水上学の血統トレジャーハンティング

【菊花賞】胸を張ってラストチャンスへ

【今週のポイント】
今年は春の2冠の勝ち馬、そしてトライアルの勝ち馬も出ないという、前代未聞?の菊花賞となった。レースの質という意味では、例年より見劣ることは正直否めないが、ただ予想は意外と面白い。

いくら夏の上がり馬が厳しいといっても、この陣容なら話は別と考えるか?むしろ春からずっと上位を守り続けるヴェロックスの牙城は厚いと見て春の実績馬を中心に組み立てるか?そこが予想のポイントだ。

3000mともなると、距離がもつのかどうなのかという問題が毎年フィーチュアされるが、近年の菊花賞はスタミナももちろん問われるものの、スピードの持続力が最も重要だ。17日現在では日曜の京都は晴れの予報。例年通りスピードに比重を置いて捌くことにしたい。

★土曜京都11R 太秦S
◎本命馬 エアアルマス 1番人気1着
1800mに延びてやはり楽に前に行けて、あっさり抜け出した。何も言うことはなく、重賞勝ちは確実。

$お宝馬 ラインカリーナ 2番人気4着
2番人気になる馬をお宝に指名してしまうこと自体が失態。馬自身は、この距離でもレースを引っ張りよく粘った。

★日曜京都11R 秋華賞(G1)
◎本命馬 カレンブーケドール 2番人気2着
流れに乗って内目をロスなく完璧なレース運び。直線で挟まれたが、こじ開けて伸びてきた。クロノジェネシスには切れ負けしたが、負けて強し。次走女王杯でも楽しみ。

$お宝馬 フェアリーポルカ 8番人気16着
先行馬群の後ろから良いポジション。ただ、直線は全く反応せずズルズル下がっていった。無事に走りきったが、そこまで止まるほどのペースで飛ばしたわけでもなく、大敗の原因は見えない。

★月曜東京11R 府中牝馬S(G2)
◎本命馬 ラッキーライラック 2番人気3着
好位から、4角で唸るような手応えで直線外目から先頭。楽勝かと思ったが、そこから鈍くなってしまった。3着を守り切ったのは力だが、やはり16キロ増がこたえたか。多少増えても勝ち負けになるとは思っていたのだが、想定を超えていた。

$お宝馬 ダノングレース 10番人気9着
終始中団、同じような位置を回ってきただけ。東京ではここまでか。

★火曜東京11R 白秋S
◎本命馬 レノーア 4番人気6着
前半3F34秒9、このクラスとしては相当のスローペースで行った行ったの決着。この馬もよく伸びているのだが、全く前が止まらない。中団、後方の馬には出番がなかった。残念。

$お宝馬 ナンヨーアミーコ 10番人気13着
シンガリ付近からでは届かない。このレースについては、ここまでスローになるとは見抜けなかった当方の失敗が全て。反省のみ。

【次回の狙い馬】
月曜 東京5R 8着
レットミーアウト
勝ったルナシオンの印象ばかりが目立ってしまうが、ルナシオンも含め、番手ではある程度前にいた馬たちで決まった一戦。この馬は出負けしてシンガリから、直線だけでここまで押し上げていた。上がりはメンバー中最速。次走まともなスタートなら勝ち負けになる。

火曜 東京12R 5着
メンディ
人気馬がみな前に行きかなりのハイペース。総崩れになる中、唯一踏ん張って掲示板を確保したのがこの馬。今回と違い、普通の脚質の馬が揃えば、十分粘れる。次走も東京ダートマイルで。




回収率向上大作戦・須田鷹雄

【菊花賞】長距離種牡馬はもういない?

