「虎の子」の一頭・馬場虎太郎

タフな馬場のBコースで行われる宝塚記念で馬場に恵まれる馬

 今開催、阪神芝内回り2000~2200mは8レース行われた。うち6レースのトラックバイアスは「前有利」。連対した16頭のうち9頭。勝ち馬8頭のうち6頭が最初のコーナーを3番手以内で通過。4番手以下から3着内に好走した12頭のうち8頭は4枠より内だった。

 今開催の阪神芝は、開催前半から緩い状態。開催中に雨の影響をうけていた日も多かった。路盤の状態が悪く、走りにくい馬場コンディション。

 内回りコースはペースが流れると道中の負荷がかかる。よって、差し馬は直線まで体力がもたない。直線で鋭い差し脚を発揮することが難しい馬場コンディションになっているためだ。道中から流れに乗り、バテない馬にアドバンテージがある。

 そして今週からはBコース替わりになる。最近の阪神芝は開催の後半や馬場コンディションが重いほど先行、内有利率が高くなる傾向がみられる。さらにAコースよりもBコースの方が先行有利になりやすい。先週までと同様、先行できるタイプや道中から内を器用に加速していけるタイプを狙いたい。

 グローリーヴェイズは前走香港ヴァーズでG1初制覇。それも圧勝だった。休みを挟みつつの出走をしている馬だが、京都大賞典含め近2走は前半から流れにのったレースができており、それ以前に出走した天皇賞春、日経新春杯、菊花賞の頃とはイメージが異なる。

 特に前走の香港ヴァーズは好スタートからインに控え、馬群を捌いて進出してくる内容。先週までの阪神芝内回り2000~2200mで好走していたタイプに近い。

 2走前から前半のダッシュ力が増していることも考慮すると、過去最長の休み明けとなる今回は近2走よりもさらに前めで流れにのるレースができそうだ。

 これまで馬場コンディション「稍重い~重い」に出走したのは2回。きさらぎ賞でタイム差なしの2着。日経新春杯で1着。重めの馬場コンディションを苦にしないタイプだ。





水上学の血統トレジャーハンティング

【宝塚記念】最も適性を問われるG1

【今週のポイント】
アーモンドアイ、フィエールマンの名こそないが、現役の古馬のトップクラスはほぼ顔を揃えたと言っていい宝塚記念。当面目標とするレースもないだけに、ここは各陣営メイチの仕上げになるだろう。これだけの顔ぶれ、胸が躍る。

毎年言われることだが、宝塚記念は、ここがG1初戴冠となるケースが多いレースである。シーズン末期、そして小回りの坂コース。直線も短い。天皇賞春・秋やジャパンC、前哨戦である金鯱賞とは大きく異なる形態になるのもその理由だろう。

同様の形状である大阪杯が直結しそうなものだが、これまでG1昇格後は連対馬が3頭出走して、キタサンブラックが天皇賞勝ち後に人気で大敗、直行したアルアインは4着、同じく直行のキセキが2着と、あまり結果は出ていない。

そもそも、前走重賞を勝ってきた馬が連勝を果たしたのは、近10年でラブリーデイの1頭だけなのだ。スイートスポットは天皇賞負け組だが……?

血統的には、明らかにパワー血統が優勢となっている。鋭い切れを誇る馬は苦戦傾向が濃い。

とにかく、舞台設定からして、適性が最も問われる古馬G1といえる。戦績はもちろん、血統から面白い穴馬もチラホラ見えてきた。土曜の血統トレジャーハンティングをお待ちいただきたい。

★土曜阪神11R 三宮S
◎本命馬 ヴェンジェンス 1番人気1着
力量的に当然。クリンチャーの徹底マークを受けたが、危ういシーンは皆無だった。

$お宝馬 テーオーエナジー 10番人気10着
オーヴェルニュが強硬にハナを主張してきたのは誤算。控えることを余儀なくされた上に、ペースも激化してしまった。相手次第で見直せる。

★日曜東京11R ユニコーンS(G3)
◎本命馬 カフェファラオ 1番人気1着
想像以上の強さ。レッチェバロックやフルフラットを直線でかわいがりながら、少し追っただけであっと言う間の5馬身。ただただ無事を願うのみ。

