回収率向上大作戦・須田鷹雄

穴を狙うなら先行よりも差し/秋華賞

通常、競馬では「まぐれ残り」のほうが多いが…


 秋華賞はどちらかというと差し馬有利の競馬。これまで行われた23回の位置取り別成績は以下のようになっている。

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 ただ、これを単勝30倍未満だった馬(秋華賞に至るまでの成績がそれなりに良い馬ということになる)に限定すると、以下のようになる。

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 先行して勝ったのはアヴェンチュラ、ダイワスカーレット、ファインモーション、テイエムオーシャン、ティコティコタック、ファレノプシス、ファビラスラフイン。たまたま良いメンバーがいたという印象もあるので「先行タイプの上位人気馬」を過剰評価はできない。確実に言えるのは、「先行した人気薄馬が穴になっていない」ということのほうだ。

 通常、競馬では「まぐれ残り」が「まぐれ差し」より多い。ただ上の2つを見比べると、先行した馬のグループは人気薄馬が大きく足を引っ張っており、差しグループはそうでもないことがわかる。

 実際、単勝オッズ30倍以上かつ4角5番手以内から連対したのは2007年レインダンスだけ。同馬にしても通過順は7-7-4-4で、純粋な先行ではない。

 今年は台風の影響で良馬場にならない可能性があり、そうなるとガラっと傾向が変わる可能性もあるが、3連単フォーメーションの3着に超人気薄馬を追加するなら、このレースに限っては「まぐれ差し」期待でもいいように思う。



達眼

【秋華賞】シェーン95点!春から見違えるほど変身した立ち姿
 五輪アーカイブスからG1に咲く名花が浮かび上がった。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。秋華賞(13日、京都)では伏兵シェーングランツを1位指名した。スプリンターズSでタワーオブロンドン(1着)とモズスーパーフレア(2着)をトップ採点した達眼。その確かな眼力が捉えたのは東京五輪体操競技で3つの金メダルを獲ったベラ・チャスラフスカ選手(旧チェコスロバキア)のような華麗なる変身ぶりだ。

 チェコスロバキアの体操女子代表、ベラ・チャスラフスカを迎えた東京体育館が喝采に包まれたのは55年前の五輪でした。18歳で出場した60年ローマ五輪は個人総合8位に終わりましたが、4年後の東京五輪では個人総合優勝を含む3つの金メダルを獲得。優雅でダイナミックな演技と美しい容姿から「体操の名花」と称えられたチャスラフスカは22歳で鮮やかに開花したのです。アクロバットみたいな技が主流になる以前、美しさで観客を魅了した古き良き時代の伝説のアスリート。当時、大学生だった私もすっかりとりこにされました。

 シェーングランツの姿はあの55年前の記憶をよみがえらせてくれます。今春とは見違える、華麗なる変身ぶり。桜花賞当時は尾の付け根を上げ、トモを落としながら立っていました。落ち着きを欠いた立ち姿。馬体を見ればキ甲も抜けていない。半姉のソウルスターリング(G1・2勝)と比べて心身共に幼かった。続くオークス時の立ち姿は少しおとなしくなっていましたが、キ甲は未発達のまま。桜花賞時に固く閉じていた素質のつぼみが1カ月半で少し膨らんだ程度でした。

 ところが、今回は尾を自然に下げ、ハミの取り方も穏やかになっている。大人のたたずまい。馬体を見れば、キ甲が伸びている。それに伴って首差しに力強さが加わりました。腹周りも今春以上にふっくらしている。ひと夏の成長がひと目で分かる姿です。

 3歳春の牝馬を人間に置き換えれば18歳の乙女。3歳秋の牝馬は22歳の淑女でしょうか。18歳で挑んだローマ五輪から東京五輪までの4年間で名花を咲かせたチャスラフスカのような変身。東京五輪ではメルボルン(56年)、ローマに続く個人総合3連覇が懸かったソ連代表ラチニナを破りました。「完成度は及ばないにせよ、チャスラフスカには柔らかさとスケールの大きさがあった」(後藤正治著「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」)。シェーングランツの長所も柔軟性と大きなスケールです。トモの筋肉は半姉ソウルスターリング以上に柔軟でしなやか。馬体がガチッとまとまった姉に比べて、こちらには遊びがある。よりスケールの大きな体つき。父がフランケルからディープインパクトに替わった影響です。

 チャスラフスカがチェコの代表的なフィギュアスケート選手だった姉を超えたように、シェーングランツも姉を超えていくでしょう。京都競馬場を喝采で包む名花です。(NHK解説者)


【秋華賞】クロノジェネシス90点 無駄なく機能的なスリムボディー
 機能性に満ちたスリムなボディーに宿るのは柳のようにしなやかな筋肉。クロノジェネシスの芦毛をアスリートになぞらえるなら、ルーマニアの「白い妖精」ナディア・コマネチです。14歳で挑んだ76年モントリオール五輪。妖精のように小さな女の子(当時、体重39キロ)は五輪体操競技初の10点満点を記録し、一躍世界のヒロインになりました。白い肌と白いレオタードの代わりに少しだけ白くなった被毛を着けた芦毛馬も430キロそこそこの小さな体ですが、全ての部位が無駄なく機能的にリンクされています。

 全身を包むのは薄くても繊細でしなやかな筋肉。クロフネ(母の父)のごつさが全くない。ふくよかなマイラー体形の半姉ノームコアとは対照的な引き締まった中距離体形。父がハービンジャーからバゴに替わった影響なのか。オークス(3着)以来の出走となりますが、無駄な肉をそぎ落とした仕上がりです。休み明けならもっと腹周りに余裕が欲しい、成長をアピールしてほしいと指摘したくなるほどスリム。22歳で引退した早熟な妖精をイメージさせる体形です。