いまの長距離戦は、中距離の延長線上


 筆者が競馬を始めたころはシーホークが長距離種牡馬の定番だった。いまは長距離でこそという種牡馬がおらず、リアルシャダイ、ダンスインザダークあたりが最後になってしまうのかという寂しさはある。

 ただ、嘆いても仕方ない。今回は菊花賞に産駒が登録している種牡馬の長距離成績について調べてみよう。3000m以上のレースは数が限られるし、2400mは売れ線種牡馬もたくさん勝つ距離。ローカルの比率が高くなってはしまうが、今回は「芝2500m以上成績」ということでいきたい。

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 こうしてみると、やはり「長距離でこそ」という種牡馬はいないのだと分かる。なにか1頭選ぶとしたらハーツクライか。ディープインパクトやキングカメハメハより勝率・複勝率が高いし、単回収率はともかく複回収率は高い。

 ちなみに、この対象となったレースのうち「距離延長時」に限っても、目立った数字を示す種牡馬はいない。いまの長距離戦は、中距離と別カテゴリというよりはその延長線上で行われているものでもあるのだろう。








重賞データ分析・小林誠

【菊花賞】こういう時に限って堅く決まるもの!

■菊花賞(G1・京都芝3000m外)フルゲート18頭/登録22頭

★3行でわかる!菊花賞 攻略の糸口
1. 波乱傾向が強まっているレース。7~9番人気は特注!
2. ハッキリと内枠有利。馬番1~6番は人気薄でも要警戒!
3.前走での人気・着順・上がり3F順位からかなり絞れる!

データ特注推奨馬
 ★3番人気以内になった場合のワールドプレミア

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 近年になって、どんどん波乱傾向が強まってきている菊花賞。トップクラスがここを目指さずに、天皇賞(秋)へと向かうケースが増えているのも、それを助長しているのだと思われる。しかも今年は、皐月賞やダービーでの好走実績がある馬がヴェロックスしかいない──という大混戦のメンバー構成。これまで以上に荒れる結果となっても、不思議ではなさそうな雰囲気である。

 特注データとして紹介するのは、前走人気と前走着順を基準とした成績比較。じつは菊花賞は、前走で「人気を裏切った馬」が非常に弱いレースなのである。まったく来ないというわけではないが、前走で人気を裏切っていた【C】の馬は、トータル[1-3-1-55]で連対率6.7%、複勝率8.3%と低信頼度。前走2~3着馬ならばまだ買えるが、人気を裏切って4着以下だった馬となると、人気でもまったく信用できない。

 また、前走が「1番人気1着」のように人気と着順が同じだった【B】パターンの馬は、菊花賞でどの程度の人気に推されるかがカギとなる。今年はコレに該当する馬が非常に多いのだが、好走しているのは菊花賞3番人気以内馬だけで、4番人気以下だった馬はトータル[0-0-1-23]と大不振なのだ。人気薄でも期待できる【A】パターンの馬とは、傾向が大きく異なる点に注意したい。

 あとは、完全に内枠有利のコース&レースであることや、前走での上がりが「2位以内」かどうかでかなりの成績差がある点なども、このレースの攻略ポイント。特注馬の候補には、当日3番人気以内に推された場合のワールドプレミアをあげておこう。


【コース総論】京都芝3000m外 Aコース使用
※今回は「京都芝2200m外~芝3200m外」の4コースを集計対象としています
・コースの要所!
★意外に波乱傾向が強めのコース条件。中穴はもちろん、大穴まで狙えそう。
★ハッキリと内枠が有利。馬番1~6番に入った馬は、評価を大きくプラスに!
★末脚のキレ味は求められるが、脚質は前が優勢。後方に置かれるとアウト。

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 菊花賞の舞台となる京都芝3000m外は、菊花賞と万葉Sでしか使われていないコース。データ母数が思いっきり不足するので、京都芝2200m外、京都芝2400m外、京都芝3200m外の3コース分も含めた上で、データの集計を行っている。雑な分析にはなってしまうが、それでもコースの特徴については、コレで十分に把握できるはずだ。

 まずは人気別だが、イメージよりも波乱傾向が強め。先週の京都大賞典も人気馬が総崩れとなって、11番人気のドレッドノータスが制している。もっとも内容が優秀であるのは4~6番人気の中穴ゾーンだが、7~9番人気や10~12番人気も内容はよく、積極的に狙ってみる価値アリ。少しひねって買ったほうが面白いコース条件といえるだろう。