$お宝馬 ケンシンコウ 11番人気3着
前走同様スタートで安めを売り、今回もある程度挽回して中団で直線へ。ハイペースで前がバラけていた分、馬群を捌きやすく、外からデュードヴァンと一緒に伸びてくる。さすがに鋭さでは叶わなかったが、ゴール前までしっかりジリ伸びしている。前走で3勝クラスレベルの時計を出していた能力は本物だった。

【次回の狙い馬】
土曜 東京8R 6着
バンディエラ
出戻り戦。ハナかと思われたが、主張されて2番手。かなり速い流れとなったが、直線は勝ちに動いていったん先頭も、最後はバテてしまった。ただ、以前は未勝利で1勝クラスに交じり4着した能力があった。出涸らし時期のこのクラスなら勝てるはずだ。展開だけでなく長い直線もこたえた感があり、次走、福島の1150mではやや短いが、新潟1400mならベストではないだろうか。

日曜 阪神5R 4着
マカオンドール
新馬戦。緩さが目立ち、また馬っ気も出していたように幼かったし、スタートもミス。しかし走りは見所あった。少しずつ位置を上げたが、直線は早めに促されるも反応鈍く、最後の1Fでやっと本気になった感。今回使った上積みは相当あるだろう。これなら続戦した方がよく、次走中京のうちに使いたいところ。




回収率向上大作戦・須田鷹雄

【宝塚記念】今回の上がり最速馬は良くて、前走上がり最速馬はダメ!?

無意味な上がり最速というのも存在する


 このコラムで一年前になにを書いたか覚えている読者は少ないだろう。昨年の本欄では「宝塚記念は上がり最速を取った馬が過去10年すべて連対している(過去20年でも上がり最速馬が連対を逃したのは1回しかない)」ということを書いた。上がり最速馬が上位に来やすいのは当たり前の話だが、最後方から突っ込んだだけで馬券に絡まない、無意味な上がり最速というのも存在する。他の古馬GIに比べてそれが発生しにくいのが宝塚記念だというのが昨年の内容であった。実際にリスグラシューが道中2番手ながら上がり最速を取り優勝している(ちなみに私の予想は他の馬を◎にしてまるっきり外れた)。

 それと組み合わせると判じ物のようになるが、宝塚記念では「前走上がり最速馬が過去10年勝っていない」のである。前走上がり最速をマークしていた馬の宝塚記念成績は過去10年で[0-1-1-18]。20年前~11年前だと3頭勝っているのでたまたまかもしれないが、3番人気以内馬が6頭いて勝ち馬なしはちょっと物足りない。また、前走上がり1~3位で括った場合、[3-2-3-42]。馬券に絡んだ馬は8頭いるが複勝回収率は37%と極端に低い。

 今年はサートゥルナーリアが前走上がり1位、ラッキーライラックが前走上がり2位なので、たいへん悩ましい。能力の絶対値を信じて目をつぶるか、別な切り口を探すかという話になる。

 別な切り口だとすると、「差し馬を重視」「前々走以前の上がり重視」といった方法が考えられる。昨年と同じく方向性だけ出して馬名で示さないコラムとなり申し訳ないが、私自身これから展開をイメージして候補選びをするところだ。






重賞データ分析・小林誠

【宝塚記念】重い馬場に向く瞬発力を備えた馬を狙え!

■宝塚記念(GI・阪神芝2200m内)フルゲート18頭/登録18頭

★3行でわかる! 宝塚記念 攻略の糸口

1.波乱傾向が強めのコース&レース。5歳馬が絶好調!
2.「内の人気薄」と「外の人気馬」を重視すべきレース!
3.重い馬場で相対的に速い上がりを使える馬が特注!

