「虎の子」の一頭・馬場虎太郎

【オークス】軽い馬場を得意とする馬が巻き返す

 過去5年、オークスのトラックバイアスと馬場コンディションは以下の通り

2015年(勝ち馬:ミッキークイーン)
馬場コンディション「稍軽い」
トラックバイアス「特になし」

2016年(勝ち馬:シンハライト)
馬場コンディション「稍軽い」
トラックバイアス「特になし」

2017年(勝ち馬:ソウルスターリング)
馬場コンディション「稍軽い」
トラックバイアス「内有利」

2018年(勝ち馬:アーモンドアイ)
馬場コンディション「稍軽い」
トラックバイアス「特になし」

2019年(勝ち馬:ラヴズオンリーユー)
馬場コンディション「軽い」
トラックバイアス「超差有利」

 過去5年ともに「軽い~稍軽い」馬場コンディション。そのうち3年は脚質、枠のトラックバイアスもみられなかった。

 どのようなペースや展開でも、直線ではしっかりした末脚を使った馬が上位に走る。先行することや道中でロスなく運ぶことによって恵まれるようなケースはほとんどない。

 先週の東京芝は先週からBコース替わり。雨が降った土曜でも、軽い馬場コンディションだったように、路盤の状態が非常に良い。

 馬場の影響によるトラックバイアスは皆無。直線で高速上がりを出すことができる。日曜メインレースのヴィクトリアマイルも、軽い馬場では歴代最強レベルのパフォーマンスを発揮していたアーモンドアイが圧勝した。今週も先週同様の軽い馬場コンディションを想定する。

 ホウオウピースフルの前走フローラステークスは開幕週で芝と路盤の状態は良かった。しかし、当日の東京は稀にみる暴風だったことで馬場コンディションは「標準」となった(私の馬場判定には、路盤だけではなく風やペースなどの影響も入る)。

 道中も淀みない流れで、直線は暴風とダートコースから飛んでくる砂を浴びながら走らされた。若い牝馬で軽い馬場を得意とするタイプの馬には厳しい馬場だった。

 ホウオウピースフルは過去の戦歴からは「軽い馬場」を得意とする馬。フローラステークスのトラックバイアスは厳しかったにもかかわらず2着に走れたのは能力が高いからだ。

 ホウオウピースフルがこれまでに勝利した新馬戦と百日草特別はどちらも道中がスローの緩い流れ。特に楽勝だった百日草特別は軽い馬場コンディションの高速上がり勝負。

 6着に凡走したクイーンカップはフローラステークス同様、馬場コンディション「標準」。道中のペースも速い。道中で負荷がかかるペースや馬場が苦手とわかる。

 過去に馬場コンディション「軽い~稍軽い」と判定した軽めの馬場コンディションで走ったのは百日草特別のみ。オークスは雨が降らない限りは、軽い馬場コンディション。例年ペースも緩い。この馬にとってはベストの条件が揃う。

 陣営は道中かかり気味な追走になることを不安視しているようだが、かかり気味に追走している時のほうがパフォーマンスも高い。たとえば、速いペースで見た目にはかからずに追走していたクイーンカップでは凡走している。逆に軽い馬場でかかり気味に追走していていた時のほうが高いパフォーマンスを発揮している。

 オークスも道中はかかり気味に追走するような緩いペース。軽い馬場になるだろう。ホウオウピースフルが高いパフォーマンスを発揮しやすいレースになりそうだ。




水上学の血統トレジャーハンティング

【オークス】デゼルVS桜花賞組?

【今週のポイント】
ほとんどの馬にとって、初めての2400mで争われるオークスではあるが、この10年は、前走の着順が汚れている馬の巻き返しは至難の業となっている。距離適性云々が杞憂に終わることが多いということだ。

連対馬で見れば、桜花賞組にしても9着、10着馬の巻き返しが2例あるだけで、あとはすべて3着以内から。フローラS組が連対に絡んだ5回も、3着が最低着順。忘れな草賞、スイートピーS組は当然勝ち馬のみ。軸には、どの組からは別にしても、前走3着以内からが無難なのかもしれない。

となれば、堅い決着が多いということになるが、波乱はやはり軽く見られがちなスイートピー組、忘れな草賞組が勝ち切った時。この組の評価は、年により大きく変わってくる。

今年は粒が揃った世代。キャリアこそ浅いが、スイートピーS勝ち馬デゼルの脚は破格だった。これが、桜花賞上位組にどこまで通じるか。今年のオークス展望は、ここが最大のカギとなりそうだ。

