「虎の子」の一頭・馬場虎太郎

【ジャパンC予想】例年よりも特殊な馬場で行われそうなジャパンC

 今秋の東京開催は開幕日から雨の影響を強くうけ、芝は極悪馬場で行われた。2週目の土曜も当日の雨量が多く、重めの馬場コンディション。

 先週からの東京芝はCコースに替わり、雨の影響がほとんどない乾いた状態で行われた。時計そのものは出ていても、開催前半でうけたダメージが尾を引いており、見た目にも傷んでいる。東京の芝としては特殊な馬場の状態だ。

 騎手も傷んだ馬場の状態を意識して、インコースを避けるなど、道中のペースや馬群、展開も例年の東京芝とは大きく異なるパターンも多い。

 上位人気に推された実力馬が傷んだ馬場状態を気にして、不可解な凡走をするケースも目立つ。今開催、古馬混合戦で1番人気だった馬は近年の同時期開催(5回東京開催)の芝と比べて、好走率が極端に低いのだ。

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 ジャパンCは近4年連続でトラックバイアス「内有利」もしくは「超内有利」と判定している。内を通る馬が有利なトラックバイアスになりやすいレースだが、今年に関しては例年通りの傾向になるかどうか疑わしい。

 それに加えて、今週は週中から週末にかけて不安定な天気予報。傷んだ状態になっている今の芝に雨が降るようだと、馬場コンディションが一気に悪化する可能性もある。最終的な馬場状況は土曜の開催を見終えてから判断したい。

 ここでは、上位人気が予想される3頭について前走のトラックバイアスを分析する。

 アーモンドアイの前走天皇賞・秋はトラックバイアス「外有利・差し有利」と判定。当日は3歳以上にとっては軽めの馬場コンディション。内をロスなく通ることや先行するアドバンテージがなく、直線の高速上がり勝負。この馬としては半馬身差の辛勝ではあったが、トラックバイアスに恵まれなかったことを考えると評価できる。3馬身差をつけて勝利した昨年と比べても遜色ない強い内容だった。

 コントレイルの前走菊花賞はトラックバイアス「外有利・差し有利」と判定。当日は重めの馬場コンディション。内を通ると不利で、後方からも届きやすい馬場状況。内枠からのスタートで、道中も流れにのっていく形。3枠より内には他に上位人気がいたにもかかわらず、この馬以外は7着以下。当日の芝でも3枠より内で勝利したのはこの馬のみ。トラックバイアスの観点から厳しい状況だったにもかかわらず、キッチリと勝ちきった。

 デアリングタクトの前走秋華賞はトラックバイアス「外有利・超差し有利」と判定。当日は雨の影響が残る重めの馬場コンディション。前日から明らかに外差しの馬場状況のなか、馬場コンディションを考えるとオーバーペース。後方待機馬、そのなかでも外枠から道中でも外を通ってきた馬が極端に恵まれたレース。

 ムチをほとんど使わず、余力を残した勝利ではあったが、他の有力馬が内枠に入ったことや先行したことによって力を発揮できなかったトラックバイアスの恩恵をうけたのは確か。

 トラックバイアスの観点からは、アーモンドアイ、コントレイルの2頭が不利な状況を勝ちきった内容。

 デアリングタクトは恵まれた内容と判断している。

 アーモンドアイ、コントレイルとの比較からもデアリングタクトは現役屈指の好メンバーに入ると、ここまでに示したパフォーマンスは劣る。文字通り、ここが試金石の1戦となるだろう。




【漆山“教授”のGI因数分解】デアリングタクト優位

 東大卒の漆山貴禎記者がGI的中への解法を探る『GI因数分解』。マイルCS的中で勢いに乗る理論派が、ジャパンの“3強”を徹底解析。過去30年の前走傾向から、世紀の対決で優位に立つのはデアリングタクトと断言した。