 次に馬番だが、こちらはハッキリと内枠が有利。京都大賞典も、掲示板に載った5頭のうち4頭までが「真ん中よりも内」の馬番だった。とくに差が大きいのが勝率や連対率で、中枠や外枠と比べると圧倒的に優秀。対照的に外枠はイマイチで、平均人気の差が大きいとはいえ、この低調な内容では割引が必須だろう。「真ん中よりも内」の馬番が引けるかどうかが、超重要なコース条件である。

 最後に脚質面。直線の長い外回りコースで、瞬発力の要求度も高めなのだが、それでも後方からでは届かない。脚質別成績では意外なほど先行勢が優勢であり、中団待機組であっても過信は禁物だ。「差せそうで差せない」くらいに思っておいたほうがいいコース条件で、重視すべきは間違いなく先行勢だ。


【レース総論】菊花賞(G1) 過去10年
・レースの要所!
★上位人気も強いが目立っているのは7~9番人気の活躍。やや波乱含みの一戦。
★コースデータ同様に内枠が非常に強い。脚質別での傾向もコースデータ通り。
★前走で、速い上がりを使っていた馬が好成績。前走着順は3着以内が望ましい。
★完全に「継続騎乗>乗り替わり」の一戦。外国人騎手の強さも目立っている。

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 レースの平均配当は、単勝884円、馬連3688円、3連複2万9086円。単勝平均や馬連平均が低めで3連複平均が高いというのは、ヒモ荒れ傾向が強いレースでよく見られる特徴である。とくに近年は波乱傾向が強まっている印象で、堅く決まったのはオルフェーヴルが三冠を達成した2011年くらいのもの。ある程度は荒れるという前提で、馬券を買ったほうがいいレースといえる。

 人気別成績からも、波乱傾向の強さは見てとれる。1番人気は[5-1-1-3]と悪くない結果を残しているが、2番人気は[0-3-0-7]で3番人気は[1-0-2-7]と、それ以外の上位人気はイマイチな結果。逆に絶好調なのが7~9番人気で、なんと4~6番人気よりも好成績だ。さらに、ふたケタ人気も3回の馬券絡みがあり、近年はとくに勢いを増している。今年も大混戦となりそうなだけに、警戒は怠れない。

 次に枠番データだが、レース単位でもやはり、内枠が圧倒的に強い結果となった。平均人気の差が大きいのも事実だが、勝率や連対率の差はあまりにも大きく、単勝適正回収値やギャップ値も優秀。中枠や外枠の馬でも買えるレースではあるが、内枠を重視したほうがいいのは間違いない。

 脚質面も、基本的にはコースデータ通り。4コーナーを6番手以内で回った先行勢が、トータル[8-5-7-47]で複勝率29.9%、単勝適正回収値111.9、複勝回収値119という素晴らしい結果を残している。対照的に、4コーナーを13番手以下で回った馬は、ほぼ壊滅状態。上がり上位馬が好成績ではあるのだが、後方からでは間に合わないということだ。勝ち負けにはやはり、中団より前のポジションが欲しい。

 末脚のキレが要求されるレースでもあり、前走での上がり3F順位が「2位以内」だった馬が好成績。3位以下だった馬も3着にはけっこう来ているのだが、その連対率は3.7%とかなり低い。また、データは掲載していないが、前走での着順が「3着以内」であるか「4着以下」かも、成績を大きく分ける分水嶺となっている。前走4着以下馬はトータル[0-1-2-76]で連対率1.3%、複勝率3.8%。巻き返しのきかないレースといえるだろう。

 前走クラス別やレース別では、やはりトライアルを使われてきた組が好成績。前走で2勝クラスを勝った「上がり馬」も6回の馬券絡みがあるが、勝ち負けできたのは2009年のスリーロールスだけだ。こちらはあくまで、3着候補と考えたほうがいいだろう。トライアル比較では、セントライト記念組が神戸新聞杯組よりも劣勢だが、どちらも重要なのは、そこで3着以内だったかどうか。セントライト記念組でも3着以内であれば「買い」だ。