★土曜東京11R 京王杯スプリングC(G2)
◎本命馬 ダノンスマッシュ 2番人気1着
レーン騎手が、行く馬がいないとみて逃げの手に。スローに落として33秒1で上がっては後続は為す術なしだった。

$お宝馬 レッドアンシェル 6番人気11着
ロスなく終始6番手。そこから伸びるどころか、バテてもいないのに後続に差された。ペースも確かに合わなかったが、東京のような長い直線ではダメなのかもしれない。

★日曜東京11R ヴィクトリアマイル(G1)
◎本命馬 ノームコア 5番人気3着
やや縦長、6番手といっても先頭から距離がある位置取り。直線は少し外目へ出すと、芝の色の変わり目を追われてよく伸びたが、前残りの馬場もあったし、そもそも相手が悪すぎた。タイミング1つで2着はあっただけに残念。

$お宝馬 コントラチェック 8番人気14着
トロワゼトワルにハナを譲り2番手。思い切って行っていればどうだったかという思いはあるが、それでも無理か。コーナー4つでうまく息を入れながらの逃げ馬なのだろう。

【次回の狙い馬】
土曜 東京9R 9着
スズカユース
押っ付けて予想通りハナへ。僚馬スズカゴーディーの追い込みのこともあるので、こちらも気分良く飛ばした。直線入って手応えはあったが、なかばで止まってしまった。長い直線と1400mもこたえたかもしれない。次走、直線の短い福島や新潟のダートなら押し切り可能だ。

土曜 新潟10R 6着
ゲンパチマイティー
今回は休み明けも仕上がっていた。出遅れて挽回も中団後ろあたり。そこから直線追われたが、ジリジリとしか伸びなかった。ただ反応がスタートから鈍く、身体よりも中身の勝負気配が整っていなかった感じ。叩かれてスイッチが入れば、次走は古馬混合でもやれる。それだけの力はある馬だ。



回収率向上大作戦・須田鷹雄

前々走以前にどんなレースで好走してくるとオークスで期待できる?
2020年05月19日(火) 12時00分 45
桜花賞から巻き返せそうな馬は…

 阪神JF→チューリップ賞→桜花賞は同じコースで行われるので、馬の適性についてはそれほど考えなくてもよい。ただオークスはいきなり東京芝2400mに舞台が変わる。直近の桜花賞が大きな意味を持つのはもちろんだが、それよりさらに前のレースでオークスと結びついているのはどんなレースなのだろうか?

 今回は4~13歳の10世代について、2歳~3歳4月のオープン競走で1~3着になった馬を抽出する。そのうえで、その馬たちがオークスに出走した場合、どんな成績だったかを見てみよう。該当馬15頭以上で芝1200m以下と2歳夏競馬までのレースは除き、オークスの前走としてよく登場するレースも外す(普通の前走レース別成績に出てくるので)。同じ馬が複数のグループに属することは当然ある。

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 回収率はメイショウマンボが跳ね上げた紅梅Sとフィリーズレビューが目立つが、オークス好走馬が2頭と1頭の話なので判断しづらい。そもそも今年は両レースの1~3着馬がいないので悩む必要もない。

 全体を見ると、古いオープン好走歴というのはあまり機能するものではなく、結局は阪神JF→チューリップ賞というルートが強いのだなという印象。他にひとつ挙げるとしたら同じ東京のクイーンC好走馬か。今年はミヤマザクラとマジックキャッスルが該当。桜花賞では5、12着だったが、ミヤマザクラのほうはヒモ馬候補に取り入れてもよさそうだ。






重賞データ分析・小林誠

【オークス】今年は順当決着の可能性が大!