データ特注推奨馬
 ★現時点ではなし

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 上半期を締めくくるGIながら、勝ち負けに要求される資質が他の中距離GIとは大きく異なる宝塚記念。梅雨の真っ最中に開催されるのもあって、上がりの時計がかかるのが大きな特徴だ。過去10年はいずれも良~稍重での開催となったが、勝ち馬の上がりはおおむね35秒前後。昨年圧勝したリスグラシューも、上がりの時計は35秒2だった。

 それでいて、上がり最速馬は過去10年[6-5-0-0]でパーフェクト連対と、瞬発力の要求度は非常に高い一戦。この時期特有の重い阪神芝で、相対的に速い脚を使えるような適性が求められる。それをよく示しているのが、ここで掲載している前走上がり3F順位別での成績。宝塚記念で強いのは、前走での上がり3F順位が「4~5位」だった馬なのである。

 これはつまり、東京や京都といった「軽い芝」ではキレ負けしていた馬が、「重い芝」に替わって台頭しているということ。そういう意味では、一昔前の有馬記念によく似ている。また、軽い芝で好走してきた馬が人気に推されて負けるケースが多いので、波乱傾向も強め。人気の盲点となりやすい7~12番人気あたりは、要注意といえるだろう。

 あとは、5歳馬の強さや「内の人気薄と外の人気馬が強い」レースであることなども、押さえておきたいポイント。データ特集推奨馬はナシとしたが、勝ち馬のイメージにもっとも近いのは、ブラストワンピース。太めが残らずにキッチリ仕上がっていた場合は、ここでも侮れない存在といえる。


【コース総論】阪神芝2200m内 Bコース使用
※今回は阪神芝2000m~2200m内を集計対象としています
・コースの要所!

★人気サイドは高信頼度も、人気薄の激走率も高め。7~9番人気が狙い目か。
★内枠有利の傾向が強いコース。馬番1~4番に入った馬は回収値も高く特注。
★前優勢だが最速上がり馬の強さは尋常ではないレベル。適性を見極めたい。

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 阪神芝2200m内だけではデータ母数が不足するため、今回は同じ内回りコースである阪神芝2000m内も含めた上で分析を行っている。スタート地点が4コーナー方向に200mズレて、最初のコーナー進入までの距離的余裕が生まれはするが、レースの流れ自体は大きくは変わらない。阪神名物の急坂を2回も上る、タフなコースである。

 まずは人気別成績だが、人気サイドは総じて高信頼度。1~3番人気の連対率は41.4%、複勝率は51.9%と、高いレベルにある。大不振なのが4~6番人気の中穴ゾーンで、わずか5勝という不思議なほどの弱さ。ここを狙うくらいならば、12勝をあげており単勝適正回収値も195.5と超優秀である、7~9番人気を狙ったほうがいい。また、10~12番人気の複勝率も高いなど、人気薄の激走率の高さはかなりのものだ。

 次に枠番だが、目立っているのが内枠である馬番1~4番の強さ。ギャップ値プラス0.7というのは、コースデータでそうそうお目にかかれる数値ではない。単勝適正回収値91.7、複勝回収値108と爆発力も十分で、人気薄でも積極的に買う価値アリ。内枠有利であるのは間違いないが、「外枠不利」ではないので、この点は注意しておきたい。

 最後の直線が短い内回りコースでもあり、脚質は先行勢のほうが優勢。しかし、最速上がりをマークした馬は[8-6-1-5]で連対率70.0%と、尋常ではないレベルの強さを発揮している。直線が短いので一気の脚で追い込むのは厳しいが、中団から速い上がりを使える馬は買う価値が大アリ。ただし、東京や京都の軽い芝ではなく、この時期の重い阪神芝で速い上がりを繰り出せる適性を持つかどうかを、しっかり吟味する必要がある。


【レース総論】宝塚記念(GI) 過去10年
・レースの要所!
★1番人気は過去10年でたったの2勝。7番人気以下など人気薄の活躍が目立つ。
★「外の人気馬」と「内の人気薄」が好内容。全体ではやや内枠有利の傾向か。
★上がり最速馬はパーフェクト連対。前々で流れに乗り速い脚を使う必要アリ。
★5歳馬や前走3番人気以内馬が好成績。継続騎乗組やキャリア16~20戦馬も○。

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 レースの平均配当は、単勝1270円、馬連5272円、3連複3万4136円と、3連複平均の高さが目立っている。つまり、ヒモ荒れ傾向が強いレースということだ。人気別成績を見ても、少頭数で行われることも多いレースでありながら、1番人気は[2-4-1-3]と過去10年で2勝しかしていない。コースデータと同様に、波乱傾向の強さがうかがえる。