 あとは、G1らしく「継続騎乗>乗り替わり」であることや、外国人騎手がかなりの好成績をあげているレースであること、近年はキャリアの浅い馬のほうが好成績であることなども、押さえておくべきポイント。さまざまなフィルタでふるいにかけて、激走が期待できる穴馬を抽出したいところである。


【血統総論】

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 血統面では、ディープインパクト産駒、ハービンジャー産駒、ルーラーシップ産駒をプラス評価の対象とした。近年の菊花賞は、長距離戦とはいえスタミナを問われる流れとなるケースは非常に少なく、それがディープインパクト産駒の好走に繋がっている印象。本質的にはやはり、ハービンジャー産駒やルーラーシップ産駒など、スタミナに秀でる血統のほうが向くレースだろう。適度のスタミナと適度なキレの両方があるような血統ならば、好走が期待できそうだ。


★特別登録馬 総論×各論

 22頭が特別登録を行った今年の菊花賞。収得賞金900万円の4頭は抽選対象となるが、既に回避を発表しているアドマイヤスコール以外にも、何頭かの回避馬が出そうな雰囲気。フルゲートを割り込むことはないだろうが、話題の「ミニマム牝馬」であるメロディーレーンが出走できるケースも十分に考えられる。

 枠番の影響が非常に大きなコース&レースなので、最終的なジャッジはそれを待つ必要があるが、現時点でのトップ評価は素直にヴェロックス。ここまで相手関係が楽になると、勝ち負けにならないほうがおかしい──とさえ言える。評価を割り引くファクターはとくに見当たらず、距離延長に対応可能な「父ジャスタウェイ×母父モンズン」という血統も好印象。好位で流れに乗れるタイプであるのも強みとなる。

 二番手評価にワールドプレミア。神戸新聞杯では「二強」に完敗だったが、継続騎乗する武豊騎手が、菊花賞を見据えた乗り方をしていたような印象もある。本番は「二強」から「一強」になるわけで、さらなる前進があってしかるべきだろう。ディープインパクト産駒らしい決め脚があるのも、このレースでは大きなプラス。ヴェロックスと張り合える可能性がある、数少ない存在である。

 大きく離れた三番手評価にヒシゲッコウ。長距離戦への適性の高さは過去のレース内容から証明済みで、実績は格下ながら侮れない側面アリ。しかも、鞍上にはスミヨンを配してきた。外国人騎手が猛烈に強いレースだけに、なおさら注意が必要だろう。さすがにこの馬が3番人気以内になるケースはないと思うが、もしもなった場合には、評価をさらに上げる必要がある。

 以下はニシノデイジー、サトノルークス、ユニコーンライオン、ザダル、メロディーレーン(抽選)といった評価の序列。そう、あまりに出走馬のレベルが低いため、思いっきり「順当」な評価となってしまったのである。いかにも荒れそうなレースに限って、ぐるっと1周して堅く決まったりするもの。今年の菊花賞は、まさにそのパターンに合致するような気がする。






達眼

【菊花賞】ヴェロックス95点 最高峰で輝く持久力型の“絶対美”

 3歳クラシック最終戦は1強ボディー。最も美しいステイヤーが3冠レースを締めくくる。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。菊花賞(20日、京都)ではヴェロックスを1位指名した。スプリンターズSに続き秋華賞もズバリ的中した達眼。その確かな眼力が捉えたのは持久力型の美しすぎるボディーバランスだ。 【菊花賞】

 容姿の美しさを競う馬のミスコン(ミスターコンテスト)が開催されるとすれば優勝するのは…。オランダ北部が原産地とされる「世界一美しい品種」フリージアンが最有力候補でしょう。つややかな黒いたてがみをなびかせた気品あふれる青毛のたたずまい。筋骨隆々な肢体とりりしい顔立ちはまるで古代ギリシアの彫像です。第1次大戦直前に消滅しかかりましたが、その後、復活。現在は欧州全域、北米、オセアニアで飼育されている中間種です。