■オークス(GI・東京芝2400m)フルゲート18頭/登録25頭

★3行でわかる! オークス 攻略の糸口

1.1番人気が強いコース&レース。順当決着傾向が強め。
2.乗り替わりは大幅マイナス。キャリアの浅い馬を重視!
3.速い上がりが大きな武器に。枠番は「外」をプラス評価。

データ特注推奨馬
 ★デアリングタクト

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 青葉賞というトライアルがあるダービーとは違って、出走するほぼ全馬が「未知の距離」となるオークス。まだ未完成な3歳牝馬にとっては過酷なレース条件で、序盤からガンガン飛ばしていくような乗り方は、どの馬にとっても選択しづらい。自然と折り合い重視となり、そうなれば当然ながら、最後の直線での瞬発力勝負に。こういったレースの「背景」が、結果からも色濃く感じられる。

 昨年は波乱決着となったが、基本的にはかなり順当決着傾向が強いレース。ここで掲載しているデータをご覧の通り、好走馬のほとんどが前走でも上位人気、もしくは上位の着順だった馬である。いわゆる「巻き返し」のきかないレースであるのは間違いなく、前走で「4番人気以内かつ4着以内」という結果を残しているのが、ここで好走するための必要条件といえるだろう。

 また、瞬発力勝負に必要不可欠な「末脚のキレ」が問われるレースであるのも、強く意識しておきたいポイント。それを見抜くために必ずチェックしたいのが、前走と2走前での上がり3F順位である。これが2走とも3位以内だった馬は、連対率25.6%、複勝率33.3%と高確率で好走。過去10年の勝ち馬のうち、8頭までがこれに該当している。あとは、外枠に入った馬のほうが好成績であるのも押さえておきたい。

 あとは、鞍上の乗り替わりが大幅マイナスであることや、浅いキャリアで出走までこぎつけた素質馬が強いレースであることも、取捨選択に欠かせない要所。特注推奨馬は、デビューからすべて上がり最速で無敗の桜花賞馬となった、デアリングタクトである。まったく面白味のない選択だが、ケチのつけようがない実績とプロフィルの持ち主。ここは素直に信頼すべきだろう。


【コース総論】東京芝2400m Bコース使用
・コースの要所!
★1番人気は高信頼度。配当妙味があるのは4~6番人気と10~12番人気あたりか。
★内枠有利&外枠不利の傾向。馬番1~6番は回収値も高く素直に高評価すべき。
★上がり上位馬が好成績であるように差し優勢。中団待機組を重視したい条件。

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 日本における「チャンピオン選定コース」である、東京芝2400m。ホームストレッチの坂を上りきったあたりがスタート地点で、最初のコーナー進入までは約350m。今週はBコースでの開催となるが、それでも幅員は十分にある。近年は馬場バイアスが極端になりがちだが、基本的には広々とした「紛れのないコース」といえる。

 それもあってか、1番人気馬は[11-6-7-11]で複勝率68.6%、複勝回収値97という素晴らしい結果を残している。フルゲート18頭に限定したデータであるのを考えると、これはかなり優秀な内容だ。配当妙味があるのは4~6番人気と10~12番人気で、こちらも内容はなかなか優秀。レースによっては、思いきってここから入るのもアリだろう。

 次に枠番だが、こちらは「内枠有利&外枠不利」の傾向が強い。平均人気差が大きく、内枠のほうが好成績で当たり前ではあるのだが、内枠である馬番1~6番はその人気にキッチリ応えており、回収値もかなり優秀。対照的に外枠である馬番13~18番は、低信頼度かつ低回収率である。外枠に入った馬は、人気でも過信は禁物だ。

 最後に脚質について。目立っているのが上がり上位馬の好内容で、イメージ通りに差し優勢といえそう。先行勢もけっこう踏ん張っているのだが、逃げた馬が1頭も勝てていないように、東京の長い直線を前で粘りきるのはかなり難しい。しかもオークスは、未完成な3歳牝馬限定戦。スタミナに不安を残す馬が多い一戦でもあり、中団でキッチリ折り合って末を伸ばせるタイプのほうが格段に買いやすい。


【レース総論】オークス(GI) 過去10年
・レースの要所!
★1番人気の信頼度はコースデータ以上。基本的に順当決着傾向が強いレース。
★コースデータとは真逆で馬番13~18番が好内容。脚質面はやはり差し優勢。
★好走例がキャリア4~5戦に集中。前走レース別では忘れな草賞組が要注目。
★大一番らしく、継続騎乗組が圧倒的に強い。外国人騎手の好成績も目立つ。

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 レースの平均配当は、単勝945円、馬連8990円、3連複1万1888円と、高くも低くもない平均値に近い数値。昨年は12番人気のカレンブーケドールが2着に食い込み、馬連2万5140円という高配当が出ている。しかし、近年で「荒れた」といえるのは昨年と2013年(9番人気メイショウマンボが1着)くらいのもの。堅く決まっている年も多く、波乱傾向は弱めといえるだろう。