 目立っているのが、7~12番人気の好調ぶりだ。昨年はそれなりに堅く決まったが、一昨年は7番人気のミッキーロケット、10番人気のワーザー、12番人気のノーブルマーズと、人気薄が上位を独占。さすがに13番人気以下の超穴馬になると手が出ないが、人気薄はコンスタントに上位へと食い込んでいる。チョイ荒れ~中波乱あたりを狙っていったほうが面白い一戦といえるだろう。

 枠番は、コースデータ同様に内枠である馬番1~4番が好成績。人気薄の激走率が高く、ギャップ値も大きなプラスを計上している。ただし、人気馬は外に入った馬のほうが強いというのが、宝塚記念の面白いところ。このあたりは当日の馬場バイアスにもよるが、「外の人気馬」と「内の人気薄」の二本柱で攻めるのがオススメ。少なくとも、外枠を理由に人気馬の評価を割り引く必要はない。

 脚質面もコースデータに忠実な内容だ。全体では先行勢が優勢なのだが、上がり最速馬は[6-5-0-0]とパーフェクト連対。つまり、後方からではなく、中団より前のポジションから最速の上がりを使って好走している馬が多いのである。昨年の覇者リスグラシューは、道中2番手追走から35秒2の最速上がりを使っての圧勝だった。問われるのは、この時期特有の重い芝で、相対的に速い上がりを使えるかどうかという「適性」だ。

 年齢別では、5歳馬がトータル[6-5-5-32]で連対率22.9%、複勝率33.3%と好成績。馬券に絡んだ馬の過半数をここが占めているのだから、その強さはかなりのものだ。次いで4歳馬という評価順で、6歳以上馬は評価を割り引きたいところ。7歳以上で好走したのは、2018年に香港からの遠征で2着に激走したワーザーだけだ。

 そして、重視したいのが前走での「人気」である。前走国内組については、前走での人気が今回の結果に繋がる傾向が強く、前走3番人気以内馬はトータル[8-5-5-43]で複勝率29.5%をマーク。対照的に、前走ふたケタ人気の低評価から巻き返した馬は過去10年で2頭しかおらず、しかもいずれも3着だった。ちなみに、前走「着順」に関しても、単勝適正回収値が高いのは4着以上馬。巻き返しを過度に期待するのは禁物だろう。

 なぜ好走しているのかよくわからない「アノマリー系」データからは、レースキャリア別成績を紹介。ここまでに16~20戦を消化していた馬が、宝塚記念ではなぜか非常に強い。今年の登録馬でこれに該当するのは、アフリカンゴールド1頭だけだ。そして騎手関連データでは、継続騎乗組の強さが目立つ。上半期を締めくくる一戦だけあって、鞍上の乗り替わりはマイナスに働くようだ。


【血統総論】

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 血統面では、ディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒、ハービンジャー産駒、ステイゴールド産駒をプラス評価の対象とした。安定感があるのはディープインパクト産駒とキングカメハメハ産駒で、勝率の高さは高く評価できるもの。ただし、爆発力に関してはハービンジャー産駒やステイゴールド産駒のほうが上で、こちらは人気薄での「一発」が期待できそうだ。


★特別登録馬 総論×各論

 アーモンドアイやフィエールマンの姿がないのは残念だが、18頭が特別登録と頭数が揃いそうなのはうれしいかぎり。上半期を締めくくる重要な一戦が11頭や12頭になるというのは、やはり味気ない。金鯱賞を快勝してここに臨んできたサートゥルナーリアに、大阪杯でワンツーを決めた牝馬のラッキーライラックとクロノジェネシス、捲土重来を期するダービー馬ワグネリアンと菊花賞馬キセキなど、豪華メンバーとなった。

 ただし、ここまでに述べてきた「宝塚記念の勝ち馬イメージ」にピタッとハマるような馬は見当たらず、意外なほどの混戦となる可能性アリ。波乱傾向が強いコース&レースであるのも前述の通りで、レースの直前まで悩みまくりそう。降雨によって泥んこ馬場にでもなれば、一昨年のような大波乱決着も十分ありうる。