 ◇

 節目の40回目に世紀の対決が実現するジャパンC。そこで、1990年以降の過去30回の前走別傾向から3冠馬3頭を比較してみる。

 (1)好ステップ

 96年に創設された秋華賞からは過去に9頭が参戦し、【2・2・1・4】で連対率44・4%のハイアベレージをマークしている。さらに、連対していた馬に限定すれば【2・2・1・1】と信頼性がさらにアップ。余裕のあるレース間隔に加えて、軽量53キロのアドバンテージも大きい。

 (2)V馬は勝ち切れず

 牝馬は秋華賞だけでなく、天皇賞・秋をステップにしてきた馬も忘れてはいけない。【4・2・1・7】、連対率42・9%と甲乙つけがたい成績だ。ただし、天皇賞Vから臨んだ馬が【0・2・1・1】と善戦止まりに終わっている点は気がかりだ。ウオッカを例に取れば、2008年は1→3着で翌年は逆に3→1着。激戦を制した反動が出ているのかもしれない。

 (3)菊花賞組は余力?

 前走・菊花賞組は【2・3・3・26】。平均6・2番人気に対し、平均8・2着と苦戦傾向が否めない。しかも、馬体重が減った状態でラスト1冠を戦った馬はジャパンCで【0・0・1・6】だ。しかも、3頭の菊連対馬が含まれているのは軽視できない。マラソンレースを走り切ったあとの、お釣りのない状態で出走し、疲れが出ていると推察する。

 注目馬 “3強”で優位に立つのはデアリングタクトだ。ぶっつけ本番で臨んだ秋華賞を完勝。馬体重も14キロ増と大きく成長していた。絶好のローテに加え、父エピファネイアは14年に4馬身差Vと強調材料に事欠かない。

 アーモンドアイは天皇賞・秋で連覇を達成。ただ、完璧なレース運びだったにもかかわらず、スタート直後に不利のあったフィエールマンに半馬身差まで詰め寄られたのには不満が残る。中3週も気がかりだ。

 コントレイルは2キロ減で臨んだ菊花賞を薄氷のクビ差でV。中間の攻め気配が今ひとつ上がってこないのは、激闘から回復し切っていないからなのか…。今週の追い切りに注目したい。

 GII経由で余力を残して挑むグローリーヴェイズやカレンブーケドールも気になる存在。追い切りの動きや枠順を加味して、週末に結論を出す。(漆山貴禎)







重賞データ分析・小林誠

【ジャパンカップ】三強が並び立たないほうに賭ける!

■ジャパンカップ(GI・東京芝2400m)フルゲート18頭/登録17頭

★3行でわかる! ジャパンカップ 攻略の糸口

1.レースもコースも人気サイド強し。妙味は4~7番人気が◎
2.馬番01~06番が非常に強い。前走上がり2~3位も注目!
3.牝馬・前走1番人気馬・ルーラーシップ産駒も高評価の対象

データ特注推奨馬
 ★アーモンドアイ

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 まさに「世紀の一戦」となりそうな、今年のジャパンカップ。素晴らしい競走成績を残している馬が多く出走するのもあって、データ面からの絞り込みはけっこう難しい印象だ。基本的にはかなり順当決着傾向が強いレース&コースで、勝つのは上位人気馬である場合がほとんど。穴を1着で狙うような馬券での勝負は、ハッキリと推奨できない。妙味追求ならば、4~7番人気を重視するのがオススメだ。

 枠番はかなり内枠有利で、馬番01~06番に入った馬はかなり有利。勝ち負けに持ち込むには、ひとケタ馬番が欲しい。脚質についてはイメージ以上に先行勢が強く、最速上がりをマークした馬の取りこぼしが目立つ。前走での上がりも、最速ではなく「2~3位」だった馬が、ここは好成績となっている。