 人気別成績を見ても、1番人気は[5-2-1-2]で勝率50.0%、連対率70.0%と超優秀。それとは対照的に、ふたケタ人気馬はトータル[0-1-0-87]と、前述のカレンブーケドール以外はすべて4着以下に終わっている。7~9番人気はけっこう上位に食い込んでいるのだが、極端な穴狙いは避けたほうが賢明。高配当を狙うにしても、中穴重視の姿勢のほうが好結果を呼び込みやすいはずだ。

 枠番は、コースデータとは「真逆」の結果が出ている。内枠である馬番1~6番は、複勝率こそ20.7%とトップながら、平均人気7.7に対して平均着順9.4と人気を大きく裏切る結果。単純に内外を比較したデータでも、明らかに外のほうが好内容なのだ。ひとケタ人気に限定したデータも用意したが、コレでも外枠が圧倒的に優秀。おそらくこれには、差し優勢のレース条件であるのが大きく関わっていると思われる。

 というわけで脚質データだが、最速上がり馬は[7-3-2-1]で連対率76.9%、複勝率92.3%という驚異的な強さ。もっとも速い上がりを使える馬が見抜ければ、このレースの馬券は獲れたも同然といえる。このレースで速い上がりが大きな武器となるのは、冒頭の「特注データ」でも解説した通り。スタミナに不安を残す馬が多いので、当然ながら折り合い重視となり、最後の直線での瞬発力勝負となりやすいのだろう。

 注目したいのがレースキャリア別成績で、近年はますます「キャリアが浅い馬のほうが高信頼度」という傾向が強まっている。昨年の優勝馬ラヴズオンリーユーも、キャリア3戦での挑戦でオークスを制覇。育成技術の向上や外厩の存在により、数を使わずに目標とするレースを目指すスタイルが確立されたのが大きい。勝ち負けになる馬のキャリアは、「多くても5戦まで」と考えたほうがいい。

 前走レース別では、当然ながら桜花賞組が馬券絡みした馬の大半を占めている。桜花賞で3着以内だった馬は、トータル[6-3-4-13]で連対率34.6%、複勝率50.0%と、その半数がオークスでも馬券になっている。ただし、桜花賞4着以下馬はトータル[1-1-1-50]と成績不振で、ここよりも「別路線組」を狙ったほうがオイシイ。出走数こそ少ないが、過去10年で3勝をあげている前走忘れな草賞組は、今年も要注目といえる。

 最後に騎手関連データ。ハッキリと「継続騎乗>乗り替わり」であり、大一番での鞍上のスイッチは大幅割引。好成績である外国人騎手への乗り替わりであっても、プラスに評価するには至らない。2018年には、鞍上が乗り替わる馬が過半数となる11頭を占めたが、それでもすべて4着以下。他によほど強い買い材料でもないかぎり、積極的には買いづらい騎乗パターンである。


【血統総論】

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 血統面では、オルフェーヴル産駒とエピファネイア産駒をプラス評価の対象とした。ご覧の通りディープインパクト産駒もかなりの強さを見せているのだが、登録馬のうち9頭が該当と、ここを含めるとプラス評価の対象馬が多くなりすぎる。「意外に強い」という印象のオルフェーヴル産駒や、出走数は少ないがコース適性の高さは十分に感じられるエピファネイア産駒を、プラスに評価すべきと判断した次第である。


★特別登録馬 総論×各論

 桜花賞の2着馬レシステンシアの姿こそないが、それ以外の桜花賞上位馬はすべてここに駒を進めてきた。別路線組では、驚異的な末脚でスイートピーSを制したデゼルや、フローラSを好内容で勝ったウインマリリンが人気を集めそう。収得賞金900万円の馬は、このままいけば8分の2の抽選という狭き門となるが、それをくぐり抜けても今年の出走メンバーだと、かなり厳しい戦いを強いられるはずだ。

 トップ評価は、いたって素直にデアリングタクト。冒頭でも特注推奨馬にあげているように、ここは実績を素直に信頼すべきだと判断した。オークスで必要とされる高レベルな瞬発力の持ち主であるのは言うまでもなく、道悪であれだけの脚が使えるのだから、パンパンの良馬場ならばなおさら。折り合いも問題なく、血統面での裏付けまである。極端に前が止まらない馬場バイアスにでもならないかぎり、勝ち負け必至である。