 中央アジアに分布している「黄金の馬」アハルテケを優勝候補に挙げる向きもあるでしょう。メタリックな光沢を放つトルクメニスタン原産の軽種馬。薄い皮膚と長い胴、滑らかに傾斜した肩に特徴があります。サラブレッドよりひと回り小ぶりなバランスの整った体躯(く)。とても持久力に優れた品種です。

 ヴェロックスはフリージアンの凜(りん)としたたたずまいとアハルテケの均整の取れた持久力型の体を持つサラブレッド。思わずため息が漏れるほど美しい。「美は余分なものの浄化である」。ルネサンス期の彫刻家ミケランジェロの名言を体現するように、ぜい肉をそぎ落とした完璧なボディーバランス。首から背中、トモにかけて流麗な輪郭を描き、絶妙な角度の飛節と球節がトモのパワーを蹄に余すところなく伝えています。大きなストライドを生む寝肩。突出した部位こそ見当たりません。全てが優秀だからです。引き締まった腹には十分な長さがある。胴がスラリとした長距離体形です。

 初めて経験する3000メートル戦。バランスを欠いた部位があればその箇所に疲労やダメージが蓄積するのですが、これだけバランス良くリンクしていれば疲労を分散できます。ダービー時の写真と細部を比較しても変化なし。ひと夏越してもアハルテケのようなボディーバランスには1点の欠落もありません。

 その一方、立ち方にはひと夏越しての変化が見て取れます。ダービー時よりも重心を少しだけ前にかけながら気持ち良く立っている。やる気を伝える四肢の負重。それでいて、ハミの取り方は春同様に穏やか。落ち着きの中に闘志が乗った精神状態がうかがえます。ダービー時には「皐月賞から400メートル延びる2冠目の舞台は合っています」と書きました。さらに600メートル延びる3冠目の舞台はもっと合っている。

 「美は幸福を約束する」と言ったのは文豪のスタンダールだったか。容姿の美しさを競うサラブレッドのコンテストが開催されるとすれば、優勝はヴェロックス。長距離の持久力を競うコンテストでも最有力候補です。(NHK解説者)


【菊花賞】サーベル85点 1強に一太刀“鳳凰剣”首先から腹下まで長距離仕様

 “1強”の菊決戦。「黄金の馬」を想起させるヴェロックスを前にライバル勢はかすんでしまいますが、1頭だけ私の目をくぎ付けにした馬がいます。「鳳凰(ほうおう)の剣」(ホウオウサーベル)と名付けられたハーツクライ産駒。首先から腹下まで長距離仕様の夏の上がり馬です。

 ステイヤーは長い腹下、抜けた首差し、寝た肩に共通点があります。鳳凰の剣もそんな3つの特徴を備えている。背中の長さは普通でも、腹下に余裕がある。ハーツクライ譲りのすっきり抜けた首差し。「寝肩」といって肩甲骨が寝ているように傾斜しているためストライドが伸びる。長距離をこなすための大きな完歩を可能にする肩の角度です。首が太くてずんぐりしているニシノデイジーやサトノルークスとは対照的なステイヤーの見本のような馬体。各部位のゆとりあるリンクの仕方も長距離馬の特徴といえるでしょう。ハーツクライといえば頼りないトモを持つ産駒が多いが、ホウオウサーベルはトモのつくりも悪くありません。

 顔つきにはまだ幼さが残っています。不安そうな目、集中力を欠いた耳の立て方。落ち着きはあるが、どこか戸惑っているような立ち姿です。G1初出走で馬体写真を撮られた経験が少ないせいでしょうか。ともあれ、気負いや力みは一切なし。長距離戦を乗り切れる精神状態がうかがえる立ち姿です。