 あとは、牝馬が[5-3-0-15]と非常に強いことや、前走1番人気馬が優秀な成績を残していること、ルーラーシップ産駒が強烈なまでに高いコース適性を有してることなども、注目すべきポイント。ちなみに前走での人気に関しては、前走が天皇賞・秋だった馬と、それ以外を分けることで、効率のいい取捨選択が可能となる。

 前走で天皇賞・秋「以外」に出走していた組は、3番人気以内に推されていることが、好走の必要条件。前走4番人気馬は、1頭たりとも馬券に絡めていない。そして、前走で天皇賞・秋に出走していた組は、「1番人気もしくは4番人気以下だった馬」が好成績。単勝適正回収値や複勝回収値が高い後者は、人気薄でも積極的に狙っていきたいところだ。

 特注推奨馬にあげたのはアーモンドアイ。とはいえ、データ的に「満点」というわけではなく、ケチをつけようとすればけっこうつけられる。それでも、コントレイルやデアリングタクトよりも信頼度は高いと判断。三強オッズになりそうだが、そのまますんなり決まるとは思えないというのが、現時点での判断である。


【コース総論】東京芝2400m Cコース使用
・コースの要所!
★かなり人気サイドが強いコース。人気薄は1着ではなく2~3着で狙うのが正解。
★内枠有利の傾向で馬番01~06番はプラス。外枠は少し評価を割り引くべきか。
★差せるコースで決め脚の鋭さが求められるが、前が残るケースも意外に多い。

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 チャンピオン決定戦の舞台である東京芝2400m。ホームストレッチの坂を上りきったあたりがスタート地点で、1コーナーまでの距離は約350mだ。3コーナーから4コーナー出口にかけては下り坂で、そこを抜けるとなだらかな上り坂に。最後の直線は500m以上と、十分すぎるほどの距離がある。広々とした大回りの東京コースをフルに使うコース形態で、道中での展開的な紛れは少ない。

 能力をキッチリ発揮しやすいコースであるのは、人気別成績からも見てとれる。1着馬のじつに71.4%を3番人気以内、85.7%を5番人気以内が占めたように、勝ち馬に関しては順当決着傾向が非常に強い。アタマはひねらず素直に狙うのが、このコースで儲けるセオリーといえる。人気薄は、穴は2~3着のヒモで狙ったほうが効率がいいはずだ。

 次に枠番だが、こちらは内枠有利の傾向。馬場バイアス次第ではあるが、馬番01~06番に入った馬の信頼度は、中枠や外枠と比較すると非常に高い。平均人気の差が大きいのもあるが、おおむね人気通りの結果を出しており、複勝回収値の高さもトップ。逆に外枠である馬番13~18番は、ギャップ値がマイナスである点が気がかりだ。結論としては、やや内枠有利&外枠不利と捉えるのがいいと思われる。

 差し優勢というイメージのあるコースで、勝ち負けに決め脚の鋭さが求められているのは間違いなし。上がり上位馬の勝率の高さが、その裏付けだ。ただし、連対率や複勝率がもっとも高いのは先行勢。展開や組み合わせ次第では、先行勢がそのまま残るケースも意外に多い。「先行勢と中団待機組が互角」というのが、適切な評価となりそうだ。


【レース総論】ジャパンカップ(GI) 東京過去10回
・レースの要所!
★4~6番人気が素晴らしい内容。コースデータ同様に基本的には人気馬が強い。
★内枠有利でコースデータ以上に先行勢優勢。前走上がり2~3位馬を高く評価。
★6歳以上馬は大不振。前走レース別では天皇賞・秋組と秋華賞組が内容優秀。
★前走1番人気馬を素直に信頼。牝馬も非常に強い。関東所属騎手はイマイチ。

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 レースの平均配当は単勝626円、馬連2832円、3連複1万8994円と、単勝平均や馬連平均の低さが目立つ。このレースを6番人気以下で制した最後の例が、2008年のスクリーンヒーロー(9番人気)にまでさかのぼるのだから、当然といえば当然だ。1着が紛れるケースはほとんどなく、2~3着に関してもかなり堅め。ふたケタ人気馬はトータル[0-0-2-75]と、3着にくるのが精一杯という成績である。