 二番手評価も、これまで超順当にデゼル。キャリア2戦目となるスイートピーSを、後方から上がり32秒5という驚異的な末脚で突き抜けたのだから、モノが違うとしか言いようがない。まだまだ荒削りだが、それだけに伸びシロ十分。デアリングタクトを逆転できる可能性を秘めるのは、この馬だけだ。「浅いキャリアで駒を進めてきた素質馬」という好走条件にも、文句なしで合致。今度はどんな走りが見られるのか、本当に楽しみだ。

 三番手評価も、これまた順当にクラヴァシュドール。1勝馬ではあるが、牝馬クラシック路線で見せてきたパフォーマンスの高さは胸を張れるもの。桜花賞も、道中でスムーズさを欠いておきながら4着にくるのだから、本当に力がある。東京への輸送は経験済みで、父ハーツクライという血統から距離もこなせそう。逆転まではどうかだが、デアリングタクトに肉迫するような走りができて、何の不思議もない1頭といえる。

 以下はウインマリリン、サンクテュエール、スマイルカナ、ウインマイティー、スマイルカナという評価の序列。つまり「どこまでいっても順当決着」というのが、現時点での見立てである。さすがに1頭くらいは人気薄が絡んでくるかもしれないが、それもおそらくは7~9番人気あたり。枠番はおろか出走馬すら決まっていない段階でも、今年の出走メンバーで昨年のような高配当決着はない──と断言したくなるほどだ。




鈴木康弘「達眼」馬体診断

【オークス】デアリング100点!「チェリーブラッサム」思い出す進化“新しい私”

 チェリーブラッサム(桜花)の女王が目覚めた。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第81回オークス(24日、東京)では無敗桜花賞馬デアリングタクトに唯一の満点を付けた。達眼が捉えたのは松田聖子の昭和のヒットナンバー「チェリーブラッサム」、「赤いスイートピー」を思い出させる成長ぶり。有力候補の馬体を春にちなんだヒットソングになぞらえながら解説する。

 コロナ禍と闘う人々を歌で応援する動きが広がっています。作詞家の松本隆さんは歌手・松田聖子に提供した楽曲「瑠璃色の地球」を合唱するサイトを立ち上げ、自撮り動画による参加を呼び掛けています。

 ♪夜明けの来ない夜は無いさ…。

 心がふさいだり、ささくれ立った時こそ、歌の力でみんなに元気を。競馬に人を勇気づけるほどの力はないでしょうが、ステイホームのファンに少しぐらいは元気を届けられるかもしれない。映像でも伝わるサラブレッドの美しさとひたむきさ、そして、先週のヴィクトリアマイルで見せたアーモンドアイのような強さ。馬券を獲って懐の温かさも加われば、もっと元気になります。

 ♪くじけそうな時もあなたがそこにいたから…。

 そんな馬は今週のG1にも登場するのか。自宅のテーブルに広げた馬体写真をチェックしていると、アーモンドアイの次代を担う名牝が目に飛び込んできました。「大胆な戦法」(デアリングタクト)と命名された青鹿毛。その変身ぶりには少々驚かされました。

 桜花賞前にも称賛した張りに満ちた馬体が一段とパワーアップしています。腹周りもフックラしてきた。特に際立つのがトモ。尾の付け根が他の馬より上に付いているのに凄く格好良く映ります。トモの筋肉が尾の付け根の位置までせり上がっているからです。トモは馬のエンジン部。エンジンパワーがアップすれば大胆な戦法もとれます。前肢の張りも負けていない。なだらかに傾斜した肩、良く抜けた首にも筋肉をつけています。

 毛ヅヤはもっと変わりました。桜花賞時に残っていた冬毛が奇麗に抜けて、見違えるような光沢を放っています。アーモンドアイのような一時代を築く名牝はビッグタイトルを手にするたびに目覚めていくもの。デアリングタクトも桜花賞タイトルをつかんで目覚めたのか。新たな進化を遂げた姿です。

 松田聖子のヒットナンバー「チェリーブラッサム」(作詞・三浦徳子)のアップテンポな旋律が耳によみがえってきます。

 ♪なにもかも めざめてく 新しい私 走り出した…。

 “新しい私”に変身したのは馬体だけではありません。その顔つきにも驚かされました。桜花賞前には切羽詰まった心境を示すようにハの字に強く広げていた耳をゆったりと立てています。

