負重をかけている。ますます前向きになってきた。マイルからスプリント仕様へ気性の変化を示す立ち姿です。


【スプリンターズS】セイウンコウセイ80点 四肢の腱狂いなし
 セイウンコウセイは筋肉のよろいをまとったような重厚な体つき。元々見栄えする栗毛にしても毛ヅヤが光り輝いています。四肢の腱もしっかり見えて狂いがない。唯一、気になるのはおとなしい目つき。今まではもっときつい目をしていた。目つきの変化は心境の変化を示しているのでしょう。ともあれ、激流の短距離G1を乗り切るには目力がもう少し欲しい。


【スプリンターズS】レッツゴードンキ75点 艶やかな張り保つ
 花になぞらえれば、姥桜(うばざくら)。7歳秋、女盛りを過ぎても艶やかな張りを保っています。トモや肩の筋肉は落ちていない。腹周りもふっくらしている。一方で以前のようなうるさい面もなくなっています。立ち姿が穏やか過ぎる。気性で走る牝馬だけに気になります。


【スプリンターズS】ディアンドル75点 前肢のつくり光る
 初めて馬体をチェックしますが、発達した肩と首が短距離馬の資質を訴えてくるようです。1200メートルで5連勝しただけあって前肢のつくりが際立っています。その一方、腹周りにはもっとボリュームが欲しい。左トモを流し気味にした立ち姿には若さがある。心身共に成長途上。



【スプリンターズS】リナーテ75点 我の強さが鍵握る
 ステイゴールド産駒らしい我の強さをのぞかせる立ち姿です。耳に力を込め、尾を上げながら白目でカメラマンをにらんでいます。馬体にはとても柔軟性がある。腱がしっかり見える脚元にも狂いなし。毛ヅヤも上々。激しい気性がレースにどう影響するかが浮沈の鍵になります。


【スプリンターズS】ダイメイプリンセス75点 気迫感じる鼻の穴
 肩と首の筋肉が発達している典型的な短距離体形。鼻の穴を開いた立ち姿には気迫が伝わってきます。500キロ超の馬体重を感じさせないのはバランスが取れているからか、それとも際立った部位がないせいか。左トモ球節の外側に外傷の痕が残っていますが問題ないでしょう。


【スプリンターズS】ラブカンプー70点 線の細さが目立つ
 毛ヅヤがさえて、筋肉も繊細そうですが、G1のメンバーに入ると線の細さが目立ちます。全体に小づくり。膝や飛節は小さめで管囲も細め。牝馬にしても、もっとたくましさが欲しい。過去のG1馬体撮影時よりも尾を上げて、落ち着きを欠いています。




水上学の血統トレジャーハンティング

【スプリンターズS】大混戦、秋の稲妻

★土曜阪神11R 大阪スポーツ杯
◎本命馬 デンバーテソーロ 3番人気5着
前の馬が崩れるハイペースに巻き込まれた。昇級戦でこの展開であることを考えると、よく粘っていると言えるが・・・・。せっかく外枠を引けたのだから、内を見ながらフィールドセンスあたりの位置で競馬が出来れば、ひと脚使えて馬券圏に入れたと思う。

$お宝馬 タガノジーニアス 9番人気2着
スタートで取り付けなかったのが結果的にオーライ。脚をタメての差し込みは狙い通りだが、展開もハマってくれた。

★日曜中山11R オールカマー(G2)
◎本命馬 ミッキースワロー 3番人気2着
想定以上にスローとなり、仕掛けても後半のペースアップのためになかなか位置が上がらない。直線では厳しいかと思ったが、持ち前の持続力でゴールまで伸びきれた。もったいないレース。あと一列前で競馬していたら勝てていたかもしれない。

$お宝馬 クレッシェンドラヴ 5番人気5着
ある程度位置を取りに行ったのだが、伸びずバテずで終わってしまった。ただ、2着馬とは差のないところに来ており、現状の力は出せている。本当の小回りコースの方がいいのだろう。

【今週のポイント】
グランアレグリアとステルヴィオの回避は残念だが、それでも目移りするほどの役者が揃ったスプリンターズS。セイウンコウセイは惨敗の続いた中山コースへの不安、ミスターメロディやダノンスマッシュは初の中山、タワーオブロンドンには夏の強行軍の反動も懸念され、人気馬にも疑問点はある。決して一筋縄ではいかないだろう。

また馬場もどうなるか。週末になると行方が読めなくなる天気図が続いているが、今週も雨か否かはかなり微妙だ。良馬場なら例年以上の高速馬場、さらに先週まではインが伸びるコンディション。これが続くか変わるか。

血統傾向には、統一性というか、傾向は全く見えない。その時々の馬場への適性、時計への対応力のある血統を探すのが近道。それによって、1400mやマイルあたりまでこなせるタイプがいいのか、逆に純正スプリンターが良いのかが決まってくる。枠と直前の天気、想定される時計をギリギリまで煮詰め、土曜のトレジャーハンティングで公開する。インパクトのあるお宝馬候補は、今のところ2頭。どちらを選ぶか悩ましい。

なお金曜のトレジャーハンティングは、シリウスSを取り上げる予定である。併せてお待ちいただきたい。

【次回の狙い馬】
土曜 中山5R 4着
オラコモエスタス
新馬戦。かなり緩い流れを、中団後ろからよく伸びてきた。小回りでは窮屈そうなフットワークで、次走東京なら変わりそう。

日曜 阪神7R 4着
サムシングジャスト
今回は休み明け。反応も鈍く、また内で押し込められてシンガリ付近まで下がってしまうが、残り1ハロンからの伸びは出色だった。馬を怖がらない根性もある。距離は延びた方がベターかもしれない。次走京都の1800か2000mで。







回収率向上大作戦・須田鷹雄

シリーズ3走した馬の本番成績は?

2006年以降のデータからひも解くと…


 今週はスプリンターズS。上位人気の一角に推されそうなのが、サマースプリントシリーズ王者のタワーオブロンドンだ。セントウルSの圧勝・レコード勝ちから、本命候補としている人もいることだろう。

 能力はもはや疑う余地がないが、気になるとしたら参戦過程だ。サマースプリント対象レースを3走した後で、どれだけお釣りがあるのか。

 ちなみに、2006年のシリーズ設定後、シリーズ対象レースを3走以上した馬の成績は以下のようになっている。3番人気以内馬と3着以内馬は馬名と人気着順も書き添えた。

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 人気薄で好走した馬もいるし、大丈夫な馬は大丈夫ということかもしれない。ただ13年間で勝ち馬は出ていないので、その点は少し意識したい。無印にするのは躊躇われるにしても、アタマ付けにするかどうかは考える余地があるだろう。
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