 トップ評価は、牝馬のラッキーライラック。今期初戦の中山記念ではダノンキングリーに敗れたが、大阪杯では大接戦をモノにして見事に優勝。これでGIを3勝と、名牝としての地位を確たるものにした。道悪適性は未知も、ここにきてさらなる成長を遂げている印象で、先行力があるのも強み。阪神芝コースを得意としているのは父のオルフェーヴルと同様で、好勝負が大いに期待できそうだ。

 二番手評価にブラストワンピース。冒頭でも述べたように、「勝ち馬のイメージにもっとも近い馬」である。大阪杯での上がり3F順位は「6位」で、これが5位だったならばもっと上に評価していた可能性もある。レース間隔が長いと太めが残りやすい体質で、この中間もかなり馬体重を増やしているようなのが懸念材料。キッチリと絞れて仕上がっているかどうかで、最終的な評価を決めたい1頭である。

 三番手評価にクロノジェネシス。稍重~不良で[3-0-0-0]という道悪巧者であるのは大きな強みで、京都記念や大阪杯で見せた内容もハイレベル。速い時計が出る馬場でも結果を残している馬だが、苦にする馬が多いぶん、重い馬場になればなるほどこの馬には有利に働く。好位からの競馬がすっかり板についたのも、4歳になってますます力をつけている証明。凱旋門賞馬の産駒らしい、力強い走りを期待する。

 以下は、ワグネリアン、サートゥルナーリア、カデナ、トーセンカンビーナ、キセキ、レッドジェニアルという評価の序列。ここから「内枠の人気薄」や「外枠の人気馬」といった枠番データや人気などでふるいにかけて、最終的な評価へと繋げていく。ヒモ荒れ傾向が強いレースであるという点を、最後の最後まで忘れないようにしたい。







【漆山“教授”のGI因数分解】サートゥルナーリア隙なし
2020年6月23日(火) 05:00
©サンケイスポーツ

 東大卒の知性派、漆山貴禎記者がGI的中への解法を探る「漆山教授のGI因数分解」。宝塚記念は前年の皐月賞馬、香港GI連対馬が活躍している点を重視し、良馬場前提でサートゥルナーリアを最有力候補とし、グローリーヴェイズ、ラッキーライラックもピックアップ。さらに梅雨時だけに道悪に強いハービンジャー産駒のブラストワンピースも挙げた。

 いよいよ上半期を締めくくるサマーグランプリがやってきた。上半期の平地GI予想成績はここまで5勝6敗。何とかタイに持ち込んで、気分良く下半期につなげたい。

 (1)好相性GI 今年は史上最多となるGI馬8頭が出走予定で、目移りする豪華さ。力量比較は難しいが、過去の成績を復習すると、強さを発揮しているのは前年の皐月賞馬。表1の通り、1984年のグレード制導入後、【4・2・0・2】と連対率75%の好成績。“最も速い馬”が阪神内回りでスピードを存分に生かしている。

 (2)酷似した条件 香港GIで連対した馬がその後に宝塚記念に出走してきた場合の成績は、延べ10頭が出走して3勝、2着2回という好成績で、一昨年は香港の雄・ワーザーが10番人気2着と気を吐いた。香港は高温多湿で、シャティン競馬場の芝はやや重くて力を要する。梅雨時の阪神とよく似た条件といえるだけに、当地での好走は重要視したい。

 (3)道悪で浮上の種牡馬 今週末の阪神は雨予報が出ており、馬場悪化の可能性を考慮しておきたい。2015年以降の6月阪神芝・道悪時(稍重~不良)の種牡馬成績上位5傑が表3。特注は2位のハービンジャーで、連対率31・0%は良馬場時(同18・2%)を大きく上回っている。今年は、稍重のマーメイドSでサマーセントがV。パワー型の産駒が多いだけに、道悪なら浮上がありそうだ。

 注目馬 最有力候補は昨年の皐月賞馬サートゥルナーリアだ。阪神は2戦2勝、3カ月以上の間隔をあけて出走した場合も3戦3勝と隙がない。ポイントは未経験の道悪になったときにどうかだろう。

 昨年の香港ヴァーズでワンツーを決めたグローリーヴェイズ、ラッキーライラックも首位候補。サートゥルのルメール騎手が当レース【0・0・0・5】とひと息なのに対し、レーン、M・デムーロとV歴のある鞍上を据えている点も心強い。ハービンジャー産駒のブラストワンピースは稍重で3戦3勝と、梅雨時の馬場は最適。川田騎手も15年以降の阪神芝2200メートルで最多の10勝と頼もしい。