 とはいえ、上位人気馬のワンサイドゲームにはなっていないのが面白いところ。中穴ゾーンの4~6番人気は、トータル[4-4-2-20]で連対率26.7%、複勝率33.3%、複勝回収値94という、文句なしの好内容を残している。7番人気も2回の連対があるので、ここも含めた「4~7番人気」を重視するのがよさそう。あとは、メチャクチャ牝馬が強いこと、関西馬が圧倒的に強いことも押さえておきたい。

 次に枠番だが、こちらはコースデータ以上に内枠有利。馬番01~06番の信頼度や回収値の高さは、圧倒的といっても過言ではないほどだ。1週前からのCコース替わりが影響しているのかもしれないが、それにしても極端な結果。データが過剰に偏ってしまっている可能性もあるが、内枠のほうがベターであるのは間違いないだろう。ここで勝ち負けするには、ひとケタ馬番が欲しい。

 脚質については、コースデータよりも「前」優勢。過去10年で馬券に絡んだ馬の半数が、4コーナーを5番手以内で回った先行勢だった。また、最速上がりをマークした馬が[1-3-2-6]と取りこぼしまくっているのも、注目すべきポイント。じつは、上がり2位馬のほうが好成績なのである。また、前走での上がり3F順位別成績でも「最速馬よりも2~3位のほうが好成績」であるのを、ぜひ覚えておきたい。

 年齢別では、3歳馬がもっとも優秀な成績。それに次ぐのが5歳馬と4歳馬で、6歳以上馬はトータル[0-0-2-40]とサッパリの結果に終わっている。キセキやミッキースワローなど、6歳以上馬の扱いはかなり難しい。そして前走レース別では、天皇賞・秋と秋華賞からのローテが好成績。悩ましいのが菊花賞組の扱いで、2010年に繰り上がり1着となったローズキングダムがいるものの、強調材料に欠ける内容といえる。

 1986年以降に集計範囲を拡大したデータも掲載したが、前走菊花賞組がイマイチという結論は変わらない。勝ち馬は前述のローズキングダムとジャングルポケットだけで、牡馬三冠を達成したシンボリルドルフ(無敗)も敗退。「菊花賞→有馬記念」というローテがトータル[8-6-4-25]であるのに比べると、あまりに差が大きすぎる。買いか消しかでいえば「消し」で、かなり狙いづらい。

 しかも「前走1番人気馬が非常に強く、今回5番人気以内ならばさらに期待できる」というデータもあるので、コントレイルの取捨はなおさら難解だ。この条件を満たした馬は、トータル[7-2-3-9]で連対率42.9%、複勝率57.1%をマーク。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの3頭にとっては心強いデータとなるが、果たして結果はどうか。

 そして最後に、騎手関連データ。関東所属騎手の低調な成績が目立っている以外には、大きな偏りは見当たらない。外国人騎手がもっと強いイメージだったのだが、実際は関西所属騎手とほぼ互角。継続騎乗と乗り替わりでの成績差も小さいことから、「騎手はあまり気にしなくていい」との結論となる。


【血統総論】

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 血統面は、ルーラーシップ産駒だけをプラス評価の対象とした。ディープインパクト産駒もお決まりのように好成績なのだが、それを圧倒してみせたのがルーラーシップ産駒。3着よりも2着が、2着よりも1着が多いというのも、高いコース適性の証明だ。単勝適正回収値も130.1という高さで、文句なしの好内容。一昨年の2着馬でもあるキセキが、ここで再び存在感を発揮する可能性もありそうだ。