 毛ヅヤも良好。手入れの行き届いた尾に好感が持てる。厩舎スタッフから愛情を注がれていることが分かります。黄金の馬に一太刀浴びせると名剣があるとすれば…。ステイヤー資質が宿る鳳凰の剣です。


【菊花賞】ルークス80点 バランス整い中距離なら満点

 中距離のG1ならサトノルークスに満点をつけたい。皐月賞、ダービー時よりもバランスが良くなりました。今春は肩とトモの豊富な筋肉量に比べて腹周りが寂しかったためアンバランスに映りました。秋になって腹に厚みが増したことで均整が取れてきたのです。男は腹で勝負するなんて言いますが、腹周りが力強くなったことで男が上がった。深い胸、絶妙な角度のトモ…。オープン馬にふさわしい優れた部位を持っています。ただし、体形は中距離仕様。ステイヤーならこれほど厚い筋肉は付きません。立ち姿は穏やか。リラックスした走りでどこまで距離を克服できるか。


【菊花賞】ジェニアル80点 ひと夏越して張り増してきた

 ひと夏越しての成長を最も感じさせるのがレッド。ダービー時には「尾を上げているし、牡馬ならもっと腹袋と胸の深さが欲しい」と注文をつけました。まさか記事を読んだわけではないでしょうが、ひと夏かけて自ら修正してきました。ふっくらとした腹袋。腹ばかりか、全体に張りが増してきました。尾は自然に垂らし、平常心で立っています。胸の深さはひと夏で変わるものではありませんが、それ以外は注文に応えてくれた。心身共に成長がうかがえます。遊びのない馬体のつくり。3000メートル向きとは言えませんが、成長力で乗り切ってほしい。


【菊花賞】ワールドプレミア75点 骨格に余裕感じる

 ワールドプレミアは未完の大器と言うべきか。余裕のある骨格のつくりですが、成長のバロメーターであるキ甲(首と背中の間のふくらみ)が未発達です。そのため肩や首差しも抜けきっていません。遠慮がちに立っているのも完成途上だからでしょう。毛ヅヤは良好です。肋(あばら)がパラッと見える、とてもいい仕上がりです。各部位のつながりに余裕があるから長距離にも対応できるでしょう。あとは馬体の成長待ち。古馬になってキ甲が伸びてくれば肩や首抜けも良くなり、どっしりと立てるでしょう。


【菊花賞】ヒシゲッコウ75点 身も心も若すぎる…

 ヒシゲッコウは身も心も若すぎます。牧場から初めてトレセンにやってきた若駒のような顔つき。競走馬の厳しさがない。目も幼い。キャリアを積みながらプロの顔をつくっていくはずです。腹は立派ですが、筋肉のボリュームもこれから増やしていくのでしょう。トモを落としたような立ち姿。トモの付き方の問題でしょう。こういうトモは使い減りしやすいのでレース間隔を空けたローテーションには好感がもてる。上がりの競馬よりも平均ペースのレースが合う後肢のつくり。平均に流れる菊花賞は向いています。


【菊花賞】ザダル75点 全体にゆとりある体つき

 ザダルは全体にゆとりのある体つきをしています。耳を左右に開き、トモを流すような散漫な立ち姿。力強さは感じられませんが、長丁場に臨むなら、むしろこのぐらいゆったりと構えていた方がいいのかもしれません。

 キ甲は未発達です。成長途上の馬体で、これほどの成績を残してきたのだから、完成すればどこまで強くなるのか。四肢に輸送用のバンテージを着けているため膝下の状態は不明。見栄えはしませんが、逸材には違いありません。余裕のあるつくりだけに3000メートルもこなせそうです。


【菊花賞】ニシノデイジー75点 見応えある筋肉量

 筋肉量を競うボディービルコンテストがあれば、ニシノデイジーは今メンバー中トップ。肩や首を分厚い筋肉が覆っています。ダービー時よりも首が短く映るほど増量しました。体の切れよりもパワーを前面に押し出した体つき。長距離向きとは思えない筋肉量ですが、道悪なら力を発揮できるでしょう。