 追い切りや各馬の状態、そして何より天候を吟味して最終結論を導き出したい。(漆山貴禎)







鈴木康弘「達眼」馬体診断

【宝塚記念】ジェネシス100点!“華麗なる変身”オオゴマダラの羽化のよう

 グランプリを制するのは蝶(ちょう)のように舞う南国の貴婦人か。それとも、芭蕉布(ばしょうふ)をまとう貴公子か。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第61回宝塚記念(28日、阪神)ではクロノジェネシス、サートゥルナーリアに満点を付けた。先週、沖縄を旅した達眼が捉えたのはオオゴマダラ(沖縄の県蝶)を思い起こすジェネシスの華麗なる変身と、芭蕉布のようなナーリアの薄い皮膚。有力候補のボディーを梅雨明けした沖縄の夏の風物詩になぞらえながら解説する。

 国内最大級の蝶で知られるオオゴマダラが沖縄慰霊の日にあたる23日、沖縄平和祈念堂(糸満市摩文仁)から放蝶されます。県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦。馬の戦没調査は行われていませんが、統計資料(都道府県農業基礎統計)によると、44年の県内飼育馬3万1914頭が45年の沖縄戦を挟んだ46年には7731頭に激減。4頭に3頭が犠牲になったと推定されています。戦没者(戦没馬も)への鎮魂と平和の願いが込められた県蝶オオゴマダラは沖縄戦終焉(しゅうえん)の地、摩文仁の夏空へ、白地に黒いまだら模様の13センチにも及ぶ大きな羽を広げます。

 その美しい姿は「南国の貴婦人」、その優雅な羽ばたきは新聞紙が風に舞っているように見えるため「新聞蝶」とも呼ばれるらしい。沖縄で暮らす娘家族に会うため同県を訪問した先週、そんな県蝶の成長物語を耳にしました。幼虫時代には外敵の鳥に捕食されないよう体内に毒を取り込み、やがて金色のサナギに変わります。鳥は金属光沢を嫌うため金色に輝いて身を守るそうです。金色のサナギから羽化して「南国の貴婦人」が誕生します。

 その華麗なる変身はクロノジェネシスの成長物語に置き換えられる。昨春までは蝶が舞うような軽快さと柔軟さを併せ持つ一方で、薄っぺらなトモと巻き上がった腹が頼りなく映りました。幼虫のジェネシスです。ところが、3歳夏を境にトモに見違えるほど筋肉がついた。桜花賞、オークス(ともに3着)時には430キロ台前半だった馬体重が20キロ近く増えていました。サナギのジェネシスです。そして、今回。大阪杯から2カ月半しかたっていないのに腹周りがふっくらと丸みを帯び、幅が出てきた。著しい成長。羽化が始まったのです。

 元々、骨格はスリムでも蝶のようにバランスが取れた馬体。トモから飛節、球節、つなぎ、蹄まで各部位が過不足ない大きさと絶妙な角度でリンクされています。筋肉マッチョなマイラー体形の半姉ノームコア(昨年のヴィクトリアマイル優勝)とは対照的なしなやかで繊細な筋肉を身につけた中距離体形。姉が造形美なら、妹は機能美の名牝といっていい。そこに馬体の幅まで加わったのです。見栄えしづらい芦毛なのに毛ヅヤが光っている。「南国の貴婦人」と呼びたくなる姿です。

 競走馬のオオゴマダラは大きな羽を広げてどこまで飛翔するのか。摩文仁の夏空を舞う県蝶にその姿をダブらせてみたい。せめて今日ぐらいは競馬が続けられる恒久平和を祈りながら…。(NHK解説者)