 外国馬のウェイトゥパリスの血統についても、少しだけ触れておこう。父のChamps Elysees(その父Danehill)は、名種牡馬Dansiliや名牝Banks Hillの全きょうだいで、北米G1を3勝した活躍馬。さらに母父Cozzene、母母父Nureyevと、血統構成だけならば日本の高速馬場にも対応できそうな印象を受ける。とはいえ、ロンシャンの芝3200m戦を制したような馬が、東京芝2400mで勝ち負けになるとは思えず、やはり厳しいか。


★特別登録馬 総論×各論

 無敗で牡馬三冠を達成したコントレイルと、同じく無敗で牝馬三冠を達成したデアリングタクトが果敢に挑戦。それを、三冠馬で現役最強馬でもあるアーモンドアイが迎え撃つという、最高のカードが実現した。各陣営の関係者に、よくぞ出走を決めてくれた──と心から感謝したい。これぞ、ファンが待ち望んでいた最強馬決定戦だ。

 その他にも、昨年の有馬記念以来となるワールドプレミア、昨年の2着馬であるカレンブーケドール、ポテンシャルなら負けてはいないサートゥルナーリア、京都大賞典でその高い能力を改めて証明したグローリーヴェイズなど、GI馬が目白押し。このご時世にフランスから遠征してくれた、ウェイトゥパリスの敢闘精神も称えるべきだろう。

 そんな最高レベルのメンバーが揃った一戦だが、気になるのが逃げ・先行勢の少なさ。福島記念からの中1週でトーラスジェミニが出走予定だが、もし本馬が回避した場合には、どの馬がハナを切るのかまったく読めない。落ち着いた流れになる可能性が高いメンバー構成なのは明白で、中団よりも後方に位置する馬にとっては、かなり厳しい展開となるケースもありうる。

 そういった展開面も考慮してのトップ評価が、データ特注推奨馬にもあげたアーモンドアイ。やや危なっかしい勝利だったとはいえ、天皇賞・秋を好位追走から押し切ったのは、高く評価してしかるべきだ。中3週での出走という課題はあるが、今回は「お釣り」を残す必要のない引退レースで、渾身の仕上げが期待できそう。一昨年のような、ファンを唖然とさせるようなパフォーマンスを期待する。

 二番手評価は「牡馬三冠馬による同年ジャパンカップ制覇」という、前人未踏の記録に挑むコントレイル。ある意味、もっとも高いハードルに挑む立場といえる。最近はスッといい位置が取れるようになっているので、アーモンドアイと同様の展開利が見込めるはず。東京替わりもまったく問題なく、初となる古馬との対決でどのようなレースが見られるのか、本当に楽しみだ。

 三番手評価にカレンブーケドール。いわゆる「一角崩し」の最右翼として、昨年の2着馬である本馬を抜擢した。さすがにこの相手関係でどうか──という見方もあるだろうが、相手なりに走れるのは大きな武器。もし道悪の競馬にでもなれば、二番手で流れに乗ってしぶとく粘れる強みで、最後の最後まで粘りきれる可能性もある。オールカマーからという余裕のあるローテで、状態面のよさも期待できるはずだ。

 そして、四番手評価にデアリングタクト。斤量53キロで出走できる3歳牝馬で、いまだ無敗という底知れない強さは大きな魅力だ。しかし、これまでとは違って、スタートで後手を踏んで勝ち負けできるメンバー構成ではなく、不向きな展開となる可能性が高いのも割引材料である。プラス評価となった項目はかなり多く、距離やコースもまったく問題ないと思うが、過信は禁物だろう。

 以下はラヴズオンリーユー、キセキ、グローリーヴェイズ、サートゥルナーリア、ワールドプレミアという評価の序列。飛び抜けて高評価となった馬はおらず、どの馬にも課題や懸念材料があるというのが、現時点での見立てである。このドリームレースを制するのは、果たしてどの馬なのか。コロナ禍で落ち込んでいるムードを吹き飛ばすような、アツい激闘を期待する。