 口角が浅いのでハミに工夫が必要かもしれませんが、立ち馬ではごく自然にハミを取っています。尻尾を巻いているのは後方から吹きつける風のせいでしょう。安定した精神状態がうかがえる立ち姿です。


【菊花賞】ユニコーンライオン70点 心身とも状態いい

 トモのボリュームと太い尾が目を引きます。両前のつなぎが立っている馬力型の体つき。上半身の厚みに比べて下半身は頼りない。飛節や膝が小さめです。顔つきは穏やか。毛ヅヤもさえている。心身とも状態は良さそうですが、長距離向きとは思えない体形です。


【菊花賞】タガノディアマンテ70点 自己主張が強い目

 ダービー時には着けていなかったメンコを装着して撮影に臨みました。ひと夏越してうるさくなったのでしょう。オルフェーヴル産駒らしい自己主張の強そうなきつい目を覆面からのぞかせています。毛ヅヤは良好ですが、男馬ならもっと体にボリュームが欲しい。


【菊花賞】メイショウテンゲン70点 ボリューム欲しい…

 皐月賞では逆脚で写真に納まっていたように立ち方がうまくない。曇りの日の撮影だったため毛ヅヤは見極められませんが、全身にボリュームがもっと欲しい。ダービー同様に尾を上げ、白眼をむいています。まだ精神的に安定してこないのでしょう。


【菊花賞】カリボール70点 立ち姿穏やかで筋肉量は豊富も…

 筋肉量が豊富です。ボディービルコンテストで東のエースがニシノデイジーなら、こちらは西のエース。ただ、マラソン向きの筋肉ではありません。立ち姿は穏やか。下顎を突き出しながら力まずに立っています。馬体はともかく、気性は長距離にも対応できそう。




【漆山“教授”のGI因数分解】ワールドプレミア面白い

SANSPO.COM:2019年10月15日(火) 05:07

 東大卒の知性派、漆山貴禎記者がGI的中へのアドバイスを送る「漆山教授のGI因数分解」。今週末の菊花賞は神戸新聞杯と新潟の阿賀野川特別の結果に注目。そこから好走の可能性がある馬を導き出した。

 菊花賞には、“王道トライアル”と“隠れステップ”が存在する。この2つの路線を検証してみたい。

 (1)着順よりも上がり3ハロン

 過去10年で前走が神戸新聞杯の馬は【7・6・4・49】で連対率19・7%。セントライト記念の馬の【1・3・1・46】同7・8%を圧倒している。しかし、注目すべきは着順よりも、上がり3ハロンだ。表1の通り、神戸新聞杯が2400メートルになった2007年以降、上がり3ハロン最速馬は本番で【5・3・0・4】連対率66・7%の好成績。掲示板を外したのは1頭だけで、好走は約束されたようなものだ。タフな阪神外回りで長くいい脚を使った実績は、淀の3000メートルに直結するとみていい。

 (2)新潟の上がり馬

 上がり馬も忘れてはならない。春のクラシック不出走で菊を制した馬は22頭を数えるが、うち10頭が01年以降。近年は台頭の傾向が強まっている。なかでも、夏の新潟・阿賀野川特別を使っていた馬は要注意。表2に示したように、01年以降で【1・2・2・1】複勝率83・3%と、菊花賞で驚異的な好走確率をはじき出している。江戸時代の「北前船」よろしく、越後と京都には密接なつながりがあるのだ。

★注目馬

 ワールドプレミアは、神戸新聞杯(3着)で勝ったサートゥルナーリアと並ぶ上がり3ハロン32秒3をマーク。過去に神戸新聞杯3着から本番を制した6頭中の5頭が、春のクラシック不出走組だったという傾向にも合致する。ホウオウサーベルは阿賀野川特別を5馬身差で圧勝。ハーツクライ産駒は芝3000メートル超で通算【6・14・5・44】と堅実で、連対率29%はディープインパクト産駒(同18・9%)を大きく上回る。2頭が上位をにぎわす可能性はかなり高いとみている。 (漆山貴禎)
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