 顔つきはひと夏越して、一層りりしくなった。目、耳、鼻を前方の一点に集中しながら、尾を自然に垂らして力みが全くない。平均台の上に立つコマネチのような集中力と落ち着きを備えた立ち姿。「体操の名花」チャスラフスカに対抗できるのは…。縦横無尽にターフを跳躍できる白い妖精です。


【秋華賞】ダノンファンタジー90点 筋肉に柔軟性がある息のむバランス
 ダノンファンタジーは思わず息をのむほどバランスの整った体つきをしています。きれいに抜けた首差しからキ甲、背中を経由してトモに至るまで柔らかな曲線を描いている。肩の傾斜も滑らか。しなやかなトモは絶妙な角度の飛節にリンクしています。「ミュンヘンの恋人」オルガ・コルブトを想起する柔軟さです。

 旧ソ連・ベラルーシ出身のコルブトは17歳で72年ミュンヘン五輪の平均台、床などで金メダル獲得。段違い平行棒では棒の上から後方に宙返りして再び棒をつかむアクロバットのような演技を披露。身体の柔軟性を生かしたこの神演技は「コルブト宙返り」と命名されました。ダノンファンタジーはアクロバットショーなどできませんが、全身にとても柔らかな筋肉をつけています。

 ただし、立ち姿には少し力みがあります。今春よりも頭の位置が高くなり、鋭い目つきで尾を上げています。五輪の表彰台に初めて上がった17歳の少女のような緊張感。気負いやすいだけに距離延長が課題ですが、曇った日の撮影でも毛ヅヤを輝かせるほど体調は抜群です。


【秋華賞】パッシングスルー85点 弾力性に富んだトモの筋肉
 パッシングスルーの長所は弾力性に富んだトモの筋肉。トモは車のエンジン部に相当し、素晴らしい瞬発力を生み出す源泉になっています。バネ仕掛けのように弾むトモ。「ゴムまり娘」と呼ばれた米国体操界の至宝、メアリー・ルー・レットンを思い出します。ゴムまりのようなバネで軽やかに床を蹴り上げ、84年ロス五輪個人総合V。競走馬のゴムまり娘もターフの上で軽快に弾みます。

 美浦から栗東トレセンに移動した直後の撮影だったそうですが、その割に余裕のある立ち方をしています。これだけ落ち着きがあれば心配ないでしょう。毛ヅヤも良好。よく手入れされたタテガミにも好感が持てます。


【秋華賞】サトノダムゼル85点 均整の取れた美しい体
 サトノダムゼルの美しさを女子体操選手に例えるなら…。「メキシコの花嫁」ナタリア・クチンスカヤ(ソ連代表)でしょうか。68年メキシコ五輪の平均台で金メダルに輝いた美技と美貌に私もくぎ付けになりました。この3戦無敗のディープインパクト産駒も均整の取れた美しい体がひときわ目立っています。440キロ前後の体重の割には肋(あばら)に張りもある。腹下にさほど長さはありませんが、2000メートルまでなら対応できる体形です。毛ヅヤも抜群にいい。

 尾を上げた立ち姿には幼さが残っていますが、「メキシコの花嫁」のように才能は高い。ケンタッキーダービー、ドバイワールドCを制したアニマルキングダムを半兄に持つ血統。将来はどんな名種牡馬の花嫁になるのでしょうか。


【秋華賞】コントラチェック80点 心身の成長感じる
 古馬みたいに大人びた立ち方をしています。穏やかな目つき、しっかり立てた耳、過不足ないハミの取り方。腹袋もしっかりしている。肩の筋肉はオークス時よりも盛り上がっています。心身の成長をうかがわせますが、毛ヅヤはオークス時のほうが良かった。


【秋華賞】カレンブーケドール80点 好調漂う毛ヅヤ
 毛ヅヤがとてもさえています。それだけ体調がいいのでしょう。今春に比べて腹周りは少し細め。トモにももう少しボリュームが欲しいところですが、牝馬だけに許容範囲です。肩にはいい筋肉を付けている。顔つきは春よりも穏やかになっています。


【秋華賞】シャドウディーヴァ80点 厚み増した体形
 オークス時に比べて腹周りがふっくらしてきました。今春も牝馬にしてはボリュームがある体つきでしたが、さらに厚みを増しています。首差しが力強く、トモにも力感が備わっている。ただ、遠慮気味に立っています。立派な馬体なので堂々と立ってほしい。


【秋華賞】ビーチサンバ80点 ボリュームある体
 今春の馬体撮影でも耳を左右に開いて立っていましたが、今回は特に開いている。集中力が感じられません。トモや肩の筋肉は発達しているし、体全体にボリュームがある。Lサイズのキ甲はまだ抜けていませんが、抜ければ前肢がさらにたくましくなる。


【秋華賞】シゲルピンクダイヤ75点 力み少し解消
 立ち姿を見ると、今春のような力みは少し解消されてきました。とはいえ、鋭い目つきで鼻先をとがらせています。


【秋華賞】エスポワール75点 トモが少し浅め
 尾を上げながら四肢を力ませています。オルフェーヴル産駒らしい気性の激しさをうかがわせる立ち姿。トモのつくりは少し浅め。


【秋華賞】フェアリーポルカ75点 眠たそうな目をした立ち姿
 牝馬にしてはトモや肩の筋肉が立派ですが、眠たそうな目でボーッと立ってます。右前管骨内側の骨りゅうは中筋に触れてないので問題なし。
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