鈴木康弘「達眼」馬体診断

【ジャパンC】コントレイル100点!疲れ知らずの柔らかさ 1カ月前の“激闘”菊花賞より「ふっくら」

 JC3強のボディーに明暗が分かれた。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第40回ジャパンCでは無敗3冠馬コントレイルを唯一満点とし、8冠女王アーモンドアイには2位の95点を付けた。対照的に無敗3冠牝馬デアリングタクトは80点の辛口採点。達眼が捉えたのは腹周りと毛ヅヤの変化だ。

 これが菊花賞で死力を尽くして間もない馬体なのか。飛行機雲(コントレイル)と名付けられた青鹿毛がまとっているのは非凡さがひと目で分かる柔らかくてしなやかな筋肉。無敗3冠に挑んだ1カ月前と変わらない素晴らしい張りと毛ヅヤを保っています。疲れが残っていれば腹周りが多少なりとも細くなるものですが、むしろ菊花賞時よりふっくらしている。460キロ前後の体重以上に大きく見せる馬体。4冠ロードには一点の曇りもありません。

 菊花賞では外からプレッシャーをかけてきたアリストテレスの猛追を首差しのいだ。道中掛かりながら3000メートルを何とか乗り切りました。それからわずか1カ月で反動のかけらもない普段通りの体に戻っているのはなぜか。疲労が蓄積しづらい柔軟な筋肉を備えているからです。

 3冠制覇はコントレイルにとって通過点なのでしょう。その立ち姿は菊花賞からの新たな進化を伝えています。1カ月前には気持ちの高ぶりから少しだけ上げていた尾をごく自然に垂らしています。精かんな顔立ちでハミをゆったりと受けながら、悠然と尾を流す。3冠馬にふさわしい風格。厳しい経験は人も馬も成長させるものです。菊花賞の厳しい戦いを乗り越えて気性が成長したのでしょう。

 中距離体形だけに3000メートルから2400メートルに替われば一層戦いやすい。別表の項目通り、筋肉の張りから腹周り、毛ヅヤ、立ち姿、体形までひと通りチェックした後、目を見て驚かされました。意志の強さと穏やかな気性を宿した光を放っています。過去2頭の無敗3冠馬にも見られなかった不思議な眼光。シンボリルドルフは菊花賞直後のジャパンCで3着、父ディープインパクトは菊花賞後に有馬記念に挑んで2着と、初めて土が付きました。目が口ほどにものを言うなら、この眼光が訴えるものは…。

 父の蹄跡も上回る史上初の無敗4冠。もう1段進化したコントレイルなら新たな領域へ飛翔できます。晩秋の青空に真っすぐ伸びる飛行機雲のように。(NHK解説者)


【ジャパンC】アーモンドアイ95点 冬毛なき“有終の輝き” 天皇賞・秋から中3週万全

 有終の輝きというべきか。8冠牝馬アーモンドアイの毛ヅヤは引退レースが近づいても光沢を失っていません。むしろ秋の天皇賞以上に輝いている。その鹿毛の被毛は女王の退位式に合わせて新調した茶色いサテンのドレスのように美しい。

 晩秋を迎えると、牝馬は体を冷やさないように牡馬より早く冬毛を伸ばす傾向があります。出産という大仕事を受け持つ牝馬の本能が働くからです。3冠牝馬デアリングタクトのように冬毛が交じった被毛は光沢を失い、くすんだ色に変わる。ところが、8冠女王のドレスには1本の冬毛も交じっていません。気温と反比例して毛ヅヤがアップする不思議なドレス。繁殖に行かず現役を続けたい…母性本能よりも競走本能が強いせいなのか。それとも、よほど新陳代謝が活発なのか。ともあれ、抜群の体調。天皇賞・秋から中3週のローテに不安なしと毛ヅヤが雄弁に語っています。