 ♪心の岸辺に咲いた…。

 松田聖子の「赤いスイートピー」(作詞・松本隆)に倣うなら、心の岸辺に咲いた余裕という春の花。この心のゆとりが初の関東遠征で大きな力になる。2400メートル戦の緩い流れでも折り合いを可能にします。もとより背も腹下も長い中長距離体形。ステイホームを強いられる競馬ファンに元気を届けられる無敗2冠候補です。(NHK解説者)


【オークス】ピースフル95点 「世界中の誰よりきっと」似ている父娘 黄金色に馬体染めて

 サラブレッドは血で走るといいますが、これほど似ている父子、兄妹も珍しい。ホウオウピースフルの気性が激しそうな横顔は“金色の暴君”と呼ばれた父オルフェーヴル譲り。刃の切っ先のように鋭く立てた耳、相手を射抜くような眼光、ふてぶてしく広げた鼻腔(びこう)…。“元祖・暴れん坊”ステイゴールド(祖父)からオルフェーヴル、そして3代目へ受け継がれる悍(かん)馬の系譜。ひと目で誰の娘か、孫娘か分かります。
 暴れん坊一家の3代目にふさわしい容貌。女親分がまとうきらびやかなミンクのコート代わりに、明るい栗毛の被毛が春の日差しを浴びて黄金色に輝いています。“金色の暴君”と同じ光沢を放つあたり、よほど体調がいいのでしょう。この親にしてこの子あり。横顔と共に毛ヅヤも誰の娘かを教えてくれます。世界中の誰よりきっと似ている父娘。

 ♪まぶしい季節が 黄金色に街を染めて 君の横顔 そっと包んでた…。

 春にちなんだ歌になぞらえれば、平成初期の大ヒット曲、中山美穂の「世界中の誰よりきっと」(作詞・上杉昇、中山美穂)。

 ♪世界中の誰よりきっと 胸に響く鼓動を…。

 暴れん坊一家の類いまれな勝負根性を胸に秘めた3代目ですが、その馬体は半兄ブラストワンピース(ハービンジャー産駒)によく似ている。トモ、肩、首…どの部位にも厚手の筋肉が付いています。男勝りのたくましい体つき。父系が闘志の塊なら、母系から受け継いだのは筋肉の塊です。背中、腹下に余裕があるつくりも兄と同じ。2400メートルにも対応できる中長距離体形です。

 ♪すずめの兄妹(きょうだい)が電線で 大きくなったら何になる…。

 昭和の末にヒットしたわらべ(高部知子、倉沢淳美、高橋真美のユニット)の「めだかの兄妹」(作詞・荒木とよひさ)。すずめの兄妹はタカになり、子猫の兄妹はトラになると歌いますが、馬の兄妹はそろってG1ホースになるか。血と共に気で走り、筋肉でも走るサラブレッドです。


【オークス】ミヤマザクラ90点 未熟な時を経て開花の香り

 深山桜の開花はソメイヨシノより1カ月半遅い5月中旬。花径2センチぐらいの小さな白い5弁花が各地の人里離れた深山で開き始めている。そんな花便りがありました。ミヤマザクラも1カ月前の桜花賞時には固いつぼみのように未熟だった馬体を膨らませています。
 肩に比べて薄手だったトモに柔らかい筋肉を付け、腹周りもとてもフックラしてきた。470キロ前後の体重以上にボリューム感があります。もともと機能性に優れた骨格の持ち主。例えば、トモと飛節は絶妙な角度でリンクしていました。開花の季節を迎えて、そんな高い機能性にパワーも加わったのです。距離延長にも対応できるゆとりのあるつくり。

 春の歌になぞらえるなら、初音ミクの「深山桜」(作詞・まつき)しかないでしょう。人里離れたほこらで深山桜に寄り添いながら独り暮らす妖(あやかし)と人間の娘との出会いの物語。

 ♪人の浮き世は脆(もろ)く儚(はかな)く 妖の私には触れられぬ…。

 馬も水道の蛇口のように人間の都合で開いたり閉じたりできません。時を待てばやがて素質は開花する。

 ♪まだ淡い空仰いで 春の香りを待つ…。

 深山桜の花が香り立つ季節の到来です。


【オークス】アブレイズ85点 今回はなんだかキレイなつくりです

 アブレイズはとても奇麗です。前後肢のバランスが絶妙。首差しがスッと抜け、力感ある肩とトモの張りが調和している。トモのパワーを推進力に変える飛節も適度な角度と大きさ。毛ヅヤもさえている。
 ♪自分で言うのもヘンだけど 今日はなんだかキレイです…。