【宝塚記念】サートゥル100点!立ち姿穏やか 涼しげ芭蕉布のたたずまい

 沖縄の夏の風物詩といえば、芭蕉布が思い浮かびます。薄くて涼しげな風合いとサラッとした肌触り。琉球王国時代から士族の官服にも農民の野良着にも用いられてきた夏の定番服です。沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉(きじょか)で生産されているのみですが、戦前は沖縄全土で織られていました。苧(ウー)と呼ばれる糸芭蕉の幹からとった繊維で糸をコツコツと紡ぎ、撚(よ)りをかけ、絣(かすり)を結び、染色して機織りを繰り返す。今も昔も全て手作業。二十余の工程を経て反物に仕上がるまで半年以上の月日がかかるそうです。手間を惜しまぬ根気と愛情の織物。上質の芭蕉布は布の向こう側が透けて見えるほど薄く、トンボの羽にも例えられています。まるでサートゥルナーリアの薄い皮膚のように…。

 末脚の原動力となるトモの筋肉と首の付け根にうっすらと血管が浮いています。薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれた証です。毛ヅヤも素晴らしい。新陳代謝に優れた薄い皮膚は被毛も活性化させる。汗を速やかに拡散させて皮膚表面の湿度を抑える芭蕉布のような効果をもたらすのです。

 3歳時にも薄い皮膚から血管が透けて見えましたが、今回は古馬になっての変化もうかがえます。新たに両後肢の球節に肢巻きを着けてきました。左右に装着しているのでクモズレ(後肢球節下にできる擦過傷)予防でしょう。それだけ後肢の踏み込みが強くなったと解釈できます。蹄に視線を移すと、昨秋、着けていたエクイロックス(蹄壁部の裂蹄を補強する接着装蹄)が見えません。蹄の状態が良くなったのです。

 穏やかな立ち姿にも好感が持てます。昨秋は尾を上げ、耳をきつく立てながら肩に力を入れていましたが、そんな力みが取れてリラックスしている。芭蕉布を爽やかに着こなしたようなたたずまい。手間を惜しまぬ根気と愛情がたっぷり注がれた織物になぞらえたい競走馬です。


【宝塚記念】ライラック95点 完熟マンゴーのような充実の馬体

 贈答用の高級果実として沖縄ブランドを築いてきたマンゴーが収穫シーズンを迎えています。やんばる(沖縄本島北部)の農園をのぞくと、アップルマンゴーがたわわに実を付けている。ラッキーライラックも今が旬です。3度目のG1制覇を遂げた大阪杯時よりも馬体はさらにふっくらしています。全身が張りに満ちている。完熟マンゴーのようにボリューム満点。毛ヅヤも金蜜マンゴーのように黄金色に輝いています。

 完熟したのは馬体だけではありません。大阪杯よりもいい顔つきをしている。穏やかな目つき、集中力のある耳の立て方。ハミを着けずモグシ(簡易頭絡)で撮影に臨みましたが、適度な緊張感をもって立っています。“暴れん坊将軍”オルフェーヴルの子がこれほどおとなしい顔つきとは、ちょっと信じられない。奇跡のマンゴーのように大きく甘く実りました。コロナ禍による観光客の激減で今夏のマンゴーは販売低迷が危惧されていますが、馬のマンゴーの走りとともに夏の味覚も味わってみたいものです。


【宝塚記念】スティッフェリオ90点 6歳にしてボリューム増“大器晩成ウミガメ”

 夏の夜になるとウミガメが産卵のため沖縄の静かな浜辺に上陸します。背面には硬くて大きな甲羅。スティッフェリオの発達したキ甲を想起させます。6歳にしてキ甲がグンと抜けたことで肩や首、トモにもボリューム感が増している。カメのように遅い進化。顔つきはステイゴールド産駒らしく非常にきつい。耳に力を入れ、鼻孔を開きながら鋭い白眼を見せています。カン性の強い大器晩成、ウミガメ型の競走馬です。


【宝塚記念】ブラストワンピース90点 綱引き向き!?キンカメ血統らしい分厚い筋肉

 沖縄では梅雨が明けると豊年祈願の綱引きが各地で開かれます。カナチ棒(かんぬき棒)でつないだワラの男綱と女綱を激しく引き合う。全長200メートル、総重量40トンの大綱を1万5000人で引く那覇大綱挽(今年はコロナ禍で中止)がギネス認定されています。ブラストワンピースが参加すれば百人力でしょう。肩から首、胸、トモにいたるまで分厚い筋肉を付けている。キングカメハメハの血統らしいパワーの塊。肋の張りも凄い。