 ただし、2400メートルの距離は不安です。中距離体形が年齢を重ねて父ロードカナロア譲りのマイラー体形に変わった。18年のJC優勝時とは別馬のような筋肉マッチョ。特に首から肩、トモが厚みを増しています。長距離を走るには邪魔になる筋肉のボリューム。天皇賞・秋から400メートルの距離延長をいかに乗り切るか。有終の輝きを放つ女王に課された最後の試練です。


【ジャパンC】デアリングタクト80点 疲労の疲れ?腹回りの細さ気がかり

 無敗3冠牝馬の腹周りが寂しく映るのはなぜか。菊花賞以上に腹周りが厚くなったコントレイルとは対照的に、デアリングタクトの腹は秋華賞時よりも細く見えます。牝馬3冠制覇時に放っていたまぶしい青鹿毛の光沢が冬毛でくすんでいるのは牝馬だけに仕方ありませんが、腹周りの変化は気になる。疲労やダメージは腹に表れやすいからです。

 毛ヅヤと腹周りを除けば非の打ちどころがありません。厚みとしなやかさを併せ持つ筋肉。特に臀筋(でんきん=臀部の筋肉)は立派です。尾の付け根が他の馬より高い位置にあるのを感じさせないほどせり上がっている。顔を見れば、耳、目、鼻先をカメラマンに向けながら、気持ち良さそうに立っています。名牝のかおり漂うたたずまい。無敗3冠牝馬の凄みを感じさせる立ち姿です。


【ジャパンC】カレンブーケドール90点 筋肉で厚み増した肩

 昨年のJC(2着)を上回る体つきになりました。肩が筋肉で厚みを増し、腹袋はたくましい。気性も成長しました。3歳時は尾を上げてキンキンしていましたが、4歳秋を迎えて力みが取れ、ゆったりと立っています。昨年同様、右前蹄の内側にエクイロックス(接着装蹄)着用。


【ジャパンC】ユーキャンスマイル90点 キ甲張り出した骨格

 5歳馬だけに体つきに大きな変化はありませんが、今春の天皇賞(4着)時よりもゆとりのある立ち方です。トモをごく自然に流しながら立っています。キングカメハメハ産駒らしい豊富な筋肉量。背中が短く映るほどキ甲が張り出したたくましい骨格です。


【ジャパンC】グローリーヴェイズ90点 きついハミ嫌がらず

 マイラー体形を中長距離戦で活躍させているのは従順でコントロールが利く気性でしょう。ハミがきつくても嫌がらずに立っています。宝塚記念(17着)時よりも余裕のある立ち方、460キロ前後の体重以上に大きく見せる馬体、抜群の毛ヅヤ…素晴らしい姿です。


【ジャパンC】キセキ90点 張り維持毛ヅヤ良好

 天皇賞・秋(5着)の疲れは全く見られません。馬体の張りを維持しているし、腹周りもちょうどいい。毛ヅヤも良好。宝塚記念時に着けていた両前肢の湿布は前走同様、外しています。回復したため冷やす必要がなくなったのでしょう。澄んだ目から安定した気性がうかがえます。


【ジャパンC】クレッシェンドラヴ80点 穏やかすぎる顔

 ステイゴールド産駒にしては顔が穏やかすぎる。昨年末はきつい顔つきでした。体つきは素晴らしいが、顔つきの変化がどうか…。


【ジャパンC】ミッキースワロー80点 量より質に優れた筋肉

 量より質に優れた筋肉を過不足なくつけています。とても柔らかい馬体。春の天皇賞(3着)時と同様に尾を上げて立っています。


【ジャパンC】マカヒキ75点 もう少し欲しい活気

 7歳秋を迎えただけに体つきに大きな変化は感じられません。毛ヅヤはとてもいいが、顔つきや立ち方にはもう少し活気が欲しい。


【ジャパンC】ワールドプレミア75点 毛ヅヤ良好もボリューム物足りず

 11カ月休んでいる間にキ甲が抜けて、大人の体になりました。毛ヅヤも良好。ただし、トモや腹周りのボリュームが物足りません。
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