 矢野顕子の「春咲小紅」(作詞・糸井重里)の軽妙なメロディーに合わせて体を揺らしたくなる姿。奇麗なだけではなく、インパクトもあります。前肢のつなぎにゆとりがあれば申し分ないが、背も腹下も長いので2400メートルはOK。

 ♪わたしのココロ フワフワ舞い上がる…。

 トモを流し、耳に力を入れながら立っているのでレース当日、舞い上がらないように気をつけて。


【オークス】クラヴァシュドール85点 重ねたレッスン、今素敵なボディーに

 クラヴァシュドールの魅力は立派なトモ。ハーツクライには古馬になってからトモを発達させる産駒が多いが、この牝馬は例外です。それだけ稽古を重ねてきたのでしょう。
 ♪大切なレッスン 今素敵なレディーになる…。

 原田知世の「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」(作詞・松任谷由実)をイメージさせます。

 桜花賞時には左右に開いていた耳をしっかり立てた姿にも好感がもてる。尾は自然に流している。落ち着きがうかがえます。距離延長も克服可能な胴長の体形。毛ヅヤも良好。ただ立ち方が少々頼りない。ダンデライオン(英語でタンポポ)とはいえ、どっしりと四肢で大地をつかんでほしい。


【オークス】マルターズディオサ80点 変化した“心の上着”

 マルターズディオサは顔つきが変わってきました。桜花賞前には穏やかだった目が険しくなっている。馬体は桜花賞時同様、440キロの体重以上に大きく見せる。筋肉量も豊富だし、腹周りもフックラしています。顔つきは心の上着。
 ♪私このごろ変わっていくのよ 心の上着をぬぎすてて…。

 あみんの「ペパーミントの香り」(作詞・岡村孝子)。心の上着の変化は競走馬としての目覚めか。頼もしいこのごろの変化です。


【オークス】サンクテュエール80点 立ち姿きれいになったね

 サンクテュエールはヤング向け雑誌のグラビアを飾る美少女っぽい立ち姿。首から肩、トモにかけての輪郭が美しい。飛節などの関節も過不足ない大きさと角度がある。
 ♪きれいになったねと 見つめられたら ドキドキしちゃう…。

 「春色のエアメール」(作詞・EPO)を歌った松本典子のように可憐(かれん)です。これから腹周りにもボリュームを増やしていくでしょう。


【オークス】ウーマンズハート80点 少しずつ大人になった

 ウーマンズハートは馬名の通り、少女から女の心を持つようになったみたいです。顔つきに戦う牝馬らしい強さが出てきた。
 ♪少しずつ大人になってゆくわ…。

 南野陽子の「吐息でネット」(作詞・田口俊)。

 馬体は幼い。キ甲が抜けていないし、ハーツクライの若駒らしくトモも頼りない。2400メートル向きの体形とはいえ成長途上。

 ♪背のびじゃなくって綺麗(きれい)でいたい…。


【オークス】リアアメリア80点 変わらぬ美しき景色

 リアアメリアの体のシルエットは相変わらず美しい。柔軟な筋肉を肩やトモにつけ、腹周りもフックラ。阪神JF時と比べると、良くもあしくも変化がない。
 ♪変わらぬ街の景色が教えるのは…。

 いきものがかりの「花は桜 君は美し」(作詞・水野良樹)。

 2歳の暮れから完成度の高かった馬体。マイル体形ですが、疲れがたまりづらい柔らかな筋肉とクレバーな顔が距離克服の頼りです。


【オークス】マジックキャッスル75点 夢くれし眼差し

 マジックキャッスルはG1の夢を抱かせる眼(め)の持ち主です。同じ国枝厩舎のアーモンドアイのような澄み切った聡明な瞳。
 ♪夢をくれし君の眼差(まなざ)しが肩を抱く…。