【宝塚記念】グローリーヴェイズ90点 カーチベーの気性

 夏至の頃(今年は6月21日)南西方向から琉球列島にやや強く吹く風をカーチベー(夏至南風)と呼びます。グローリーヴェイズも尾が左前方へなびくほど強い風を後方から受けていますが、目、耳、鼻を前方の一点に集中させながら落ち着いて立っています。マイラー体形でも長距離で活躍できるのは強風にも動じない気性のおかげ。昨春の天皇賞(2着)時と変わらない体つき。香港遠征以来、半年の休養明けでも仕上がっています。


【宝塚記念】トーセンスーリヤ80点 上質な沖縄県産パインばり毛ヅヤ

 上質な沖縄県産パインは夏を迎えると糖度が増し、黄金色に輝きます。トーセンスーリヤの毛ヅヤみたいです。見栄えのする栗毛にしても鮮やかに映ります。夏日のような陽光に黄金色の光沢を放っている。よほど体調がいいのでしょう。
 首差しは力強いので、あとは胸の深さとトモのボリュームが欲しい。顔つきは左耳が開き気味で集中力を欠いています。


【宝塚記念】ダンビュライト80点 のんびりと「クバ扇」涼しげな顔

 沖縄の夏に欠かせないのが「クバ扇」と呼ばれるうちわ。ヤシ科の常緑高木クバの大きな葉を縁起のいい末広がり状に切りそろえた伝統の民具です。ダンビュライトはクバ扇であおいでもらったような涼しげな顔をしている。少しは緊張感が欲しいと思うほどのんびりしたたたずまいです。去勢明けだった天皇賞・春に比べて馬体に張りが出てきました。毛ヅヤも良好。末広がりの活躍に期待です。


【宝塚記念】キセキ80点 仕上がり良好 エイサーの勇壮さ

 沖縄本島では梅雨明けを待ってエイサー(盆踊り)の稽古が本格化します。大太鼓や締太鼓を勇壮に叩き踊り、家々を練り歩く若者たちは長鉢巻きに陣羽織、脚半のいでたち。そのりりしい姿はキセキの立ち姿を想起させます。甘かったトモに力がついたため頭をしっかり起こしています。全身に張りがあって、肋がパラリと映る仕上がりの良さ。ただ、左前に加えて、新たに右前の球節にも湿布してきたのが気がかりです。


【宝塚記念】ワグネリアン80点 馬体均整“ハーリー”毛ヅヤも良好

 ハーリーの鉦(かね)が鳴ると、梅雨が明けると言われます。沖縄伝統の小型漁船サバニにこぎ手、かじ取り、鉦打ち合わせて十数人が乗り込むハーリー=爬竜(はりゅう)船競漕(そう)=はバランスがポイント。一見非力に映るワグネリアンが活躍できるのも前後肢、上下半身のバランスが完璧だからです。毛ヅヤもとてもいい。ただ、馬体がぎりぎりまで仕上がっているため多少気負いが感じられます。


【宝塚記念】モズベッロ75点 不安そうな目“耳切り坊主”の恐怖

 夏といえば怪談。沖縄で最も有名な怪談は耳切り坊主(ミミチリボージ)です。耳を切り落とされて死んだ僧侶の悪霊が、男の子の耳を鎌や小刀で切り落とすという怖い話。
 モズベッロは気もそぞろに耳を左右に開き、不安そうな目をカメラマンに向けています。栗東に耳切り坊主は出没しないのだから、もっとゆったり立ってほしい。まとまりのある馬体なので、あとはもう少しゆとりが欲しい。


【宝塚記念】トーセンカンビーナ75点 セミに邪魔され!?不機嫌顔

 梅雨明けと同時に「ジリジリジィーッ…」という騒々しい鳴き声が聞こえてきます。ナービカチカチ(和名リュウキュウアブラゼミ)です。鍋(ナービ)の底にこびりついた汚れを包丁でかき落とすようにうるさく鳴くのでその名が付けられたとか。トーセンカンビーナはナービカチカチに昼寝を邪魔されたみたいな不機嫌顔。目をつり上げ、尾を上げながらハミを強くかんでいます。毛ヅヤはとてもいいので、穏やかになってほしい。
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