 東日本大震災の被災地支援でも歌われた「春よ、来い」(歌、作詞・松任谷由実)を澄んだ瞳に贈りたい。

 飛節は深いが、祖父のSSだって曲飛だった。尾をねじり上げているが、リラックスすれば夢を抱ける。


【オークス】ウインマリリン75点 立ち姿うららか

 ウインマリリンの馬体にはゆとりがあります。フローラSから中2週の間隔を感じさせないふっくらとした腹周り。牝馬にとってこのフックラさはとても大切。立ち姿には気負いがなく、ゆったりとハミを取っています。
 ♪春のうららの隅田川…。

 由紀さおりと安田祥子が歌う「花」(作詞・武島羽衣)のような春うららかなたたずまい。あとは毛ヅヤが欲しい。


【オークス】スマイルカナ75点 まぶしい毛ヅヤ

 スマイルカナは見映えしづらい芦毛のわりに毛ヅヤを良く見せている。陽光にまぶしく輝いています。
 ♪あなたに出逢(あ)ったまぶしさに…。

 桑江知子が歌う「私のハートはストップモーション」(作詞・竜真知子)。桑江の故郷、沖縄島の言葉でカナとは愛の意味です。

 馬体の線は細いが、距離延長に対応できる胴長のスラッとした体形。なによりも、愛がまぶしい。


【オークス】デゼル75点 肩“もうすぐ春”

 デゼルは心身ともに発展途上です。トモを前踏みしながら顎を突き出した立ち姿は幼く、キ甲は抜けていない。でも、キラリと光る素質が肩の傾斜と筋肉のボリュームに表れています。
 ♪もうすぐ春がペンキを肩に お花畑の中を散歩にくるよ…。

 荻野目洋子もカバーしたフォークの大ヒット曲「結婚しようよ」(作詞・吉田拓郎)。成長すれば結婚相手はいくらでも現れます。





【漆山“教授”のGI因数分解】デアリングタクト死角なし
2020年5月19日(火) 04:59©サンケイスポーツ

 東大卒の知性派、漆山貴禎記者がGI的中への解法を探る「漆山教授のGI因数分解」。オークスは、上がり最速で勝った桜花賞馬の好成績データから、2冠を狙うデアリングタクトに死角なしと判断。血統面からデゼル、騎手からクラヴァシュドールにも注目した。

 アーモンドアイの衝撃が覚めやらぬ中、牝馬3冠の第2戦が行われる。2年前に圧勝した女傑のような存在は現れるのか-。

 (1)上がり3ハロンに着目

 阪神芝1600メートルが広々とした外回りに替わって以降、桜花賞の結果はオークスに直結するようになってきた。コース改修後の2007年から昨年までの13シーズンで2冠馬は4頭誕生しているが、この数字はグレード制導入の1984年から06年までの23シーズンとすでに同じ数字。さらに、表1に示したように上がり3ハロン最速で桜花賞を制した馬は、オークスで【3・1・0・0】と連対率10割だ。

 (2)ディープ産駒の取捨

 ディープインパクト産駒は近5年で3勝と強さを発揮しており、今年も大挙9頭が登録。一見、的を絞りづらいようだが、シンプルなふるいにかければ好走候補は絞られる。表2の通り、連対したのは前走でも2着以内に入っていた馬だけ。3着以下からの巻き返しはかなり難しい。今年の基準クリア馬は僅か2頭だ。

 (3)大舞台での強さ

 クラシックでの歴代騎手成績ベスト5が表3。“レジェンド”武豊騎手の強さは別格として、5位にランクインしたM・デムーロ騎手に着目したい。連対率29・5%は武騎手を上回っている。昨年はラヴズオンリーユーでV。今年も大阪杯、NHKマイルCとすでにGI2勝を挙げ、大舞台での強さを見せている。

 注目馬 デアリングタクトは桜花賞で次位を0秒5も上回る異次元の末脚を披露。血統的にも距離延長がマイナスになることはなさそうで、1957年ミスオンワード以来63年ぶり2頭目の無敗牝馬2冠制覇に突き進む。

 ディープ産駒ではデゼルが最有力とみる。スイートピーSでマークした上がり3ハロン32秒5は、同レースにおける歴代最速値。中2週での再輸送がどう出るかだが、桜花賞馬との無敗対決が楽しみだ。

 連覇を狙うM・デムーロ騎手が手綱を取るのはクラヴァシュドール。桜花賞は3コーナーで前が狭くなる不利を受け、ズルッと位置取りを下げながら4着まで盛り返した。父ハーツクライならこの舞台はぴったりで、巻き返しが期待できそうだ。 (漆山貴禎)
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